【8月17日 CNS】「今や、自動車メーカー10社でも、バッテリーメーカー1社にはかなわない」。これは冗談ではなく、中国の自動車産業チェーンが直面している現実を表している。
新エネルギー車は輸出台数や市場シェアを伸ばす一方で、自動車メーカーの利益率は低下が続いている。中国自動車流通協会乗用車市場情報聯席分会(乗聯分会)が発表したデータによると、2026年1~5月の中国自動車業界の利益は1440億元(約3兆4802億円)、利益率は3.4%にとどまり、下流製造業全体の平均である6.1%を大きく下回った。
一方、上流企業は好調だ。今年第1四半期、車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)の純利益は207億元(約5002億9000万円)を超え、1日当たり約2億3000万元(約55億5877万円)を稼いだ計算になる。同時期、比亜迪汽車(BYD)、上海汽車集団(SAIC)、吉利汽車(Geely Automobile)など主要上場自動車メーカー10社の親会社株主に帰属する純利益を合計しても174億9700万元(約4228億7799万円)にとどまった。
つまり、自動車メーカー10社を合わせても、バッテリーメーカー1社の利益に及ばなかったことになる。自動車メーカーの利益率はここ数年低下傾向が続いており、2024年は4.3%、2025年は4.1%、2026年には4%を下回った。
では、電動化時代に自動車メーカーが利益を上げられないのは、バッテリーメーカーに利益を奪われているからなのだろうか。記事では、その背景には外的要因と内的要因の双方があると分析している。
まず外的要因として挙げられるのが、上流コストの上昇だ。駆動用バッテリーは新エネルギー車の中核部品であり、車両コストの40~50%を占める。今年は炭酸リチウムなどの原材料価格が上昇し、自動車メーカーの負担が増加した。さらにメモリー半導体の価格も上昇しており、小鵬汽車(XPeng)の何小鵬(He Xiaopeng)董事長も「自動車づくりは本当に大変で、どこかのコストが上がればすぐに影響を受ける」と語っている。
これに対し、バッテリーメーカーは技術力や規模の経済、サプライチェーンでの優位性を背景に価格決定力を持っている。自動車メーカーも独自開発を進めているが、短期間でその差を埋めることは容易ではない。
しかし、記事は、より大きな問題は業界内部の過当競争にあると指摘する。近年、多くの自動車メーカーは市場シェア拡大を優先し、利益を犠牲にした価格競争を展開してきた。新ブランドやサブブランドの立ち上げも相次ぎ、新型車の投入ペースも加速している。
2026年1~5月、中国国内では550車種の新車が発売され、1日平均では3車種以上が市場に投入された。一方、同期間に発売されたスマートフォンの新機種は157機種だった。
耐久消費財である自動車の新製品投入ペースがスマートフォンを上回る状況は、利益率の低下と企業体力の消耗を招いているという。こうした内外の要因が重なり、自動車メーカーの利益を圧迫している。そのため、多くの自動車メーカー経営者は「内巻(過度な競争)」を是正し、「利益を確保すべきだ」と公の場で訴えるようになった。過剰な競争を続ければ、企業は消耗戦に陥りかねないとの危機感があるためだ。
一方で、状況には変化の兆しも見えている。中国政府は「内巻式」の過当競争を防ぐ方針を繰り返し打ち出し、自動車メーカーへの支援策も進めている。また、企業側も製品ラインアップの整理や新車投入ペースの見直しを進め、市場シェア重視から利益重視へと経営方針を転換し始めている。
「数量」ではなく「価値」で競うことが、新たな方向性になりつつある。利益を伴わない販売台数は、見栄えのよい数字に過ぎないという考え方だ。
記事は、自動車メーカーの収益悪化について、単にバッテリーメーカーに利益を奪われたというよりも、厳しい競争環境の中で、自らの収益力や価格交渉力の課題が浮き彫りになった結果だと分析する。
そして最後に、健全な産業とは上流と下流がともに利益を得ながら市場全体を拡大していくものであり、技術革新やコスト低減が進めば、バッテリーメーカーと自動車メーカーの双方に利益拡大の余地が生まれると指摘している。
中国自動車産業にとって重要なのは、「誰が利益を奪ったか」ではなく、「産業全体が持続的に利益を生み出せる仕組みをどう築くか」だとしている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News