【11月16日 AFP】78万年前の人類の祖先は、火をしっかりと通した魚を好んで食べていたする研究論文が14日、公開された。調理に火が使われたことを示す最も古い証拠だと説明している。
論文は、学術誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に掲載された。筆頭著者はテルアビブ大学(Tel Aviv University)スタインハルト自然史博物館(Steinhardt Museum of Natural History)の考古学者、イリット・ゾーハル(Irit Zohar)氏。
火が暖を取るためではなく調理に使われていたことを証明するのは難しく、調理が始まった時期をめぐっては考古学者の間で議論されてきた。論文によると、これまでは17万年前のネアンデルタール人と初期現生人類(ホモ・サピエンス)による調理痕が最も古い「決定的な証拠」とされていた。
しかし、ゾーハル氏はイスラエル北部にあるヨルダン(Jordan)川近くのゲシャー・ベノット・ヤーコブ(Gesher Benot Ya'aqov)遺跡で、大量の魚の歯を見つけた。「骨はほぼ残っていなかった」という。遺跡の近くにはかつて湖があった。
魚の骨は500度以下の温度で熱せられると柔らかくなり分解するが、歯は残る。このことから発見は、魚が調理されていた可能性を示唆していた。同じ場所からは火をおこすために使ったとみられる焦げた火打ち石なども見つかった。
歯はほとんどが2種類の大型のコイのもので、「ジューシーな」魚が好まれたようだ。コイは大きいもので体長が2メートル以上あった。
ゾーハル氏によると、「決定的な」証拠となったのは歯のエナメル質だった。
大英自然史博物館(Natural History Museum)でX線粉末回折によってエナメル質を構成する結晶構造の熱による変化を調べた結果、200~500度の熱にさらされたことが分かった。これは魚をしっかりと調理するのに適した温度だ。調理には、土でできた窯が使われていた可能性がある。
論文を読んだ仏国立自然史博物館(National Museum of Natural History)の考古学者アナイス・マラスト(Anais Marrast)氏は、「死んだ魚を処分するためなのか、それとも調理するためなのか、火にさらした理由が疑問点だ」と指摘した。(c)AFP/ Pierre Celerier