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CULTURE 2020.11.14 

来年1月に閉館する原美術館 “現代美術の館”が遺したもの

現代美術の専門館として親しまれ続けた東京・品川の原美術館が閉館し、拠点を群馬に移す。戦前に建てられた私邸を活用した個性豊かな美術館の40余年にわたる功績をたどる。

原美術館の魅力は、理事長である原俊夫氏の祖父が建てたアールデコの邸宅を利用した展示。GHQに接収された後、長く使われていなかった館を美術館に改装した。設計は銀座和光などを手掛けた渡辺仁。1938年竣工。

これまで多くの美術ファンに愛されてきた東京・品川の原美術館が、現在開催中の展覧会が終了する来年の1月で閉館する。建物の老朽化が理由だ。1979年に開館した同館は、理事長である原俊夫氏が、現代美術で国際交流を図るための拠点を目指してスタートした私立の美術館だ。

住宅として使われていた頃の、建物の内部。美術館として使用する際、内装にかなり手を入れたことが分かる。

同館の魅力のひとつは、原氏の目を通した企画、そして何より、同氏の祖父が建てたアールデコの邸宅を利用した展示空間にある。ビル内の味気ないスペースではなく、レトロで人間的な館で観る現代美術は、他所にない不思議な魅力があった。開館10年で、それまで「よく分からないものの代名詞的な存在だった現代美術が支持されるようになり、日本の作家が世界に羽ばたく礎になった」と、内田洋子館長は話す。その功績は大きい。もっとも開館前は知名度が無かったため、キャデラックのレンタカーで著名なアーティストのもとを訪れて信用を勝ち取り、作品を購入したという苦労話も残っている。

作品が点在する中庭も魅力的。

それが1990年代になると、「倉俣史朗の世界展」など、同館の企画した展覧会が海外に巡回するように。原美術館は日本を代表する現代美術の拠点として海外からも認知された存在になる。そして21世紀になると役割が変化し、この空間ならではの企画が多くの人々を楽しませた。同館で篠山紀信がヌードを撮った写真展はその一例である。

奈良美智のインスタレーション「My Drawing Room」2004 年 8 月~制作協力:graf Photo by Keizo Kioku
森村泰昌「輪舞」 1994年 Photo by Keizo Kioku

とはいえ築80年の建物である。定期的に大掛かりな補修を行ってきたが、東日本大震災による建物へのダメージは大きく、将来鑑賞者の安全が十分に確保できない日が来るとの専門家の診断が。そのうえ公共施設に求められるバリアフリー化や美術作品の大型化など、古い邸宅を利用した美術館の限界にも突き当たる。こうした状況を総合的に判断した結果が閉館である。今後は、群馬県・伊香保のハラ ミュージアム アークに活動を集約。「原美術館ARC」と改称し、奈良美智らの建物を使ったインスタレーションの殆ども移設されることとなった。もっとも、「アールデコの建物が今後どうなるかは決まっていない」。それがどんな結末になろうと、原さんのやっていた非常に魅力的な美術館が品川にあったことを、多くの人は忘れないことだろう。

品川での最後の展覧会「光―呼吸 時をすくう5人」の会期は2021年1月11日まで。撮影:城戸保。安全かつ快適に鑑賞できるよう予約制。原美術館の思い出を鑑賞者の記憶にとどめてもらうため、館内は撮影禁止に。
「光―呼吸 時をすくう5人」より。リー・キット Flowers  2018 プロジェクターの光、段ボールにアクリル、エマルジョン塗料、インクジェットインク、鉛筆 ©Lee Kit  Photo:Shigeru Muto
作品の多くが移設されるハラ ミュージアム アーク。別館である同館は、磯崎新の設計で1988年に伊香保に開館。撮影:片貝一郎。

原美術館:東京都品川区北品川 4-7-25 https://www.haramuseum.or.jp (入館には予約が必要)

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー)

(ENGINE2020年12月号)

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