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CAR 2021.5.2 

【試乗記】ローマは、現行モデルのなかで最もエレガントなフェラーリだ!!

写真=小林俊樹

2021年版ENGINE輸入車大試乗会。注目のフェラーリのニューモデル、ローマに島崎七生人、佐藤久実、渡辺敏史、今尾直樹、渡辺慎太郎の5人のモータージャーナリストが試乗した。

現代版「甘い生活」の世界

1960年代の映画「甘い生活」の世界を現代に甦らせた飛び切りエレガントなフェラーリの最新GTクーペは、2019年11月に車名どおりローマでデビュー。そして昨年、日本上陸を果たした。フロント・ミドに搭載される赤く結晶塗装されたエア・インテークを持つ3.9リッターV8ツインターボ・ユニットは、620ps/760Nmのパワー&トルクを発生。デュアルクラッチ式8段自動MTを介して後輪を駆動する。エレガントなボディのサイズは、全長、全幅、全高が4656mm、1974mm、1301mm。ホイールベースは2670mmで、車重は1630kg。車両本体価格が2682万円のウルトラ美しいフェラーリに試乗した5人の意見やいかに。

写真=柏田芳敬

「2682万円が当たる宝くじが買いたい」島崎七生人

「なんとステキなクルマなのだろう……」が、ローマで走り始めて車内で呟いた僕の第一声。別に片岡義男さんの短編小説に出てくる登場人物の台詞ではないのだから“なのだろう”などと言い回す必要はなかった。が、遡れば往年の250GT 2+2など、FRフェラーリの実は密かなファンとして、予期せずローマの試乗が叶ったことに、冷静を装いつつ気持ちを小躍りさせていた。印象は想像以上だった。何としても乗り味が上品である上、決して太すぎないグリップのステアリングが繊細な感触で情報を伝えてくれる様は「ああフェラーリだ、イタリア車だ」と思った。エンジンはフルに堪能する時間も場所も気持ちの余裕もなかったが、3855ccのV8ターボはジェントルで無闇に存在感を主張しては来ず、高速巡航中、インナー・ミラーで可動式リア・スポイラーの“ロゴ”が見えていても、まるで快適なサルーンのようなドライバビリティ。身体に馴染むシート、プレーンなスタイリング。初めて、2682万円が当たる宝くじを買いたいと思った。

写真=柏田芳敬
写真=柏田芳敬
写真=柏田芳敬

「スタイリングに目が釘付けになる」佐藤久実

こんなにエレガントなフェラーリ、見たことない。いつもなら、カッコ良さに敬意を表しつつもいそいそとドライバーズ・シートに乗り込み、主な興味はパフォーマンスに向けられていた。が、「ローマ」はスタイリングに目が釘付けになった。ボリュームのあるフェンダーは逞しい四肢にも見えるが、グラマラスなボディ・ラインも想起させる。そしてインテリアもオール・デジタルで、エンジン・スタート/ストップはステアリングのパネルをタッチするなど斬新! さらに。走り出すと、これまた味わったことのないような、ストローク感のある優雅な足さばき。SPORTモードでさえも同様だが、高速道路では敢えてコンフォートモードを味わいたいと思わせ、闇雲にアドレナリン放出を促進しない。あ、でもご心配なく。アクセル踏めばちゃんと咆えるし、ハンドリングも抜群ですから。今までのフェラーリは、「もっとスピードを出したい。サーキットを走りたい」と思ったけれど、ローマは、「もっと長く乗っていたい。遠くに行きたい」と思わせるグランドツーリング・カー。

写真=茂呂幸正
写真=柏田芳敬

「自制心を御せる大人の贅沢品」渡辺敏史

イタリア映画の巨匠、フェリーニの描いた世界観に敬意を表しつつフェラーリが唱える「新・甘い生活」。もう爛れに爛れた享楽主義を想像してしまうが、実際、ローマに連れ添うのはそんじょそこらの優男では荷が重そうだ。その理由は美しいという言葉さえ陳腐化させてしまうほどの息を呑むスタイリング。ここ10年ばかしフェラーリの社内デザイン部門が生み出したモデルの中ではダントツに優雅で、センス皆無の拙方からみれば近寄りがたくさえある。現行モデルでは最も着こなしの難易度が高いフェラーリではないだろうか。


一方でローマは、普通に乗る限りは最もイージーに扱えるフェラーリでもある。低中速域でのパワートレインのマナーの良さや静粛性、乗り心地や実用性といった項目の充足感は恐らく想定していただろう、ポルシェ911の水準にある。が、踏めばきっちり牙をむく速さと鋭さはそれらとは一線を画する刺激に満ちている。酸いも甘いもアクセルで自在、それは自制心で右足を御せる大人に託されるべき贅沢だろう。

写真=茂呂幸正
写真=柏田芳敬

「一番イイもの、すなわちそれがフェラーリ」今尾直樹

乗り込んだのはいいけれど、エンジンのスタート方法もワイパーの動かし方もわからない。すばらしいです。だれも見たことのないもの、新しいものを産み出そうとし、実際に生み出しているのだから。しかも、これか、あれか、と触っているうちに、ステアリングホイールの6時の位置のスポークの、小さな液晶みたいなところを押せばいいことがわかった。わかるようになっているところが、いっそうすばらしい。3.9リッター V8直噴ターボは、分厚いトルクと低音の魅力でもってドライバーを魅了する。乗り心地はサイコー。ドライブしていると軽い躁状態になってくる。ふふふふ。クルマから湧き出すエネルギーが乗員に影響するのだ、たぶん。マネッティーノをスポーツに切り替えると、V8がボリュウムをあげて、楽器のようなサウンドを聴かせてくれる。ぶおんッ、ぶおおおおおおんッ! スゴい。シビれる。想像してみてください。あなたが好きなもののなかで、いちばんいいと思うものを。フェラーリはそれなのだ。と新しいローマに乗ってもそう思った。

写真=神村聖

「乗るとフェラーリ以外の何者でもない」渡辺慎太郎

アメリカのカリフォルニアからイタリアのポルトフィーノを経由してローマに辿り着いた。フェラーリのFRグラントゥーリズモの車名の履歴はまるで旅の軌跡のようでもある。試乗の時に某インポーターの広報マンが同乗してくれたのだけれど、走り出して間もなく彼が「乗ると意外と普通ですね、インテリアはなんかすごいけど」と漏らした。「フェラーリ」というブランドの神話性とアノ外観から、「期待」と書かれた風船が破裂しそうになっていたのだろう。GTの要素を含んだスポーツカーだから、日常領域での快適性はすこぶる高い。それでもドライバーには、胸のすくようなパワー・デリバリーや時に刃物のように鋭いターンインを見せるハンドリングなど、フェラーリ以外の何物でもない素性がヒシヒシと伝わってくる。で、気が付いた。ローマとはつまりこういうクルマなのだと。ドライバーは運転で、隣人はデザインと心地よい助手席でこのクルマを楽しむ。中身はポルトフィーノとほぼ一緒なんてことはどーでもいいくらい恍惚的だった。

(ENGINE 2021年4月号)

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