【8月24日 marie claire style】モデルとしてデビューして俳優に転身、近年ではイラストレーターとしても活動するなど八面六臂の活躍をする田辺誠一の素顔に迫る。

 撮影スタジオの田辺誠一は、コーディネート一体一体に向けて気持ちを作ってカメラの前に立った。「洋服は今も昔も変わらず好きです。ファッション撮影ではどう振る舞うと服が魅力的に写るのか、読者の方に"着たい"と思ってもらえるのか、自分なりに考えます」。田辺が応募総数約5000人もの中からメンズファッション誌の専属モデルとしてデビューしたのは1987年、彼が18歳の時だった。そこからまさに飛ぶ鳥を落とす勢いの支持を獲得すると、シリアスからコメディまでこなせる実力派の役者として、映画監督として、また近年ではLINEスタンプの画伯として、気が付けばマルチな活躍を見せる存在になっていた。今秋は出演映画『斉木楠雄のΨ難(サイなん)』が公開待機中(10月21日全国ロードショー)、また冬には木村佳乃らと共に人気劇作家・倉持裕が作・演出を手掛ける舞台『誰か席に着いて』(11月28日より東京・日比谷シアタークリエ)への主演が予定されている。男性として年齢とキャリアを重ねていくこと、その想いについて訊いた。

 これは意外なエピソードだが、田辺誠一はモデルの活動を始めてから数年の間、ファッションモデルとしてのオファーが全くやってこなかったのだという。そうしてようやく舞い込んで来た最初のファッション撮影は"顔が写らない"仕事だった。

「足元しか写らない靴の撮影だったんです。それなのに『その靴をどういう気分で履いているのか、どんな人が履いているのか、どうすればその靴が美しく見えるのか。それを考えて』と言われた。初めての経験でしたが、やってみたら『こういうことか』と気付かされた。それからはどんなシチュエーションの撮影でも、自分なりのキャラクター設定を考えて臨むようになりました」

 田辺が人気メンズファッション誌の専属モデルに選ばれた頃、男性ファッションモデルの人気はまさに黄金期を迎えていた。彼が掲載された雑誌の発行部数も当時は100万部にも迫る勢いの数字を叩き出していた。

「先輩が阿部寛さんと風間トオルさん、同期はマーク・パンサー、大沢たかお、反町隆史、谷原章介、竹野内豊でした。みんなパワーがあって、いろんな個性がいて面白かった」

 名前の挙がった錚々たる面々は、しかも全員が今なお現役で活躍している。この黄金期は、後の芸能界を牽引する才能たちの豊作期でもあったのだ。

「嬉しいことですが、注目され始めると『田辺君の1週間コーディネート』などの企画も増えてきました。洋服に着られてはダメですが、自分が洋服よりも前に出てしまうと、モデルと洋服とのバランスが崩れてしまう。それなら自分をもっと表現したいと思い役者に軸足を移しました」

 テレビや映画への出演が続くなか、1997年に初めて演劇の舞台に立った。2016年に惜しまれながらこの世を去った演出家・蜷川幸雄の『草迷宮』だった。

「蜷川さんの舞台で、いきなり主役で、しかも浅丘ルリ子さんの相手役だった。自分が演劇の舞台に立つなんて想像もしていなかったし、それまでとは演技のアプローチが全く違ったので衝撃を受けました。蜷川さんは厳しい方だったのでとても鍛えられました。その後も2度、3度と舞台に呼ばれたので、少しは認めてもらえたのかなと勝手に思っています(笑)」