【8月8日 People’s Daily】広東省(Guangdong)河源市(Heyuan)東源県(Dongyuan)柳城鎮の「万緑スマート農場」の南西部では、2000ムー(約133.3ヘクタール)のレンゲソウの花畑が、さやを付ける時期を迎え、花畑は黒い成熟したさやであふれている。
スマート農場の責任者の王鍵寛(Wang Jiankuan)さんは、さやを1つ摘み取って細かく観察し「この品種は『航紫5号』だが、ちょうど今が一番の収穫期だ」と言った。さやに実った種子は、次のシーズンの種まきに使われ、残ったレンゲソウは引き続き同じ圃場(ほじょう)にすき込まれ、環境にやさしい天然の「緑肥」となる。
無人運転の耕運機で土を耕した後、レンゲソウを土の中にすき込むと、土の奥深くで不思議な生命の「バトンタッチ」が生まれる。
レンゲソウはマメ科に属し、根粒菌(こんりゅうきん)と共生する中で、遊離した窒素を作物が必要な栄養分に変換できる。1ヘクタールあたり75~150キロの窒素を固定することができ、すき込み後の自然腐熟が早く、肥沃化の効果にも優れているので「中国緑肥の王」とも称される。説明によると、レンゲソウを水稲、油菜、トウモロコシ、野菜などと組み合わせて栽培することで、作物の収穫量を高め、品質を改善し、土壌中の有機物を増やすなど、顕著な効果が得られるという。
レンゲソウは、根による窒素固定だけでなく、重要な「蜜源植物」としても知られている。河源市では、レンゲソウの畑を利用して養蜂が行われ、「紫蜜(しみつ)」と呼ばれるレンゲソウ由来の蜂蜜の生産が行われている。
王さんは「養蜂農家の生産量がこんなに多いと分かったので、うちも来年は養蜂を検討するつもりだ」と話す。
実は柳城鎮のこのレンゲソウには、独特の宇宙遺伝子が含まれている。「国家植物航天育種工程技術研究センター」は2021年、河源市に「イノベーション研究院」を設立して、作物品種を選んで「宇宙育種実験」を実施した。王さんもこのチーム責任者の一人だ。
同年10月、広東省東莞市(Dongguang)で単株栽培されたレンゲソウ品種「粤肥2号」の種子1300粒が透明な袋に密封され「神舟13号(Shenzhou-13)」宇宙船に搭載され、宇宙へ打ち上げられた。
センターの郭涛(Guo Tao)主任は「種子は宇宙飛行で遺伝子が変化した。我々は遺伝子の優良な変化を保持するため、育種の観点からその種子の優良な特性を3世代以上にわたって維持し、安定した品種を形成することに成功した」と説明する。
22年6月中旬、宇宙を183日間周回したレンゲソウの種子は河源に返却された。「イノベーション研究院」では、データ収集、実地栽培試験、実験室での観察など2年間の研究を経て、早熟・多収で、環境ストレスに強い新たなレンゲソウの品種6系統の育成に成功した。そのうち「航紫1号」と「航紫5号」はすでに一定の市場価値を有している。
「航紫1号」は、発芽率が7%向上し、生草(刈り取り直後の水分を含んだ草)の1ムー当たりの収量が2000キロを超えた。春節前に開花し、乾燥にも強く、手間がかからないため、広東省での大規模栽培に適した早熟の優良品種となった。
「航紫5号」は、生草の1ムー当たりの収量が2500~3000キロに達し、高収量モデル圃場(ほじょう)では1ムー当たり5000キロを記録した。従来品種比で20%以上の増収を実現し「国家緑肥推奨目録」への登録が計画されている。
王氏さんは「レンゲソウの宇宙誘導変異育種は、窒素固定効率がさらに向上し、総合的な生態効果が非常に大きい。通常のレンゲソウと比べ、窒素固定・緑肥増の効果に優れ、収量も高く、その上重金属を吸着する能力もあり、稲田の化学肥料使用量を1ムー当たり25~30%削減し、米の品質を1等級向上させることができる。無人機散布や微生物菌剤などの技術と組み合わせて『宇宙遺伝子+スマート農業機械+生態系修復』の立体的な改良体系を構築すれば、1ムー当たりの増収効果は300元(約6177円)を超える見込みだ」と説明する。
東源県の藍口鎮(Lankou)の大規模栽培農家・張偉萍(Zhang Weiping)さんは、以前はレンゲソウを栽培したことがなかったが、昨年から「航紫5号」の栽培を試みた。試験栽培では、圃場で「宇宙レンゲソウ」を栽培した後に刈り取らず土壌にすき込んでから稲を栽培した結果、1ムー当たり複合肥料を10~20斤(5~10キロ)削減でき、稲の品質も向上した。張さんの計算では、1ムー当たり少なくとも200元(約4118円)の収益増加になるという。
彼は、今後さらに栽培面積を拡大し、技術の調整も進め「農業と観光の融合」を推進して、収益を引き続き向上させようと計画している。
報道によると、昨年の河源市の冬播きレンゲソウの栽培面積は7万5000ムー(5000ヘクタール)以上に拡大され、そのうち「宇宙レンゲソウ」は3100ムーに達した。
毎年の花の見頃には、地元で写真コンテストや集団結婚式が企画され、観光客は自然を散策したり、花を愛でたり、映える写真をSNSに投稿したり、美しい風景写真を撮影したりと、それぞれ楽しい時を過ごしている。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews