【11月29日 MODE PRESS】女性に絶大な人気を誇る「プティローブノアー(petite robe noire)」は、デザイナー・阿部好世(Yoshiyo Abe)が2008年に設立したブランド。「古いものと新しいものをつなぐ」という考えのもと、洋服からコスチュームジュエリーまで日本製にこだわって制作している。

 阿部はそのやわらかな雰囲気とは裏腹に、確固たる信念を持つデザイナー。自身のクリエーションを語る際、「ファッション」ではなく「服飾」というクラシックな言葉を使うのも彼女らしい選択だ。今回、一つひとつ丁寧に作られた美しい作品の数々に込められた、特別な思いについてあらためて話を聞いた。 

「ここでしかできないもの」を追求し創作を行っている(2016年11月15日撮影)。(c)MODE PRESS/Yoko Akiyoshi

■ニューヨークで出会ったヴィンテージジュエリー

 新潟出身の阿部は、高校のときから「服飾のフィールドで仕事がしたい」と思っていたという。そして卒業と同時にニューヨークへ渡り、そこで3年近くをファッションへ捧げる。現地のファッションカレッジに在籍したが、服作りを勉強するより現場で学ぶことのほうを好んだ阿部は、やがて新進ブランドのインターンとして活躍することとなる。「90年代後半はインディペンデントなブランドやカルチャーが育っていった時期。小さなブランドがどんどん大きくなる過程に携わらせてもらい、その経験こそが自分の中で転機となった」

 またコスチュームジュエリーに触発されたのもニューヨークだ。蚤の市で見かけた古いジュエリーに「気持ちが吸い取られそうになるくらい惹かれた」という阿部。「一つのものに対して時間や手間がかけられていて、とても素敵だなと思った」。当時のヴィンテージ市場は今のそれとは違い、上質なものもかなりリーズナブルな価格で売られていたという。夢中になった阿部は、掘り出し物を探しに毎週のように通うようになる。「学生だったからあまりお金はなかったが、見たこともないような自由な色づかい、マテリアル、形を持つヴィンテージジュエリーが山のようにあり、少しずつ集める日々が続いた」 

「プティローブノアー」2017年春夏コレクションより。(c)petite robe noire

■「好き」が高じてショップを立ち上げ

 そうして手に入れたジュエリーは「それいいね」「どこで買ったの?」と人から聞かれることが多くなっていった。そのことに喜びを感じた阿部は「みんなにも手に取ってもらいたい」と思い始めるようになる。「最初は自分のために集めていたが、それが結果的にジュエリーのオンラインショップの立ち上げにつながった。自分は旅好きでもあるので、世界中の蚤の市をまわりながらヴィンテージのジュエリーを提供できたらいいな、と思った」と語る。そうして買い付けのためにアメリカのほかにも、フランス、ベルギー、チェコ、オーストリア、ドイツなど各国の蚤の市をまわった。

 「プティローブノアー」とはフランス語で「黒いドレス」の意味で、もともとはそのオンラインショップの名前だったという。阿部はある展覧会で、20年代の「シャネル(CHANEL)」の黒いドレスとコスチュームジュエリーを合わせた展示に目を引かれる。「ドレスとジュエリーがお互いを引き立たせていて、その関係性を見てきれいだなと思った。自分がやりたい立ち位置とクロスオーバーした感じがして、『人を輝かせる、こういう仕事がしてみたい』と思った」という。やがてオンラインショップを自宅でやるのが手狭になり、実店舗を持つことになる。それが今もある恵比寿のブティックだ。 

「プティローブノアー」2017年春夏コレクションより。(c)petite robe noire

■よみがえらせた日本のコットンパール

 だが、オリジナルの商品を作るまでには少し時間を要した。作りたいという思いはあったが「ファッション界には偉大な先輩方がいて、自分がそこで肩を並べるにはまだ確固たるものを持っていない。何か意味を見出さないと進めなかった」という。「自分は何をして生きていきたいのか?」と悩んで違う職業に就いた時期もあった。だが「身につけることで人の気持ちが変わるような服飾全般、それが自分の喜びで大切なものだとあらためて気が付く。それはお金にも代えがたい自分の情熱だった」という阿部。そこからはパズルのピースをはめていくかのように、自分ができることをどんどん実現していったという。

 中でも、ブランドの代名詞となったのはコットンパール(コットンを球状に圧縮し、表面にパール加工を施したもの)の存在だ。「軽くて、ぬくもりのある柔らかいパール感が新鮮に思えて、その魅力に圧倒された」という阿部は、もともと古いデッドストックの素材を使っていた。だが、やがてそのパーツも在庫が底をつく。日本では戦後、多くのコットンパールが製造され、アメリカに輸出されていたことを知った阿部は「その失われていく技術をなんとか蘇らせることはできないか?」と考え、リプロダクトに向けて行動を起こす。「メイド・イン・ジャパンの価値を追求したいと思ったときに、パールは一つの深めていくべき素材だった。パールは女性を引き立たせる美しさがあるし、今でも自分がものを作る核になっている」と話す。 

12月2日より発売される「ポーター」とのコラボアイテム。(c)petite robe noire

■精神的な自由を求めて

「プティローブノアー」の物作りには一切の妥協がない。「クラチカ ヨシダ 表参道 the PORTER Gallery」では12月2日から、「ポーター(PORTER)」との限定コラボアイテムを発表する。手捺染(てなっせん)という技術を使い、ゴールドの箔フィルムを全面に施したアイテムだ。「機械でもできる工程だが、手作業で作られたものは風合いが違う。この箔プリントはブランドの一つのシグネチャーのようになっているので、今回のポップアップショップでは思い切って全部箔のアイテムを作ってみようということになった」と語る。

 伝統的な技法を使いながらもモダンにデザインされた商品は、身にまとう人たちの気分を高揚させてくれる。阿部は「発見することが人生を変える」と考え、自身のクリエーションに関しても受け取り方を限定しない。「たとえばネックレスをたすき掛けで付けてみたり、ブレスレットとしても使ったり。固定概念にとらわれず、一つの壁を破ったときにいろんなふうに広がっていく。そういう豊かさが楽しい。本当に自分が伝えたいことは精神的な自由と、何かに気づけることの大切さ。伝えづらいかもしれないけれど、作り手としてはそういう意図を大切にしたい」

 そんな阿部のセンスと情熱が詰まった作品は、私たちの心をも解放してくれそうだ。「クラチカ ヨシダ 表参道 the PORTER Gallery」のポップアップショップは12月25日まで開催。ぜひその美しいプロダクトを実際に手に取って体験してみてほしい。

■イベント概要
・petite robe noire in the PORTER Gallery
開催期間:12月2日~12月25日
会場:クラチカ ヨシダ 表参道 the PORTER Gallery
住所:東京都渋谷区神宮前5-6-8
電話:03-5464-1766
※同期間中、「クラチカ ヨシダ 丸の内」、「クラチカ ヨシダ 大阪」でも商品を展開。

■関連情報
・プティローブノアー 公式サイト:www.petiterobenoire.com
(c)MODE PRESS