NASA立てこもり犯は、犠牲者と顔見知り - 米国

04月21日 14:03


写真は、ジョンソン宇宙センターのゲートの一つ。2003年2月1日、大気圏突入時に爆発・分解したスペースシャトル・コロンビア(%%Columbia%%)号の乗組員犠牲者のための祭壇が見える(2003年2月3日撮影)。(c)AFP/Roberto SCHMIDT


【ヒューストン/米国 21日 AFP】テキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)の米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センター(Johnson Space Center)で20日、男が人質2人をとって立てこもった事件は、犯人がNASAの契約会社の社員で、人質2人は職場の知り合いだったことが関係者の話で明らかになった。犯人は人質の1人を射殺した後自殺し、もう1人の人質は無事保護された。 ■犯人は、セキュリティ・ゲートを拳銃を所持したまま通過  犯人と見られる男性は、NASAの契約会社Jacobs Engineeringの社員としてNASAに12年勤務していたビル・フィリップス(Bill Phillips)容疑者。  警察とNASAの関係者によると、同容疑者は広大なジョンソン宇宙センターの出入り口に設けられたセキュリティ・ゲートを拳銃を所持したまま通過することに成功。通信・研究施設のある44号棟に人質とともに立てこもり、人質の1人でNASA職員、デビッド・ビバリー(David Beverly)さんの胸を撃ち殺害した後、自分の頭を撃ち抜き自殺した。  もう1人の人質で契約会社の女性社員フラン・クレンショー(Fran Crenshaw)さんは、粘着テープで椅子に縛られた状態で、事件発生の数時間後に無事保護され、病院で治療を受け退院した。  立てこもりの間、犯人の説得を試みていた警察は、2回目の銃声が聞こえたため室内に突入、死亡した男性2人と手足を縛られた女性を発見した。 ■NASAは「基準に合致した安全対策はとっていた」と明言  ジョンソン宇宙センターのMichael Coates所長は、2001年9月11日の同時多発テロを機に強化されたNASAの警備体制は、16日のバージニア工科大(Virginia Tech University)の銃乱射事件きっかけに見直したばかりで、これ以上の強化は不必要との結論に達していたことも明らかにした。「このような事件が共に働くわれら『家族』に起ころうとは信じられなかった」と同所長。  NASAのEileen Hawley広報官は、「爆破物の検査のため無作為に自動車を止めて調べるなど、基準に合致した安全対策は採られており、警備担当部署とNASA上層部はこの事件を十分に調査した上で、とるべき別の安全対策があったかどうかを検証する」と語った。  関係者によると事件は、現在進めるプロジェクトに影響はないという。スペースシャトルの管制業務を行うジョンソン宇宙センターに入るには訪問者も従業員も身分を証明するバッジを付ける必要がある。 ■犯人と人質は知人関係、動機は個人的な人間関係からか  ジョンソン宇宙センターのMichael Coates所長は、3人は顔見知りでいずれも50代前半の電気技師、事件直前には昼食を一緒に取っていた可能性さえあると会見で述べた。容疑者は1人暮らし、独身で子供はいなかった。「ごく最近までフィリップス容疑者は、有能な従業員だった」と語る。  捜査当局は事件の背景となる動機の解明には至っていない。「フィリップス容疑者とビバリーさんの間で争いがあったことは確か」とHoward Hurttヒューストン警察署長。  写真は、ジョンソン宇宙センターのゲートの一つ。2003年2月1日、大気圏突入時に爆発・分解したスペースシャトル・コロンビア(Columbia)号の乗組員犠牲者のための祭壇が見える(2003年2月3日撮影)。(c)AFP/Roberto SCHMIDT