【9月24日 CNS】4年間止まっていた大型工場が、ついに再始動した。
世界有数の半導体メモリー大手、韓国SKハイニックス(SK Hynix)はこのほど、中国・大連市(Dalian)にあるNAND型フラッシュメモリー生産拠点の第2工場の建設を再開した。新たな生産ラインでは、成熟プロセスのウエハーを月5万枚投入する計画で、2027年上半期の量産開始を見込む。稼働すれば、大連拠点全体の生産能力は50%拡大する見通しだ。
この工場は4年前に着工したものの、メモリー市場の低迷を受けて建設が中断していた。AI需要の拡大を背景に、再び動き始めた。
大連にも、合肥市(Hefei)の大手半導体メーカー長鑫科技(CXMT)の成長をきっかけに合肥市が半導体産業の一大拠点へと発展したような「長鑫モーメント」が訪れるのか。大連の半導体産業の歴史は2007年にさかのぼる。米インテル(Intel)がアジア初のウエハー工場を大連に建設し、中国東北部の工業都市だった大連が世界の半導体産業に加わる契機となった。
2015年に3D NANDの製造拠点へ転換した後、大連工場はインテルの不揮発性メモリー事業の重要拠点となった。2020年にはSKハイニックスがインテルのNAND事業買収を発表し、その後、大連工場も傘下に収めた。
転機となったのは2025年前後だ。AI大規模モデルの学習や推論に必要な高速・大容量ストレージの需要が急増し、企業向けSSD(eSSD)の需要が拡大した。調査会社オムディア(Omdia)は、2025~2030年のDRAMとNAND型フラッシュメモリーの市場需要が年平均19%で成長すると予測している。
こうした「ストレージ能力」をめぐる競争の中で、メモリー半導体の付加価値は大きく高まった。かつて採算悪化によって見送られた生産能力の拡大も、現在では投資回収を見込める状況になっている。
大連第2工場の再始動は、市場の需給に対応するだけでなく、地域の競争環境にも関わる戦略的な判断だ。需要面では、AIによって生じたストレージ需要の拡大が直接的な原動力となっている。大規模モデルのパラメーター数が増えるにつれ、高性能・大容量の企業向けSSDがAI計算クラスターに欠かせない存在となり、SKハイニックスにとっても高価格帯市場でのシェアを維持するための増産が必要になっている。
一方、供給・競争面では、中国のメモリー半導体メーカーの台頭が大きな圧力となっている。2026年第2四半期には、長江存儲(YMTC)の世界NAND市場シェアが初めて上位3社に入った。長鑫科技の2026年上半期の売上高は1503億1000万元(約3兆4577億円)となり、前年同期比873.64%増加した。
中国の大手メモリー半導体メーカー2社が急速に追い上げる中、世界の大手メーカーも競争への対応を迫られている。業界関係者からは、サムスン電子(Samsung Electronics)やSKハイニックスが従来と同じペースで生産能力を拡大していれば、近い将来、中国勢に追いつかれ、さらに追い越される可能性もあるとの見方が出ている。
その意味で、SKハイニックスによる大連第2工場の再始動には、市場シェアを守る狙いもある。産業発展の面では、大連の半導体産業は比較的早い時期から形成されてきた。約20年間の発展を経て、現在では40社近い関連企業が集積している。2024年の大連市の半導体産業の工業総生産額は287億元(約6602億2054万円)に達した。
大連には独自の強みもある。一つは、インテルとSKハイニックスを中核企業として、約20年をかけて形成されてきた産業基盤だ。半導体のパッケージング設備や電子ペーストなど、サプライチェーンの重要分野でも企業集積が進んでいる。
2025年8月には、大連普湾北硅谷集積回路産業園区が、遼寧省で唯一の集積回路産業を対象とする省級特色産業園区に認定された。もう一つは、大連が中国東北部で唯一、域内総生産(GDP)が1兆元(約23兆円)を超える都市であり、世界有数の半導体製造拠点を持つ数少ない東北部の都市であることだ。2026年の大連市政府活動報告にも、「SKハイニックス第3期などのプロジェクト建設を重点的に推進する」と明記された。
半導体産業を新たな成長分野に育てようとする大連の姿勢が鮮明になっている。安徽省合肥市は約10年間、長鑫存儲への継続的な投資を通じ、半導体産業の基盤がほとんどなかった中国中部の省都から、国内有数のメモリー半導体産業の集積地へと成長した。中核企業を呼び込み、それを起点にサプライチェーン全体の企業集積を進めるこの手法は、業界で「長鑫モデル」と呼ばれている。
現在の大連も、これに似た道を歩み始めている。SKハイニックス第2工場の再始動は、生産能力の拡大にとどまらず、半導体製造装置や材料、後工程など、サプライチェーンの川上・川下企業の集積を促す可能性がある。AIがストレージ需要を押し上げる中、メモリー半導体の戦略的な価値も改めて見直されている。
ただ、大連の半導体産業全体の生産額は、合肥の長鑫科技1社が四半期で500億元を超える売上高を上げる規模と比べても、まだ大きな差がある。サプライチェーンの充実や規模の拡大には、なお時間が必要だ。
4年間止まっていた工場の再始動によって、大連は再び世界のメモリー半導体産業で存在感を高める機会を得た。AIによるストレージ需要急増の好機を捉え、中核企業の増産から産業全体の集積へと発展させられるか。それが、大連が独自の「長鑫モーメント」を迎えられるかどうかを左右する。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News