目の前のスナックと遠くのごちそう、選択の決め手とは?

03月28日 18:05


2008年3月19日、ドイツ・フランクフルト(Frankfurt)の動物園で遊ぶボノボの親子。(c)AFP/DDP/THOMAS LOHNES


【3月28日 AFP】夜遅く、よく知らない街を歩いていたとしよう。飲食店はどこも閉まっている。おなかをすかせたあなたはスナックを売っている売店を見つけた。スナックで妥協するか、リスクを冒してもおいしい料理を求めてさらに店を探すか?  大半の人は安全策をとるだろう。リスクを冒した結果何も食べられずに終わるよりは、たとえスナックでも食べられればましだと考えるのだ。 ■サルで実験  こうした思考回路をたどる理由を、類人猿のチンパンジーとボノボを使って解明しようとした画期的な実験が、26日の英国王立学会(Royal Society)発行の専門誌「バイオロジー・レターズ(Biology Letters)」に掲載された。  実験を行ったのは、米ハーバード大学(Harvard University )とデューク大学(Duke University)のサラ・ハイルブロンナー(Sarah Heilbronner)氏率いる米独の研究チーム。  実験はドイツ東部にあるライプチヒ動物園(Leipzig Zoo)の研究センターで、チンパンジー5匹、ボノボ5匹を使って行われた。  実験の内容はこうだ。サルたちは逆さまにした2つのボウルのどちらかを選ばなければならない。一方は常にブドウ4粒が入った「安全」なボウル、もう一方は少ないときには1粒、多いときには7粒が入った「危険」なボウルだ。  実験の結果、チンパンジーは「危険」なボウルを、ボノボは「安全」なボウルを選ぶ傾向にあることが分かった。 ■決め手はチンパンジーの狩猟本能と食糧  チンパンジーが危険を好むことは、これまでの研究結果とも一致している。ボノボと比べるとチンパンジーは忍耐強く、ごちそうを得るために時間をかけることができるのだ。  危険に賭ける習性は、チンパンジーがボノボと違って狩りをし、コロブス属のサルを食べることでも裏付けられる。狩りが成功すればタンパク質たっぷりの食事にありつくことができるが、失敗すれば群れ全体がおなかをすかせることになる。  進化論的には「ごく最近」と言える約百万年前に同じ祖先から枝分かれしたチンパンジーとボノボは、類似点も多い。たとえば、体の大きさ、外見、行動形態、社会的序列といった共通項がある。  両者の相違点は食べ物だ。果物を主食とする点では一致しているが、ボノボは果物のほかにも、より滋養に優れた草も好んで食べる。また、ボノボのほうが広い領域で果物を探す傾向があり、その領域内で競争相手に出会うことが少ないとされる。  こうした違いが、チンパンジーの生存メカニズムに影響を及ぼしていると考えられる。チンパンジーの食糧源はボノボほど確実ではない。そのため、思い切った賭けに出るのだとハイルブロンナー氏は指摘する。  研究チームは、実験結果は生態学上の圧力がどのように意思決定に影響するかを示しており、その見解は人間にも適用できるとしている。  つまり、あなたが夜遅く知らない街を歩いていて、夕食はダブルチーズバーガーで済ませようかと思うとき、それは百万年前の祖先から受け継いだ狩猟家の遺伝子に導かれているのである。(c)AFP