【3月16日 People’s Daily】范十三(Fan Shisan)さんには幼い頃から「武侠の夢」があった。「手をひと振りすれば剣が鞘から飛び出し、心のままに剣が動く、剣を操って空を飛び、剣と対話をする」、この90年代生まれの若者・「個人メディア」のクリエーターの世界では、そんなファンタジーが現実のものとなっている。
范さんのスタジオは四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)郫都区にあり、壁には40本以上のさまざまな形状や材質の刀剣が並べられている。ホワイトボードにはびっしりと計算式が書き込まれ、スタジオのスタッフたちは小説に登場する「剣気(剣から放たれる気のエネルギー)」をどのように映像にするかについて輪になって熱心に議論をしている。「レーザーを使おう」「高圧ガスを試してみよう」など、このスタジオでは「武侠の世界」とテクノロジーが出会い、若者たちの創造力の中で共に煌めく火花を散らしている。
黒い衣装に長剣1本、それが范さんのトレードマークだ。范さんは「子供の頃から武侠小説が大好きで、そこに描かれる技を現実のものにしたいと思っていた。特殊効果ではなく、科学の力で実現したかった」と話す。
「武侠の夢」が実現し始めたのは2020年のことだった。当時成都のホテルで働いていた范さんは独学で動画制作を学び始め、剣術を中心とした動画で次第に人気を高め、100万人を超すフォロワーを獲得するまでになった。
彼の映像では、木剣が鞘から抜かれると同時に、遊園地の風船売り場の風船が次々と破裂する。さらに、複数のダクテッドファン型推進装置(ドローンの1種)を組み合わせることで、剣に乗って空を飛び自在に移動する「御剣飛行」も実現できるという。また「火炎刀」「氷剣」「雷刃」といった架空の武器の演出も、実際の撮影によって表現可能な「クールな」映像となっている。
「子供の頃の『武侠の夢』は一度目覚めると、どんどん膨らんでいく。現在スタジオには6名の若いメンバーが在籍し、撮影から設計図作成、小道具制作から技術指導まで、それぞれの専門性を活かして夢を現実に変えている。チームには電気工学や美術を学んだメンバーがいて、私は物理化学が専門だ。役割分担が明確で、互いのスキルが補完し合っている」と范さんは説明する。
特殊な形状の剣を「飛行」させるため、彼は何度も飛行器械の開発団体に助言を求め、剣の中に飛行装置を組み込んで繰り返し試験飛行を行った。
「剣気」の研究のためには、西華大学(Xihua University)理学部を訪れ、空気の流れの可視化が可能な「シュリーレン装置」と毎秒最大13万コマの撮影が可能な超高速カメラを借りて、ついに「剣気」の可視化に成功した。
電光石火のスピード演出や「御剣飛行」——テクノロジーを駆使したこれらの挑戦を、范十三は常に躊躇なく試みる。「大胆に考え、果敢に行動し、困難に立ち向かう、これこそが中国伝統武術が伝える精神的な力でもあります」。
電光石火のスピード演出や御剣飛行など、テクノロジーを駆使した様々な挑戦に、范さんは常に躊躇なく取り組んできた。「大胆に構想し、果敢に実行し、困難に立ち向かう、それこそが中国伝統武術が伝えてきた精神の力だ」と范さんは言う。
一つ一つの動作を物理の問題として分解し、電気回路や機械を通じて伝統武術の文脈を見出すことで「中華の美学」は新たな輝きを放つ。小型の飛剣をデザインする際には、古代四川省の「三星堆遺跡」から出土した文物の文様を参考にし、剣の様式は古代中国の10本の名剣の1本として名高い「龍泉剣」をモデルにした。剣は「中国美学」を象徴し、古い国粋の風格を体現している。
「誰の心の中にもきっと『武侠の夢』がある。私がやりたいのは、より大きな勇気をもって夢を実現し、中国人特有のロマンを表現することだ」、范さんはこう語っている。(c)People’s Daily /AFPBB News