【7月18日 AFP】仏パリ(Paris)に、採寸を3D全身スキャナーで行うオーダーメード紳士服店「レ・ヌーボー・アトリエ(Les Nouveaux Ateliers)」がある。ファッションに気を遣う男性たちの潜在需要は相当高いはずと信じて、フランソワ・シャンボー(Francois Chambaud)氏が前年2月にオープンした。

「オーダースーツを既製服の価格で提供しようと考えた。それに堅苦しくてエリートっぽいスーツのイメージを壊し、楽しいものにもしたかった」(シャンボー氏)

■採寸は、わずか数秒

 シャンボー氏によれば、従来のオーダーメードでは、顧客は仮縫いから完成まで何度も店を訪れて採寸しなおす必要があった。長いときでは3か月を要することもあるという。

 だがレ・ヌーボー・アトリエの採寸では、顧客は下着姿になってスキャン装置上に立つだけだ。これまでメジャー採寸では200か所の採寸に45分かかっていたところが、わずか数秒で終了。さらにスーツやシャツの生地、デザイン、ボタンや襟の形などの細部も全て、顧客が決める。

 こうして採寸したサイズや顧客が選んだデザインなどの情報は、デザインツール・ソフトウエアに送信され、顧客の人体モデルをもとにパターン型紙が作られる。これらが縫製を行う上海(Shanghai)の同社工場に送られ、3週間後には完成したスーツがパリに届く。あとはスーツに袖を通すだけだ。

 スキャナーによる時間短縮効果とパターン作成ソフトウエアの組み合わせは、コスト削減をもたらした。レ・ヌーボー・アトリエのスーツ価格は290ユーロ(約2万8000円)からで、フランスの典型的なオーダースーツの半額以下だ。

 シャンボー氏によると、レ・ヌーボー・アトリエに典型的な顧客層というものはない。「年齢も下は18歳から上は94歳まで。背の低い人から身長2メートル17センチのプロバスケット選手まで幅広い」という。同店は、これまでスーツを仕立てた経験がなく、既製品に満足できない、あらゆる年齢層や職業の人たちを魅了している。

■小さな革命

 そんなレ・ヌーボー・アトリエの顧客は早くも7000人に達した。パリに2店舗目もオープン。利益も出始めており、国内外での新規出店も計画している。どうやらレ・ヌーボー・アトリエは、金脈を掘り当てたようだ。

 トレンドウオッチャーのエマ・フリック(Emma Fric)氏は、同店の取り組みの意義は大きいと語る。「これは小さな革命。オーダーメード・ファッションへの回帰が再び重要性を増している」

 このトレンドを後押しするものとして、フリック氏は個性に対する強いニーズと、生地の選択から裁断、仕上げまでの全過程を丁寧にこなす伝統的な作業への回帰願望の2つを挙げた。また、3D画像処理などの最新テクノロジーによって、今後の10年間で、オーダーメードの衣服は爆発的に普及するだろうと予測した。(c)AFP