【7月9日 AFP】ウクライナの首都キエフ(Kiev)に近いハイドロパーク・ビーチ(Hydropark beach)には、毎年夏になると「短い夏のひととき」を求めてキエフ市民が押し寄せる。だが、川はひどく汚れている。砂地の河岸に優雅に寝そべるある年配の女性は、「河岸で太陽の光を浴びるのは健康にいいのよ」と言った後、顔をしかめて付け加えた。「水着に糞尿の臭いがつくときもあるけど」 キエフにはドニエプル(Dnieper)川沿いに遊泳可能な場所が430か所あり、60か所の砂地の河岸のうち26か所が遊泳に適すると公式に認められている。首都に「泳げるビーチ」があること自体、欧州ではまれなことだ。 だが、「ここで泳ぐことは必ずしも安全ではない」と、緑の党党首で元環境相のSergei Kurykinさんは話す。キエフの近くで泳ぐことを控えて10年になるというSergeiさんによると、ドニエプル川には1日に200万立方メートルの排水が流れ込むが、下水処理システムが旧式のため、病原菌が大量に繁殖している可能性があるという。また、河岸に投げ捨てられるゴミにネズミなどの害獣が集まっている。 一方、市の衛生当局は定期清掃と害獣駆除を行っているため、遊泳が許可された河岸の砂はドニエプル川の水質同様、衛生上まったく問題ないとしている。 キエフには、安全性が危惧される遊泳スポットがもう1か所ある。「キエフ海」と呼ばれる貯水池だ。1986年にキエフの北150キロのチェルノブイリ(Chernobyl)で発生した原発事故で数トンの放射性物質がキエフ海に降り注いだ。だが、学者や政府当局は、「泳いでも大丈夫」と太鼓判を押す。 前年5-9月にキエフ市の遊泳場を訪れた人は2300万人にのぼる。「騒ぎ過ぎだよ。本当に危ないのなら、政府はすでに遊泳を禁止しているはずさ」と、遊泳場に店を出すある男性はつぶやいた。(c)AFP/Anya Tsukanova