【8月2日 People’s Daily】ローター(回転翼)が高速回転し、「ウーン」という音を立てる。安徽省(Anhui)合肥市(Hefei)の「駱崗空中交通運営センター」で「EH216-S型無人飛行機」が軽やかに離陸し、空中に昇った。一周旋回した後に、正確に元の駐機位置に戻った。これを見た見物客はくり返し歓声を上げていた。
広東省(Guangdong)と安徽省の2社が3月28日、中国初の「乗客輸送用民間無人航空機の運航許可証」の交付を受け、商業用の搭乗者用サービスの本格的な幕開けが到来した。「空飛ぶタクシー」がいよいよ現実の生活に飛び込んできたのだ。
今回、初の運航許可証を取得した2社は、空中交通テクノロジーのリーディングカンパニー「億航智能(EHang)」の完全子会社「広東億航通用航空(EHang General Aviation)」ならびに安徽省の合弁運営会社「合肥合翼航空」で、両社が運航に使用する航空機は全て「EH216-S型」だ。
この「空飛ぶタクシー」の機体とランディングギアはヘリコプターに似ているが、テール部はなく、機体上部に大径のローターもない。飛行する動力は、機体底部の周囲8方向に配置された上下1対、合計16個の小口径ローターが供給する。機内には2人が搭乗可能で、操縦は地上指揮管制システムによって操作される。「EH216-S」は「億航智能」社が独自開発した乗客輸送用の「eVTOL(電動垂直離着陸航空機)」で、すでに型式証明、標準適航証明、製造許可証を取得し、累計6万4000回を超える安全飛行を完了している。
中国で昨年施行された「無人航空機飛行管理暫定条例」によると、マイクロサイズを除く民間無人航空機を使用して飛行活動を行う事業者は、以下のような条件を満たさなければならない。
安全運航に必要な管理機構、管理要員、およびこの条例に定める操縦員の配置。さらに安全運航に適合する無人航空機および関連施設と設備、安全運航実施のための管理制度と操作規程(マニュアル)を有すること。そして管理制度と規程に従って安全運航を継続的に実施する能力、さらに営利活動を営む事業者は営利法人であること。
「EH216-S」の最高速度は時速130キロ、1回の飛行の最大航続距離は30キロ、動力は全面電気式で、航続時間は25分だ。機体後部に充電口を装備し、1時間で急速充電が可能だという。従来の旅客機やヘリコプターと比べ、「空のタクシー」は小型で機動性が高く、離着陸が容易で騒音が低いなどの優位点がある。
さらに「EH216-S」は手動操縦を必要とせず、設定された航路に従って自律飛行を行うことができる。高速ネットワーク接続により「EH216-S」は地上指揮管制システムとリアルタイムで相互連携とデータ伝送を行い、航空機の飛行経路や飛行時間などを科学的に計画し管理することができる。
それでは「空飛ぶタクシー」の安全性はどう確保されているのだろうか?
この問いに対し「億航智能」の王釗(Wang Zhao)COOは「我々はIT分野の『完全バックアップ』の概念を、無人航空機の設計に組み込んだ。『EH216-S』の飛行制御システム、各種センサー、動力システム、バッテリーなど、重要な飛行パーツは、全て完全バックアップ設計が採用され、いずれかのパーツに故障が発生した場合、バックアップパーツが即時自動接続され、機能を代行する」と説明する。
報道によると、「億航智能」社は、運航許可証を取得後の第1段階では、まず広州穗港埠頭の「億航未来城」と「合肥駱崗中央公園」の運航拠点を利用して、低空遊覧、都市観光、飛行体験などの乗客飛行サービスを開始するという。その後、運航状況と関連法規に従って、徐々に都市通勤、空中物流、緊急医療などにサービスを拡大し「空のタクシー」としての運航路線を構築する計画だ。
運航許可証を取得したもう1社の「合肥合翼」の李暁娜(Li Xiaona)総経理は「現在、飛行訓練、空域調整、データ収集などの準備作業を急ピッチで進めており、間もなく体験飛行を開始し、最初の乗客を迎えられる見込みだ」と話している。
「EH216-S」は昨年、合計216機が納入されている。中国国内では10以上の都市で20以上の運営デモサイトと離着陸場が整備され、海外でも10以上の国で初飛行が完了したり、運営拠点の建設が進んだりしている。
億航智能の胡華智(Hu Huazhi)董事長は「『EH216-S』は乗客輸送用無人操縦の運航技術と管理スタンダードの形成に、先駆的で探索的な経験を提供している」と話す。
広東省無人航空機産業協会の副会長兼秘書長・羅亮生(Luo Liangsheng)氏は「無人操縦航空機は人工知能(AI)と民間航空の安全性の理念を融合させ、実際の運航において管理体系と規則制度を継続的に改善していかなければならない」と強調している。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews