【シンガポール/シンガポール 31日 AFP】3月23日から10日間にわたり、シンガポール・ファッション・フェスティバル(Singapore Fashion Festival)が開催された。アジア有数のファッションの祭典として注目されている同イベントには地元シンガポールに加え、中国やインドからのデザイナーも加わりショーを行った。 ■国が持つイメージに悩まされるデザイナー達 上海出身のデザイナー、ルー・クン(Lu Kun)はそのうちの1人。自身のブランド「Blessed China」の2007年秋冬コレクションを発表し、観客からの歓声を浴びた。しかしながら、ルーが臨むような国際的評価を得るにはまだ、道のりは遠いようだ。ルーは、地元上海でデザインと仕立てを学んだ。 コピー商品とテキスタイルの輸出で知られる中国。この国で活躍するデザイナーの1人であるルーは、海外のバイヤーが持つ「中国のネガティブなイメージと母国の洗練されたファッションの欠落という2つの壁に突き当たっているという。 「ヴォーグ(Vogue)誌をはじめとして、多くのメディアが私を取り上げてくれています。しかしながら、注文が一向に来ないのです。これではファッションブランドやデザイナーがやっていくのは困難です。」と、ルーは嘆く。 中国ヴォーグ誌によると、ベルリンやロンドンで作品を披露しているルーについて、イタリアのジャーナリスト達は彼のデザインをドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)やランバン(Lanvin)など自国デザイナーのコレクションと比較し、評価をしている。しかしながらそんな褒め言葉が、売上に直接繋がることはないのが実情。ルーは現在、プレタポルテとオーダーメイドの両方を手掛けている。 ■才能を生かす環境の欠落 「中国政府はデザイナー達に、とても安い値段でアトリエを貸してくれます。でもそれだけでは足りないのです。場所があっても顧客がいなければ意味がありません。」と語ったルーは、さらに多くのバイヤーが彼の服を購入することをためらっていたと付け加えた。 ビジネスマネージャーを務めるRamon Gil氏は、ファッション業界では今もなお、才能よりもコネクションが大切であるのが実情であると言う。「才能がない人ほど、コネクションを持っています。しかしながら、そんなデザイナー達の作る作品は国際的基準にも達していないものがほとんどです。」と述べた。 ■中国 vs 西欧志向? シンガポールで行われたファッション・フェスティバルでは、黒いミリタリージャケットに黒のタイツに身を包み、現代的なフェミニンさを得意げに醸し出したモデル達がランウェイを飾った。 海外の多くのバイヤーが中国に求める、刺繍を施したボタンやハイネックの中国服など典型的なデザインは、今回のコレクションには見あたらなかった。 「人々から時々、非難を浴びます。『中国人なんだから中国らしいスタイルの服を作ったらいいのに』と。でもルー・クンは中国風のスタイルも西欧のスタイルもどちらも手掛けることを人々に知ってもらいたいのです。」と、Tシャツにジャケット、ジーンズといった出で立ちのルーは語る。 一方、同じく中国出身のデザイナー、フランキー・ジィ(Frankie Xie)が手掛けるジェフェン(Jefen)は国際的舞台でも注目され、成功を収めている。昨年9月に行われた、パリコレクションでも新作を発表した。 ジェフェンは今年2月にも、パリで英国紳士をテーマにした新作を発表し、西欧のバイヤーから多くの注文を受けた。中国のデザイナーがパリでこれほどまでに成功を収めるのは稀だと言えるだろう。 「皆、中国は『大量生産だけで、デザインはしない』と思っています。」と、ジィは語る。現在ジィは46歳。故郷中国には、自身のブランドを扱う約20店舗を持つ。また同氏に続く新しい中国人デザイナーは、Ma Ke。同じくパリで自身のコレクションを発表した。 ■有望な若手デザイナーの宝庫 中国は若く有望なデザイナーが多くいる、と語るのはロンドンを拠点にフットウェアを手掛けるジミー・チュウ(Jimmy Choo)。 チュウは、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの教授のもとを度々訪れている。同校には、国際的な活躍を夢見る中国からの若手デザイナーが多く通っている。 中国のデザイナーは西欧のパターンやデザインを真似ているという意見について、チュウは「現在では、中国のデザイナーは西欧の真似ではなく、質の高い学校で学び、自分たちのデザインを提案していこうとしています。」と語る。 ■必要なのは創造性と意識の向上 偽造品の生産で名高い中国だが、デザイナー達はその大量生産方式は移行しつつあると主張する。 ニューヨークを拠点に活動を行う香港出身のデザイナー、ヴィヴィアン・タム(Vivienne Tam)は今回のイベントで新作を発表。 同氏によると、中国ではファッションへの意識が高まっているものの、まだテイストが 未熟だという。「偽造で有名だった中国は今や、そのクリエイティビティで注目されています。技術だけではなく、創造性で勝負していくなど、まだ改善する余地は沢山あると思いますが」と述べた。 それでは創造性に長けるルーは、なぜ地元中国では評価を得られないのか。ルーのマネージャーによると、「中国の人々はまだオートクチュールというものの価値を知らない」ことが原因だという。 「デザインについて理解がなければ、どんな色を使っても一緒ですね。だから、中国人々は海外のブランド品ばかり買いはじめたのではないでしょうか。ブランドだったら良いと信じているみたいです」とGil氏は述べる。「中国のバイヤーの間で、ファッションビジネスの専門家が不足している事も一つの理由でしょう。今、国内状況を見ると、他国と同等と言えるような、ファッションについてある程度の知識を持つことが必要になってきたと言えると思います。」と同氏は付け加えた。 ルーは上海に住む人々のファッションに対する意識は、パリやミラノと並ぶほどだが、その他の地域ではまだ時間がかかりそうだという。「もう少し辛抱強く待たないといけませんね」と同氏は述べた。 写真は、3月26日にシンガポールで行われたインタビューに応じるデザイナーのルー・クン氏。(c)AFP PHOTO/ROSLAN RAHMAN