2020.10.14

WATCHES

今、気になる時計はオープン&スケルトン! #01 Luxury Sports 編

時計のデザインで人気の的が内部のメカニズムが見通せる“オープン”スタイル。ダイアルやケースバックを通して見える精巧なムーブメントとスケルトンで露わになった機構には心躍る。見栄え良く気分爽快になる、こんな最新の洒落たデザインを今こそ存分に楽しみたい!


オープンスタイルの腕時計のはしりは、機械式が復活した1990年代のこと。透明なクリスタルを用いたケースバックを通して、内部の機械式ムーブメントが見えるようにしたのが始まりだ。この状態では時計を裏返さないと機械が見えないが、表からも見えるようにしたのが、次に登場するオープンスタイルのダイアル。


ダイアルに窓を設けてムーブメントの一部を露わにしたり、さらに進んで大胆にカットアウトを施したり、サファイアクリスタルで透明化したダイアルなどによってムーブメント全体が見渡せるモデルも続々と登場するようになった。


一方で外から見られる側の機械式ムーブメントでは、装飾仕上げが盛んになり、スケルトン加工にも拍車がかかった。もともと「骨格」を意味するスケルトンは、ムーブメントの部品を支える地板やブリッジなどを削ぎ落して骨格のみを残し、時計機構を露わにするテクニックのこと。


HUBLOT(ウブロ)/ビッグ・バン ミレニアルピンク
異なる素材やアイデアの融合を掲げて、常に新しい時計創作に挑んできたウブロ。オープンダイアルの最新作は、ファッションブランドのイタリア・インディペンデントを率いるラポ・エルカンが設立したクルマのテーラーメイドで有名なミラノのガレージ・イタリアとコラボ。ミレニアルピンクのアルマイト加工を施したアルミニウムケースがなんとも斬新だ。自動巻きクロノグラフ。ケース直径42㎜、10気圧防水。世界限定200本。税別222万円。

現在は、職人が部品を削る古典的なスケルトン加工ではなく、設計段階で、表や裏からの透過や美観などを計算に入れて部品をデザインするのが通例だ。同時に繊細な部品の強度 や耐久性を確保するために特殊なハイテク素材を用いることも増えた。


開放的で視覚的な楽しさも抜群なオープンデザインは、メカ好きを喜ばすだけではなく、高級時計を現代のライフスタイルに合った、気取らずカジュアルなものへと変えた点で も重要だ。腕に着けたとたん、心は軽やかになり、外の空気を浴びたくなる、そんな魅力がオープンスタイルの時計にはあるのだ。


スケルトンが作り出したラグジュアリーの新常識

クラシカルなドレスウォッチから始まり、スポーティなデザインウォッチ、さらにはラグジュアリー・スポーツウォッチへと広がったオープンのトレンド。それは、スイスのトップブランドが発表する高級時計でも顕著だが、カットワークのミニマムダイアルや透明なダイアルレスなどでの表現は枚挙にいとまがなく、高級時計のイメージが大きく変わった。


あくまでも特別な高級感を大切にして、スポーティであってもカジュアルウォッチとは完全に別格の存在感を主張するのが従来の高級時計の価値観。しかし、オープンスタイルを取り入れたラグジュアリー・スポーツウォッチのインフォーマルもしくはカジュアルなデザインは親近感を生み、間違いなく新たな価値観を生み出したのだ。


VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン・コンスタンタン)/オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン
新世代「オーヴァーシーズ」に加わった新しいパーペチュアルカレンダーは、オープンダイアルから永久カレンダーとムーンフェイズ表示が備わる超薄型のスケルトンムーブメントが露わに。ブレスレットとともに、容易に付け替え可能なブルーのアリゲーターとラバーストラップも付属し、さまざまな着用スタイルが楽しめる。自動巻き。ピンクゴールド、ケース直径41.5㎜、5気圧防水。時価(現時点で税別1400万円)。


 
RICHARD MILLE(リシャール・ミル)/RM 11-05 オートマティック フライバッククロノグラフ GMT
スケルトン加工が施されたムーブメントや最先端のハイテク素材で唯一無二の時計を創作。フライバッククロノグラフに加え、年次カレンダーとGMT機能が備わるモデルでは、チタンの軽量性とダイヤモンドの硬度を併せ持つ独自のグレーサーメットのベゼルに、カーボンTPTⓇのミドルケースとグレード5チタンのケースバックを組み合わせる。自動巻き。ケース縦50㎜×横42.7㎜、50m防水。世界限定140本。税別2460万円。



AUDEMARS PIGUET(オーデマ ピゲ)/ロイヤル オーク トゥールビヨン エクストラ シン
「ロイヤル オーク」の伝統的なスタイルを守りながら、トゥールビヨンを搭載。スポーツウォッチとトゥールビヨンというかつての常識では相容れなかった要素を両立させ、品格と複雑機構の2つの意味で格別なラグジュアリーを表現。今年の新しい日本限定モデルはケースとブレスレットにホワイトゴールドを採用する贅沢な逸品だ。手巻き。約70時間パワーリザーブ。ケース直径41㎜、5気圧防水。ジャパンブティック限定20本。税別1790万円。※この日本限定モデル以外に、ダイヤルのカラー違いもラインナップしている。


時計ジャーナリスト・菅原 茂はこう見た!

21世紀のハイテクを駆使してラグジュアリー・スポーツウォッチの先端を突き進むのがリシャール・ミルやウブロ。対して、オープンダイアルで複雑機構を見せつつ老舗の伝統と革新との調和を図るヴァシュロン・コンスタンタンやオーデマ ピゲ。手法は異なれど、高度な技術を満載した複雑ムーブメントを楽しめるところがいい。


ENGINE編集部・前田清輝はこう見た!

ラグジュアリー・スポーツの傑作に永久カレンダーやトゥールビヨンを搭載するという贅沢の極み! そして、卓越した技術や新素材で革新的な時計作りを展開するリシャール・ミル。いずれの時計もその魅力はやはり複雑な機構をスケルトンでこそ満喫できると言っても過言ではないだろう。この時計に似合うオープンカーはやはりスーパー・スポーツしかない!?


文=菅原 茂(時計ジャーナリスト)/前田清輝(ENGINE編集部シニア・エディター)
(ENGINE2020年11月号)

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