【三里河中国経済観察】APEC前に開くアジア太平洋メディア会議の狙い

10月02日 16:00


広東省深セン市の都市景観=提供写真(c)CNS


【10月2日 CNS】広大な太平洋には絶えず潮が満ち引きし、世界で最も活力に満ちた経済圏を支えている。

アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議が11月、広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)で開催される。この世界的な経済・貿易の重要会議を前に、9月5日にはアジア太平洋メディア・ハイレベルフォーラムが一足早く開幕した。その規模と重要性は大きな注目を集めている。

「APECは経済協力が中心なのに、なぜわざわざメディアのフォーラムを開催するのか」と疑問に思う人もいるだろう。その答えを探るには、誕生当初から極めて重要な意味を持ちながら、その後まったく異なる道をたどった二つの協定から見ていくと分かりやすい。

時計の針を6年前に戻そう。反グローバル化の動きが強まり、貿易保護主義が台頭する中、各国は協力による打開策を模索し、複数の地域経済・貿易協定の締結に向けた動きが加速していた。

2020年11月、東南アジア諸国連合(ASEAN)10か国と中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドは「地域包括的経済連携協定(RCEP)」に正式に署名した。同協定は世界の人口と貿易額の約30%をカバーし、世界最大規模の自由貿易圏が誕生した。

RCEPは2022年に発効。関税障壁が引き下げられ、通関手続きの円滑化が進み、サプライチェーンの結びつきも一段と強まった。アジア太平洋各国は互いに深く結びついた発展共同体を形成し、地域協力による実益が企業や市民にもたらされている。

RCEP加盟国、とりわけASEAN諸国は大きな恩恵を受けている。例えば、タイ産ドリアンをはじめとする東南アジアの特産品が中国市場に入りやすくなり、生産農家の所得増加につながった。また、原産地規則の累積制度によって、域内企業は関税優遇を受けるための条件を満たしやすくなった。多くの多国籍企業がこれを活用して事業配置を最適化し、アジア太平洋各国に分業・協力型の生産体制を構築することで、地域の雇用拡大や産業高度化を後押ししている。

ほぼ同じ時期、もう一つの重要な協定である「EU・中国包括的投資協定(CAI)」も、2020年末に大筋合意に達した。当時、同協定は欧州連合(EU)と中国の関係をけん引する「新たなエンジン」とみられていた。

本来なら双方に利益をもたらす協定となるはずだった。しかし2021年5月、欧州議会は、一部勢力が意図的にあおった世論の高まりの中で、協定の批准手続きを凍結する決議を採択した。

それから5年以上が過ぎた現在も協定は棚上げされたままで、EUと中国の投資協力は多くの機会を逃してきた。一方、欧州経済はエネルギー危機や産業流出に苦しみ、製造業の受注も減少を続けている。今年の夏にはエアコンの供給さえ明らかに逼迫し、協力によって得られたはずの利益を失った代償の大きさが繰り返し浮き彫りになっている。

CAIが行き詰まった理由は多岐にわたるが、無視できない要因の一つが、世論における偏見と認識のずれだ。長年にわたる情報の隔たりや一面的な報道によって、欧州の一部メディアや研究機関では、中国の発展やEU・中国協力に対する誤解や偏見が生じ、世論の疑念が最終的に政治的な抵抗へと転化した。

一方、RCEPが順調に発効できたのは、アジア太平洋各国の経済に高い相互補完性があっただけでなく、地域各国が近い発展ビジョンを持ち、相互理解を促す世論環境と確かな民意の基盤があったためでもある。協力の土台となるのは、文書に記された条文だけではなく、人々の心に根付く理解と信頼でもあるということだ。

ここで最初の問いに戻る。APEC首脳会議を前に、なぜアジア太平洋メディア・ハイレベルフォーラムを開催するのか。理由は実にシンプルだ。地域協力の鍵を握るのは経済・貿易だが、それだけでは十分ではない。協力を安定的かつ長期的に発展させるには、人びとの心に根差した共通認識とコンセンサスが欠かせない。

現在、アジア太平洋共同体の構築はより深い段階に入っている。しかし、地域には多くの国・地域が存在し、文化や伝統、発展段階、国内事情、求める利益も大きく異なる。情報の壁や認識のずれは、協力の航路に潜む暗礁のような存在となっている。

多くの有益な協力政策や双方に利益をもたらす発展の物語も、情報発信の不足や文脈のずれによって、一部だけを切り取られたり、意図的に曲解されたりすることがある。その結果、市民レベルの支持や共感が損なわれ、協力をさらに深化させる上での障害となっている。

一部の欧米メディアはイデオロギー的な偏見に陥り、一面的な語り方や二重基準に固執し、意図的に対立を生み出して相違を誇張している。さらに、アジア太平洋地域の協力を恣意的に中傷し、地域の相互利益という本質を歪曲することで、国際社会の認識を混乱させ、地域の共通認識を分断している。

こうした状況の中、アジア太平洋地域のメディアには、専門性、客観性、公正性を堅持する姿勢が求められる。偏見に目を曇らされず、固定観念に縛られず、イデオロギーに左右されることなく、理性的な視点からアジア太平洋の発展を見つめ、事実に基づいて協力の成果を記録し、多様な視点からの発信によって情報の壁を打ち破る必要がある。そうして初めて、世論の偏見を打破し、誤った認識を正し、世界の人々に真実で立体的かつ全面的なアジア太平洋協力の姿を示すことができる。そうでなければ、世論の亀裂はさらに深まり、誤った認識は広がり、苦労して築き上げた協力の成果も誤解の中で色あせてしまうだろう。

2026年はAPEC「中国年」で、会議のテーマは「アジア太平洋共同体を構築し、共同繁栄を促進する」だ。今回のアジア太平洋メディアの「ハイレベル会合」は、異なる制度や文化的背景を持つメディア関係者が一堂に会し、率直に対話する機会となる。地域のメディア協力と人々の相互理解を促進するとともに、11月の首脳会議に向けてさらなる共通認識を形成し、その土台を築くことにもつながる。

経済的な損得だけでなく、人びとの心も重要だ。条文を超えたところには、共感がある。APEC「中国年」を彩るだけでなく、アジア太平洋地域におけるメディア交流・協力の深化は、誤った情報や偏見を排し、共通認識を形成することにもつながる。それによってアジア太平洋共同体の構築に対する価値観の共有がさらに広がり、地域経済の繁栄と安定を内側から支える持続的な原動力となることが期待される。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News