【6月30日 CNS】サッカーW杯北中米大会(2026 World Cup)が開幕したばかりだが、中国・浙江省(Zhejiang)では一足先に草の根サッカーの王者が誕生した。6月11日夜、杭州黄龍スポーツセンターで行われた第1回「呉越杯」決勝は、4万2000人を超える観衆が見守る中、金華市(Jinhua)代表がPK戦の末に温州市(Wengzhou)代表を破り、初代王者に輝いた。表彰式では浙江省の劉捷(Liu Jie)省長が自ら優勝トロフィーを授与した。
草の根サッカー大会に省長が出席して表彰を行うのは異例のことだ。金華市の優勝を受け、新たな言い回しも生まれた。「世界の義烏、アジアの永康、中国の東陽、そして王者の金華」。義烏市(Yiwu)、永康市(Yongkang)、東陽市(Dongyang)はいずれも金華市が管轄する県級市で、義烏は世界有数の小商品市場、永康は金物産業、東陽は中国最大級の映画・ドラマ撮影基地「横店影視城」で知られる。これまでは周辺都市の存在感が大きかったが、今回の優勝で金華市中心部も大きく注目を集めた。
浙江省が重点的に推進する市民スポーツ大会である「呉越杯」は、「草の根サッカー」を掲げており、参加した619人の選手に現役プロ選手は一人もいない。4月6日の開幕以来、大会では数々の名場面が生まれた。例えば、台州市(Taizhou)の19歳の尚陳昱舟(Shang Chen Yuzhou)選手は、約50メートルのロングシュートを決めて話題となり、デビッド・ベッカム(David Beckham)氏からもSNSで称賛を受けた。民間サッカーならではの創造力と爆発力が、多くの人を魅了した。
2か月余りに及んだ大会は、総観客数約92万7000人、インターネット上での関連閲覧数144億回超という好成績を記録した。さらに観光やスポーツ関連消費を23億元(約544億5250万円)以上押し上げた。
サッカーの試合が都市を活性化し、サポーターの都市間移動が交通、宿泊、飲食、観光など幅広い消費を生み出した。その背景には、「人が動き、街が活気づき、消費が伸び、産業が発展し、サッカー人気が高まる」という好循環がある。
こうした現象は、単なるサッカーイベントの成功にとどまらない。地方都市がサッカーを切り口に地域全体の発展を促す新たな取り組みでもある。全国に目を向けると、このような草の根サッカーの盛り上がりは各地へ広がっている。「蘇超」「東北超」「粤超」「閩超」「楚超」など、地域リーグが次々に誕生し、高い人気を集めている。その背景には、地域に根差し、市民に身近な存在としてスポーツを生活の中に取り戻したことがある。
プロサッカーがピラミッドの頂点なら、草の根サッカーはその土台だ。各地のリーグの盛況は、中国にサッカーを愛する人が不足しているのではなく、誰もが気軽にプレーできる舞台や、地域に根差した継続的な育成環境が不足していたことを改めて示している。
サッカーは小さなボールだが、人びとの暮らしや地域経済、文化とも深く結び付いている。市民には健康的な生活が、都市には活気ある消費の場が、産業には融合発展の機会が求められており、サッカーはそのきっかけになり得る。
省長が草の根サッカーの優勝チームを表彰したことは、明確なメッセージでもある。市民スポーツを重視し、地域の力を引き出し、サッカーを人びとの身近なものに戻し、スポーツを地域発展につなげていこうという姿勢を示したのである。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News