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CAR 2021.3.5 

【ジャガーIペイスHSE 長期リポート #05】2人の先輩を訪ねる

1年以上乗っているIペイス乗りに話を聞きました。正規輸入元のスペシャリストと関西在住のオーナー、2人の先輩のIペイスの乗り方とは?

ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマーケティング・広報部所属の藤井崇史さん。肩書きは“プロダクト・スペシャリスト”。普段乗るテスト・カーは非公開ということで、写真は広報車両のIペイスとともに。

89号車、ジャガーIペイスの今月の走行距離は2853kmと大幅に伸びた。そのわけは、巻頭特集の取材で東京から明石まで2泊3日・1200kmの旅をしたからである。

今回の旅は事前に計画を立てたので電欠の心配はしていなかったが、2つ想定外のことがあった。1つはホテル設置の普通充電器の問題。もう1つは高速道路上の急速充電器のトラブルだ。無駄な時間をなくすべく24時間対応の普通充電器のあるホテルを予約したのだが、2日目の宿の充電器はなんと2時間で自動終了するタイマー付きだった。観光地が近く長時間の占有を避けたかったのかもしれないが……。ほかにEVの宿泊客はいなかったので、結局何度も駐車場に出向き接続をし直した。

24h対応の普通充電器があるから宿を選んだのだが……。

さらに帰路の岡崎SAではなぜか急速充電器が13分で勝手に終了。結果、急速充電は3日間で9回と、6回くらいかという予想よりずっと多くなった。こうした不測の事態への対応や急速充電器渋滞(運良く1度もなし)を考えると、まだまだEVの長旅は臨機応変な動きが必要だ。

ただ、身体の疲れは思ったよりずっと少なく、一定時間ごとに必ず休むメリットは無視できない。EVならではの静粛性や振動のなさ、さらに大ぶりで長時間走り続けても身体のどこにも痛みが出ないIペイスのシートは疲労が少ない理由の1つだと思う。でも、EVの航続距離自体が疲労を抑える大きな要因になっていると感じたのも、正直なところだ。

高速道路上の急速充電器は極力1時間あたり50kW以上の高出力タイプを選んだ。日産リーフの上位モデルは90kW充電器に対応し、テスラやポルシェは独自のチャージ・システムでさらに高出力充電器を用意している。Iペイスも欧州では100kWに対応しているが、日本では残念だがまだ50kWまでしか受けられない。CHAdeMOの30分縛りもあり、旅行中の1回の最大充電量は25.2kWと、50kW急速充電器で30分に充電できる量の上限よりちょっと上だった。89 号車の平均電費は約4.4km/kWhなので、電池を使い切ると30分の再充電で最長で110kmしか走れない。夜間充電が中途半端だったので、ジャガーも専用充電器を作らないのか、高出力充電器への対応はどうなのか、余計に気になった。

専用品は作らない

そんな疑問を解消するべく、ディフェンダーの試乗会でお会いしたジャガー・ランドローバー(JLR)ジャパンの藤井崇史さんを訪ねた。日本市場導入前から約2年間、1万5000km以上を走破したIペイス乗りの先輩だ。主な仕事はほぼ全メーカーの急速充電器のテストで、関東圏を走り回り結果を本国へフィードバック。89号車も行った日産ディーラーの急速充電器への対応はその成果の1つだ。そんな彼が最優先でテストするのは、出先での充電の可能性が高い、高速道路上の公共の急速充電器だそうだ。

「導入段階で一番メジャーだった急速充電器が50kWタイプだったので、まずそこをターゲットにしました。CHAdeMOのバージョンは50kW上限の1.1です。より高い出力の充電器への対応は、市場の声や状況を見ながら検討していきたい」

ジャガーはテスラやポルシェのように自社ブランドの専用充電器を用意せず、あくまでその市場で普及している汎用品を使うという方針だ。

「ジャガーとしては、楽しく運転し、減ったら速く充電すればそれでいい、という考えではありません。専用の充電器をアピールしても、速く充電できる設備がどれだけ用意できるかという課題もあります。数の多い東名阪エリアはよくても北海道は? 東北は? となるとその地域の人はどうにもなりません」

全国にディーラーがあるジャガーは、自分たちだけがよければいい、という考えではない。単純に専用設備を増やすとしても、そのコストや運営費は車両代に付加するのか。それとも公共設備の普及を一緒に考えて待つのか。考え方はメーカーによって様々だ。

ジャガーは北は北海道、南は鹿児島まで44カ所あるディーラーのうち、22カ所に50kW急速充電器を配備。自宅用などの普通充電器も同じく専用デザインのものは作らず、汎用の3kWと6kWタイプを用意する。藤井さんは「専用品はサイズが大きすぎ付けられない、といった声も聞いている」という。確かに日本の駐車場事情では、いくら見た目が良くても現実的でない場合も多いのだろう。

JLRジャパンとしてCHAdeMO協議会への参加はもちろん、藤井さんは日本の大手充電器ネットワークのeモビリティ・パワーとも密に情報交換を行っている。今後はeモビリティ・パワーのコードが路上に触れない、女性でも楽に扱える使い勝手のいい吊り下げ式で、しかも屋根まで付いているスタイリッシュな急速充電器(2020年度グッドデザイン賞も受賞!)が配備されていくという。

ラリー・カー並みの楽しさ

もう1人、Iペイス乗りの声をご紹介しよう。今月号に登場している緒方博達(ひろかつ)さんも、すでにIペイスに乗り始めて丸1年の先輩だ。緒方さんは普段急速充電器を渡り歩いている藤井さんとは正反対で、自宅の普通充電器のみを使用し、なんと購入から1度も急速充電器を使っていない(!)。

主な用途は職場への通勤と趣味のゴルフ・エクスプレス。購入前は航続距離の不安もあったそうだが、ガソリン・スタンドに行かなくてすむ利便性にすっかりハマり、電費などまったく気にせず週1回くらいの自宅充電で十分に運用できているようだ。現在のガレージは3年前に建てたものだが、当初からEVに乗ることを見越して内部に3kW普通充電器を設置。さらにJLRジャパンのキャンペーンを利用して6kWタイプも屋外に追加し、充電の状況によって2基を使い分けている。

緒方博達さんはガレージ内の3kW充電器のほか6kW充電器も玄関に設置。将来もう1台の愛車セリカが部品の入手が難しく維持が困難になったらEVにコンバートするかも、と笑う。

もう1台の相棒、1993年モンテカルロ・ラリー仕様のトヨタ・セリカと比べ「航続距離はあまり変わらないし、走る楽しさもIペイスはセリカぐらいあります。ワンペダルでの操作感やクイックな挙動も面白い」とすっかりお気に入りのようだった。電子疑似音のアクティブ・サウンドも「クルマを運転している!」という実感が湧くので積極的に使っているという。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人(P162)/阿部昌也(P163)

■89号車
ジャガーIペイスHSE
JAGUAR I-PACE HSE
新車価格 1183万円(OP込1365万9000円)
導入時期 2020年6月
走行距離 2万558km(スタート時1万809km)

(ENGINE2021年2・3月合併号)

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