「脳のように学ぶAI」への道開ける…韓国KAISTとIBM、人間の前頭葉が持つ学習戦略の仕組みを解明
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【12月30日 KOREA WAVE】韓国科学技術院(KAIST)は、バイオ・脳工学科のイ・サンワン教授の研究チームがIBMのAI研究所と共同で、人間の前頭葉が変化する目標と不確実な環境をどのように処理するかというメカニズムを解明したと発表した。これにより、将来的に「脳のように学ぶ人工知能(AI)」の実現に向けた道筋が示された。
研究チームは、既存のAI強化学習モデルでは「目標の変化」や「環境の不確実性」に対応する柔軟性と安定性の両立が困難であるのに対し、人間はこの両立を自然に達成している点に着目。その違いが「前頭葉の情報表現構造」に由来するとの仮説を立てた。
脳機能を測定するfMRI(機能的磁気共鳴画像法)実験、AI強化学習モデル、計算論的分析手法を組み合わせた結果、前頭葉は「目標に関する情報」と「環境の不確実性に関する情報」を、互いに干渉し合わないよう独立させて保存する「直交化(Orthogonalization)」という特有の構造を持っていることが明らかになった。
この構造が明確な人ほど、目標が変化すれば即座に戦略を切り替え、環境が不安定でも安定した判断を保つことができるという。こうした情報の処理形式は、通信技術において複数の信号を混ぜずに伝送する「マルチプレクシング(多重化)」と類似した特徴を持つと分析された。
研究によれば、前頭葉には2つの「情報チャネル」が存在し、一方は変化する環境の不確実性を分離して安定した判断を支え、もう一方は変化する目標を敏感に追跡して柔軟な意思決定を可能にする。特に、これら2つのチャネルを適切に制御することが、人間に特有の「メタ学習(Meta-learning)」、すなわち状況に応じて自ら学習戦略を選択する能力の核となっていることが確認された。
研究チームは、この発見がAIの開発に新たな視座をもたらし、「脳のように柔軟に学び、安定して判断できるAI」の実現に近づくと強調。個人の強化学習やメタ学習能力の分析、パーソナライズド教育設計、認知能力の診断、人間とAIの協調設計など、幅広い分野での応用が期待される。
また、脳を模倣したAI構造を取り入れることで、AIが人間の意図や価値をより深く理解し、予期せぬ状況でも危険な判断を避け、人間とより安全に協働できる技術の礎になると述べている。
研究を主導したイ・サンワン教授は「今回の成果は、変化する目標に柔軟に適応しつつ、安定して計画を立てる脳のメカニズムをAIの視点から解き明かしたものだ」としたうえで、「この原理は、今後AIが人間のように学び、適応し、安全かつ賢く進化するための次世代AIの核となるだろう」と語った。
(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News