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CAR 2021.1.23 

【試乗記】日本上陸ホヤホヤの新型ロールス・ロイス・ゴーストに日光で乗る  これぞ究極のドライバーズ・カーだ!

先代から受け継いだのはスピリット・オブ・エクスタシーとアンブレラだけ、と謳う新型ゴーストの試乗会が開かれた。史上最も技術的に進歩したという走りはどうだったか?

新型ゴーストの試乗会は、2020年の初夏にオープンしたラグジュアリー・リゾート・ホテル、ザ・リッツ・カールトン日光を拠点に行われた。ロールス・ロイスが日本国内でこれだけ大規模な試乗会を開くのは、私の記憶の限りではこれが初めてのことだ。本来なら国際試乗会で大々的にお披露目するはずだったのが、コロナ禍でままならず、主要国で国別の試乗会を開くという方法にシフトしたものらしい。

とにかく、ロールス・ロイスがこの新型にかける意気込みは相当なもので、それもそのはず11年前にデビューした初代ゴースト(かつてのシルバーゴーストから名前を受け継いだこれは、新しい本拠地の名を付けてグッドウッド・ゴーストと呼ばれることもある)は、116年にわたるロールスの歴史の中で最も売れたモデルとなったという。その数は公表されていないが、近年は世界で5000台ほどを販売するうちの半分近くをゴーストが占めていたというから、ざっと1万台以上ということになるか。その屋台骨とも言うべきモデルの全面改変とくれば力が入らないわけがない。

ロールス・ロイス4ドア・モデルに共通の観音開きのドアを持つ。前後ともにモーターによる開閉アシストつきだ。
先代からふたつだけ受け継いだという、フロントのマスコットとドアに収納される傘。

実際、初代から受け継いだコンポーネントはフロントに付くマスコットのスピリット・オブ・エクスタシーとドアに収納される傘だけ、と謳うだけあって、新型ゴーストは基本プラットフォームからして、まったく別物に生まれ変わっている。すなわち、初代がBMWの7シリーズを元にしてつくられていたのに対して、新型はファントムやカリナンと共通する自社開発のアルミ・スペースフレーム・アーキテクチャーを採用している。これにより、「クルマの大量生産を支えているプラットフォームの制約を受けることなく、正真正銘、極めて高級な製品の開発が可能になりました」(プレスリリース)とまで言うのだから、出来映えに相当な自信があるのだろう。

エンジンはBMW製V12を独自にチューニングしたもの。

もうひとつ、今回の新型で大きく変わったのはクルマの性格づけで、ショーファー・ドリブンのみならず、ドライバーズ・カーとしてオーナー自らがハンドルを握ることをより強く想定したものになっている。それは、初代ゴーストのオーナー・サーベイの結果、リア・シートだけでなく自ら運転席に座ってドライビングを楽しんでいる人たちが多いと分かったことを受けたもので、ロールスのサルーンとしては初めて四輪駆動や四輪操舵などを導入したのも、それに対応した措置と言えるのだろう。

少し控えめになったというフロントのパルテノン・グリルの内側には照明が灯る。
試乗車にはリア・シート用のランチ・テーブルとタッチ・スクリーンが装備されていた。

そしてロールスは、そうした新しいオーナーたちが求めるテイストとして、「ポスト・オピュレンス」(脱・贅沢)という概念を掲げている。リダクション(削減)とサブスタンス(実質)を特徴とする、シンプルでエレガントなスタイルこそが、新型ゴーストの目指すものだというのだ。具体的には、手作業で溶接することにより、まるで一枚の帆布のような滑らかなフォルムを描くオール・アルミ製のボディや、複雑なステッチをあえて使わず、驚くほど長いステッチを完全にまっすぐに縫い上げたインテリアがそれに当たるという。すなわち、ひけらかすようなものではなく、それより遥かに本質的な本当の贅沢を追求しているのだ。

こんなエピソードもある。車内の静粛性が高級車にとって重要なのは言うまでもないが、徹底的な騒音処理の結果、完璧な無音はかえって落ち着かないとわかり、わずかに「ささやき」が聞こえるようなサウンド・チューニングを施したというのだ。

「脱・贅沢」のコンセプトの下、ミニマリズムの原則に従ってデザインされたインテリア。装飾に頼らず、素材自体の魅力で顧客の審美眼にかなうことを目指したという。

いつまでも運転席にいたい

試乗はホテルから中禅寺湖畔を抜け、金精峠を越えて丸沼高原スキー場まで。まるでスポーツカーの試乗会のために用意されたようなコースだった。これもロールスの自信の表れか。そして結果として私は見事に、この新型ゴーストの走りに打ちのめされることになったのだ。

そもそも、今どき珍しいくらい径が大きく、リムが細いハンドルを握ってそろそろと走り出し、ホテルのロータリーから出る前に、これは飛び抜けた柔らかさと滑らかさを持ちながら、その一方で路面のインフォメーションを正確に手のひらに伝える、ドライバーズ・カーならではのステアリング・フィールを持ったクルマだと驚愕させられた。と同時に、これから走る山道のことを思って、いっぺんに楽しい気分になっていた。

天井には無数の星が輝く。

マジック・カーペット・ライドと賞される乗り心地がいいのはもちろんだが、しかし、エアサスを使った脚はただただ柔らかいわけではない。どんな走り方をしても常にフラット感があり、路面の小さな凹凸を消してしまうのではなく、ちゃんと凹凸があることを伝えながらトントンと穏やかにいなして行く。大きな外乱に遭遇しても、2.5tのボディがゆさゆさと揺られないのは、可変ダンパーに加えて、もうひとつアッパー・ウィッシュボーンにもダンパーをつけたプラナー・サスペンション・システムの恩恵だろう。そしてアクセレレーターを踏めば踏んだだけ加速するし、ステアリングを切れば切っただけ曲がり、ブレーキを踏んだら踏んだだけ減速する。そういう当り前のことを、驚くほどの節度感と柔らかさを持って顔色ひとつ変えることなくクルマがこなしていくのが驚異的なのだ。

やがて峠道に入ると、ギアはDレンジだけでパドルもなく、回転計のかわりにパワー・リザーブ・メーターしか持たない全長5.5m、全幅2mのゴーストが、ひと回りもふた回りも小さなスポーツカーのような走りを見せ始めた。決して軽快というのではない、あくまで安定感を保ちながら、しかしドライバーの思い通りにスルスルと曲がっていく。四輪駆動と四輪操舵の制御が相当に良くできているのだと思う。

実は帰り道はリア・シートに乗ったのだが、私は運転席の方がずっと楽しかった。いつまでも運転していたくなるクルマ。これをドライバーズ・カーと呼ばずして何と呼ぶか。世界最高級の究極のドライバーズ・カーが誕生した。

文=村上 政(ENGINE編集部)  写真=ロールス・ロイス・モーター・カーズ

■ロールス・ロイス・ゴースト
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 5545×2000×1570mm
ホイールベース 3295mm
車両重量(試乗車) 2560kg(前軸1350kg、後軸1210kg)
エンジン形式 直噴V型12気筒DOHCツインターボ
排気量 6748cc
最高出力 571ps/5000rpm
最大トルク 850Nm/1600-4250rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/エアスプリング
サスペンション(後) マルチリンク/エアスプリング
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(試乗車) (前)255/40R21、(後)285/35R21
トランク容量 570リッター
車両本体価格(税込み) 3590万円~

(ENGINE2021年2・3月合併号)

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