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CAR 2020.12.12 

ついに上陸したフェラーリ・ローマに国内初試乗 見た目はエレガント、走りは超スポーティ!

2019年11月、車名どおりローマでデビューしたフェラーリの新GTクーペに、ようやく試乗できる日がやってきた。1960年代の映画「甘い生活」の世界を現代に甦らせたというエレガントなクーペの走りは、果たしてどうだったか。

やはりクルマというのは実際に乗ってみなければ何もわからない。この度ようやく日本に上陸したフェラーリ・ローマに半日だけ試乗する機会を得て、改めてそう痛感させられた。というのも、ローマで発表会に参加して、そのプレゼンテーションから想像していたものとは、まるで違う乗り味のクルマだったからだ。

フェリーニ監督が映画「ドルチェ・ヴィータ」で描いた1960年代ローマの享楽的な世界を現代に甦らせた、飛び切りエレガントなGTクーペ。60年のローマ・オリンピックで使われた施設を、なんと巨大なナイト・クラブに変貌させた特設会場で開かれた発表会で、フェラーリのチーフ・マーケティング&コマーシャル・オフィサーのエンリコ・ガリエラ氏はそう説明し、「これは今までのフェラーリ・オーナーをターゲットにしたフェラリスタのためのクルマではなく、スポーツカーにはまったく興味がなく、クルマにエレガントさを求める新しい顧客層に乗ってもらいたい」と力を込めた。

斬新でエレガントな外観同様、まったく新しいコンセプトのデザインが取り入れられたインテリア。運転席と助手席はそれぞれが独立した繭のような形状になっており、フラウのレザーをふんだんに使ってスポーティかつラグジュアリーな空間が演出される。

実際のところ、驚くほど均整のとれたプロポーションを持ったローマのスタイルの美しさは、ひと目見た誰もの視線を釘付けにしてしまうような魅力的なものだ。よくカーデザインの世界では、Aピラーの角度を延ばした先にフロント・ホイールの中心がくるのがもっとも美しいプロポーションだ、と言われるが、長いV12気筒を搭載するほかのFRフェラーリとは違って、このローマはまさにその通りになっている。それだけに、チーフ・デザイナーのフラヴィオ・マンツォーニ氏の「デザインの出発点はイブニング・ドレスを着たF1マシン」という言葉を聞いても、あくまでエレガントな容姿を喩えたものとして私は受け取っていた。

つまり、走らせてもこれまでのフェラーリとはひと味違うエレガントな乗り味のクルマなのだろうと想像していたのだ。しかし実際には、F1とまでは言わないまでも、驚くほどストレートな、そのままサーキットに持ち込んでもまったく違和感がないようなポテンシャルを持ったスポーツカーだったから、ビックリ!

赤く結晶塗装されたエア・インテークを持つ3.9L V8は、フロント・ミドシップに搭載される。

ヒリヒリするようなスリル

正午すぎに箱根の山の上で、直前まで試乗していたジャーナリストから引き渡されたローマのキイは、黄色い跳ね馬のエンブレムが付いたマッチ箱のような鉄製のケースだった。それをセンターコンソールに穿たれた穴に収めて(身につけているだけでもいいのだが)、ステアリング・ホイール上のタッチ・パッド式になったスタートボタンを押してエンジンを始動する。ひと呼吸おいて、ブオォンという野太い雄叫びを上げてフロントの3・9LV8に火が入った。早朝の住宅街なら近隣の住民が目を覚ましそうな迫力のある音だが、この日は平日だというのに箱根に走りにきているクルマ好きたちの視線を一度に引きつけるだけで済んだ。

目の前に拡がるメーターは中央の大きな回転計も含めてフルデジタル。真上近くの7500回転からがレッドになっているが、回転数など気にする必要がなければ、切り換えて全面をマップにすることだってできる。この16インチ曲面型フリーフォーム高解像度ディスプレイを筆頭に、センターコンソールには縦型の8・4インチ、助手席の前には横に細長い8・8インチ、の3つのスクリーンが装備されており、新時代のフェラーリであることを主張している。

 
ミニマムながら用意されるリア・シートもフラウのレザー製。

運転席と助手席がそれぞれ繭のように独立した形状になっているのも新機軸だ。とても運転に集中できるし、それでいてレザーに包まれたゴージャスな空間にいる感覚もある。

右のパドルを引いて新しいデュアルクラッチ式8段自動マニュアルのギアを1速に入れて走り出す。もちろん、優雅なエクステリア・デザインにマッチするようなスムーズな動き出しを見せたのだが、山道を走り出してすぐに気づいたのは、ステアリングの操作に対するクルマの動きがとてもシャープかつクイックで、思っていたよりずっと本格的なスポーツカーに仕立てられているということだった。アクセレレーターの操作に対するエンジンのレスポンスも、これがターボ・エンジンとは思えないくらいリニアかつシャープに吹け上がる。どうやらポルトフィーノより20ps増強された620psになっているのは伊達じゃなく、優雅な外見とは裏腹に、中身は本気のスポーツカーをつくろうとしているのではないかと思えてきた。実際、ステアリング上の赤いダイヤル・スイッチでドライブ・モードを操作するマネッティーノのポジションは、ポルトフィーノのようにウェット、コンフォート、スポーツの3種類ではなく、それにレースとETCオフを加えた5種類になっているではないか。

20インチのホイールの内部には前390mm、後360mmの巨大なローターを持つブレンボのカーボン・ブレーキを標準装備する。
荷室容量は272L確保されており、後席の背を倒せばさらに345Lまで拡張できる。

そして、撮影の合間に山道を走り回って、これはエレガントなGTクーペどころか、とてつもないポテンシャルを持ったFRスポーツカーだと確信するに至った。コーナーでの鋭いノーズの入り方といい、立ち上がりでスロットルを開けた時のお尻がムズムズするような動きといい、どちらかと言うと安定志向の強いポルトフィーノとはまるで正反対の、ヒリヒリするドライビング・スリルを感じさせるような本格スポーツカーそのものだ。山道を飛ばしている時に、あたりに響き渡る野太いV8サウンドも相当なものだった。

残念ながら、夕方までに返却の約束だったので高速道路で帰路を急ぐ。速度が一定以上になるとリアのスポイラーが上がり、リア・ウインドウを通してFERRARIの文字が逆さに見えるのが微笑ましい。GTカーとしての才能も相当なもので、高速での乗り心地、安定性ともに抜群である。そして、都内に入ると夕方の渋滞の中で思い切り注目されることになった。その視線を浴びながら私は、「これは全方位的才能を併せ持つ、途轍もないフェラーリが登場した!」と密かに興奮していたのだ。

■フェラーリ・ローマ

駆動方式 エンジン・フロント縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4656×1974×1301mm
ホイールベース 2670mm
トレッド(前/後) 1652/1679mm
車両重量 1630kg(前軸810kg:後軸820kg)
エンジン形式 直噴V8DOHCツインターボ
排気量 3855cc
最高出力 620ps/5750-7500rpm
最大トルク 760Nm/3000-5750rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボンセラミックディスク
タイヤ(前) 245/35ZR20、(後) 285/35ZR20
車両本体価格(税込み) 2676万円

文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=柏田芳敬

(ENGINE2021年1月号)

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