【12月30日 AFP】中国で台湾に最も近い島・平潭島で30日、中国人観光客がきらめく海を見下ろす寺院に集まっていると、遠くの小島からごう音が聞こえた。
さらに、台湾本島か西に約130キロの距離にある平潭島の澄み切った青空をロケット弾が通過した。この島は、中国が台湾周辺で実施している実弾演習「正義の使命2025」の最前線でもある。
観光客たちは、携帯電話や自撮り棒を手に海に向かって走り、空に航跡を残す飛翔体(ひしょうたい)を写真に収めた。
南西部四川省から訪れた観光客のチェンさん(63、女性)はAFPの取材に対し、「わが国はますます強くなり、繁栄している。だからこそ、このようなことをする力がある」と述べた。
チェンさんは過去に一度、台湾を旅行したことがあると語り、中国と台湾にとっての「最終的な結末」が「平和的な統一」であることを願っていると語った。
近くでは、同じく四川省から訪れた中高年女性たちが寺院の入り口前で記念撮影をし、一斉に「祖国統一!」と叫んでいた。
チャンさん(59、女性)は、「(台湾を)ここから見ると、見えなくても、本当に近くにあるように感じる」と語った。
チャンさんも台湾を訪れたことがあるが、物価が非常に高いという印象を受けたという。
「台湾の物価は本当に高く、実際、高齢者の生活水準は中国ほど高くない」と述べた。
チャンさんは、今回の軍事演習は台湾独立を主張する人々に対する「抑止力」になると主張。
「抑止しなければ、台湾分離主義者勢力は台湾の人々を煽動し続け、われわれ中国人と中国共産党に対する反抗的な態度を取り続けるだろう」と続けた。
■平和への願い
AFPの記者たちは30日、平潭島近海で中国海警局の船2隻を確認した。前日には戦闘機2機と軍艦1隻も確認した。
中華人民共和国(中国共産党)は台湾を統治したことが一度もないにもかかわらず、台湾は自国領土の一部だと主張し、武力行使による併合も排除していない。
台湾は中国の主張を否定し、自らを主権国家とみなしている。
平潭島の住民は観光客ほど興奮していなかった。ここ数年、軍事演習で戦闘機が飛ぶのを見るのに慣れている人が多いからだ。
海沿いの村の住民たちは、井戸から水をくんだり、自宅でテレビを見たりと普段と変わらず過ごし、AFPが取材を試みても拒否されるケースが多かった。
匿名を条件に取材に応じてくれた男性(65)は、軍事演習については知らなかったが、平潭島かつて台湾人観光客に人気の場所だったと語った。
この男性は、中国との関係改善を主導した台湾の馬英九元総統を称賛。
「彼の政権時は、皆で(台湾付近に)釣りに出かけていた」が、現在の頼清徳政権下ではそれができなくなったと語った。
ニアンさん(58、女性)は自宅前で取材に応じ、妹が台湾人男性と結婚して台湾に住んでいるため、時々台湾のニュースを見ていると語った。
たとえ中国が武力で台湾を併合することになっても「やむを得ない」が、「私たちが心の中で願っていたのは、常に平和と調和だった」と述べた。(c)AFP