摂氏815度のこてで作る炎のカクテル、NYの最先端バー

02月19日 20:41


米料理学校フレンチ・カリナリー・インスティテュート(French Culinary Institute)の調理技術ディレクター、デーブ・アーノルド(Dave Arnold)さん(写真)が、カクテルに「分子料理法」を採り入れて開店したマンハッタンの「ハイテクバー」、ブッカー・アンド・ダックス(Booker & Dax、2012年1月25日撮影)。(c)AFP/TIMOTHY A. CLARY


【2月19日 AFP】米ニューヨーク(New York)のバーは禁煙で、たばこに火をつけることはできないが、摂氏815度の混ぜ棒でカクテルに火をつけるバーテンダーを止める規則はない。  マッドサイエンティストが操るような、真っ赤に焼けたこてで「ステア」した(まぜた)ドリンクを売りにしているのは、マンハッタン(Manhattan)の「ハイテクバー」、ブッカー・アンド・ダックス(Booker & Dax)。カクテルのトレンドに過激な地平を切り開いた店だ。  ニューヨークのフランス料理学校、フレンチ・カリナリー・インスティテュート(French Culinary Institute)の調理技術ディレクター、デーブ・アーノルド(Dave Arnold)さん(40)は科学とアートからインスピレーションを得て、カクテルに「分子料理法」を採り入れた。  電気で加熱し真っ赤になった長さ30センチの焼きごては、カクテルに瞬時に灼熱(しゃくねつ)をもたらす。マイナス200度に冷やされた液体窒素が、グラスのまわりに怪しいもやを生み出す。遠心分離機とロータリー・エバポレーターと呼ばれる蒸留装置が、どこでも見かけるフルーツやハーブをクリアなジュースやエッセンスに変える。  全米では今、新しいカクテルブームが起こっている。市販品の瓶入りウオッカトニックなどは見向きもされなくなり、昔からある人気カクテルが創造的な変身を遂げている。その立役者の1人とされるのが、2月に入りようやく自分のバーを出したアーノルドさんだ。  しかし自分のバーも、素晴らしいドリンクを提供する場のひとつに過ぎないと、当の本人は語る。「お客様に挑むような飲み物や、楽しんでいただける範囲を超えるようなものは決してメニューにありません。とんでもないと思われるようなものを混ぜ合わせているのではありません。何か色々なからくりをしているのではないかとは、思われたくありません」  カクテル用の焼きごては、アーノルドさんの発明品だ。バーで「最も予想しなさそうな道具」のひとつだろうと自認する。他の道具だってアマチュア向きではない。炭酸カクテルシステムは「少々、技術が要る」し、液体窒素は「極めて安定」はしているが、燃焼しないよう注意が必要だ。壊れやすく高価な実験室用のロータリー・エバポレーターにいたっては「他の者には使わせない」とアーノルドさんは頑として言う。  週末の金曜日、バーテンダーのクレア・ニーダム(Claire Needham)さん(24)の話を聞いた。これらの「装置」一式を扱うトレーニングを3週間受けたという。扱いを誤れば、アルコールを飲むことに新たな意味の「危険」が加わりかねない。「どんなに忙しくても、そっと、そっと扱っています。色々な注意事項も学びました」  炎と氷との格闘のほかにも、ブッカー・アンド・ダックスのバーテンダーたちは薬局に並んでいるような小瓶の中身をすべて覚えておかなければならない。小瓶の中には地下の遠心分離機で浄化した様々な抽出液が入っている。ラベルは付いていない。ニーダムさんは時々、匂いを嗅いだり、1滴味見をして確認している。  しかし、昔ながらのカクテルがすたれることはない。カクテル雑誌を発行するカレン・フォーリー(Karen Foley)さんはこう話す。「どんなに斬新なカクテルを作るのだとしても、マンハッタンやネグローニ、オールドファッションドといったカクテルの王道を理解することが鍵。そうしたカクテルが長年愛されているのには理由がある。シンプルさという意味で完璧で、どこにでもあり、上手にでき、人々をいつも幸福な気分にするからです」(c)AFP/Sebastian Smith 【動画】NY発、「ハイテク」なカクテルはいかが?(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)