【三里河中国経済観察】2つの「超常規」が今後5年の新たなチャンスを切り開く

04月08日 16:00


中国(天津)国際装備製造業博覧会で器用に動くロボット設備を見学する来場者=2026年3月18日撮影・資料写真(c)CNS/佟郁


【4月8日 CNS】「第15次5か年計画」綱要を読み込むと、2つの「超常規」という言葉が目に飛び込んでくる。1つは、重要な中核技術の研究開発を加速し、国の切り札となる技術を押さえることを指している。綱要では、戦略上どうしても確保すべき分野と、産業チェーン・サプライチェーンの弱い部分に焦点を当て、超常規の措置を講じ、集積回路、工作機械、高度計測機器、基盤ソフトウェア、先進材料、バイオものづくりなど重点分野で、中核技術の研究開発に決定的な突破をもたらすよう、サプライチェーン全体で後押しするとしている。

もう1つは、新興分野の人材育成を指しており、大国を支える高度技能人材の育成に力点を置いている。綱要では、人工知能(AI)や集積回路などの新興分野で急いで必要とされる学科や専攻を超常規で配置し、基礎学科と学際分野の突破計画を踏み込んで実施すると明記している。

この2つの「超常規」は、一見すると別々の戦線のように見えるが、実際には表裏一体だ。技術の突破は人材育成の方向を示すものであり、人材はイノベーションを支える尽きることのない源でもある。この2つが重なり合うことで、今後5年の大きなチャンスが形づくられていく。

では、「超常規」とは具体的に何を意味するのか。

国務院発展研究センター市場経済研究所の副所長で研究員の魏際剛(Wei Jigang)氏は、「超常規」とは、特定の重大な戦略目標を実現するために、従来の枠を超えた発想や突破的な措置を取ることだとみている。「従来の発展経路や発展モデルへの依存を打ち破り、戦略、政策、制度、市場環境などあらゆる面から着手して、動員できる力をすべて引き出し、全方位かつ体系的に統一的な推進を行う必要がある」

なぜ超常規でなければならないのか。対象分野の特徴を見れば、その答えは明らかだ。第1に、どれも国家戦略上、絶対に競り負けられない分野であり、時間的な余裕がないからだ。

これらの重点分野での競争は、国の将来や安全保障、長期的な発展そのものに関わる。たとえば、集積回路は「産業の食糧」とも呼ばれ、情報産業の基盤を成している。工作機械は「ものづくりを支える機械」であり、「自立自強の土台」でもあり、製造業の到達点を左右する。バイオものづくりも、「未来を制する重要な競争分野」とされ、新たな産業変革の主導権に関わっている。こうした重点分野では、国際競争がすでに激化しており、先進国は主導権の確保に全力を挙げている。後発国に対する締め付けも強まっている。この競争では、少しの遅れも許されない。

第2に、これらの分野は産業チェーンとサプライチェーンの弱い部分に当たっているからだ。いくつか数字を見ると、それがよく分かる。まず工作機械では、高度なNC工作機械の国産化率はわずか10%で、高級市場は全体として外資系企業に握られている。

次に高度計測機器では、国内企業の90%以上が中低価格帯に集中しており、フローサイトメーターや臨床用質量分析装置などの高級機器は、輸入依存度が95%を超えている。基盤ソフトウェアについても、国産デスクトップOSの市場シェアを合計してなお10%に届いていない。こうした数字の背後にあるのは、産業チェーンの中低位に長く固定されてしまうリスクだ。ここで超常規の措置を取らなければ、さらに後れを取り、さまざまな場面で他国に左右されかねない。

第3に、これらは新しい産業であり、技術の入れ替わりがきわめて速いからだ。こうした新興分野の多くはまだ育成段階にあり、技術も理論も急速に更新されている。従来通り、4年制学部から修士・博士へと段階的に育成していくやり方では、人材が育つ頃には競争の舞台そのものがすでに変わっている可能性がある。

待つことができず、負けることも許されない分野では、従来型のやり方ではもはや対応できない。どう局面を打開するのか。魏氏は、新たな挙国体制の強みを最大限に発揮する必要があるとみている。「各種政策手段と市場の力を有機的に組み合わせ、大学、研究機関、企業、政府、資本など、あらゆるイノベーション主体の力を全面的に引き出し、産業チェーン全体、エコシステム全体、ライフサイクル全体を通じて力を入れ、中核技術の難関突破に総力で取り組むべきだ」

では、人材の供給源をどう確保するのか。魏氏は、新興分野の産業発展の需要に焦点を当て、大学は学科構成を見直し、新設学科や学際分野の整備を強化すべきだと指摘する。打ち破るべきなのは、時代遅れの専攻設定や硬直した学部・学科の壁であり、年功序列や論文偏重の評価基準であり、部門ごとの分断や資源の分散を生む制度的な障害だ。

一方で、新たに築くべきものは、単に授業をいくつか増やすような話ではない。国家のイノベーション・エコシステムと高等教育体系そのものを組み替えることだ。魏氏は、人材育成モデルを改革し、大学と新興分野の企業が共同で育成プログラムを作る試みを進め、産学研の融合を後押しすべきだと提案している。また、研究機関は研究者の成果移転による利益配分を高め、関連する評価制度も見直し、より多くの技術を市場と結びつけ、人材の活力を十分に引き出すべきだとする。

その狙いは、大学が机上の議論に閉じこもらず、企業が人材育成に深く関わり、研究者の成果が実際に市場へ届くようにし、「産学研用」が自ら強まっていく好循環を形づくることにある。これは教育制度を根本から組み替える試みであり、きわめて大きな戦略的力度を持つものだ。

一般の人々にとって、こうした超常規は何を意味するのか。たとえば、スマートフォンやパソコンの半導体がより高速で高性能になり、安全性も高まることかもしれない。医療や医薬品の面で輸入への依存が減ることかもしれない。子どもたちの就職先に、より多くの新しい選択肢が生まれることかもしれない。

これはスローガンではなく行動であり、その場しのぎの対応でもなく、長期的な戦略だ。そこに示されているのは、1つの強い決意だ。国家戦略上どうしても争わなければならない分野で、中国は決して不在にはならない。未来を左右する競争の舞台で、決して取り残されることもない。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News