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CULTURE 2021.1.11 

監督は小津安二郎を敬愛 デンマーク映画『わたしの叔父さん』の静かな魅力

『バベットの晩餐会』や『ダンサー・イン・ザ・ダーク』といった名作を生んだデンマーク映画。2019年の東京国際映画祭でグランプリを獲得し、本国でも異例のヒットを記録したのが『わたしの叔父さん』だ。

酪農を営む叔父さんと姪の一日を、ほとんど台詞なしで見せる冒頭約10分。27歳の姪が、身体の不自由な叔父さんのために、自らの私生活を犠牲にしていることが伝わる。そんな彼女に新たな出会いがあり、生活にも変化の兆しが見え始めるのだが……。

監督は、小津安二郎を師匠と仰ぐ40歳のフラレ・ピーダセン。ほとんどの場面でカメラは固定され、主人公が声高に自らの心情を語ることもない。また予定調和的なヒロインの自立の物語でもなく、そこはかとないユーモアを漂わせながら、人生の苦汁を淡々と描き出していく。柔らかな光に照らされたデンマークの農村風景も穏やかな、不思議な魅力を湛えた作品だ。

監督のフラレ・ピーダセンは、デンマーク・ユトランド地方の出身。長編映画2作目となるこの作品で、母国から消えゆく、昔ながらの農家の暮らしを映像に収めたいと考えたという。ちなみにこの映画に登場する農家は、叔父さんを演じているペーダ・ハンセン・テューセンが実際に暮らしている場所だという。ピーダセン監督は、現役の酪農家であるテューセンに話を聞いているうちに、演技未経験の彼を俳優として起用することを思いついたそうだ。ちなみにヒロインを演じたイェデ・スナゴーは、テューセンの本物の姪に当たる。110分。(C)2019 88miles

1月29日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2021年2・3月合併号)

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