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CAR 2020.10.24 

話題のSUV、新型ディフェンダーに試乗 オフロード・コースこそ主戦場だ

ランドローバーの象徴的なモデルであり、さかのぼれば基本構造は1948年のシリーズ1から何も変わっていなかったディフェンダーが、まったく新しく生まれ変わった。

英国のアイコンともいえる、長年変わらぬスピリットで造り続けられてきたクルマも時代にはあらがえない。ミニがいつしかミニマムでなくなり、モーガンの中身が木からアルミになり、そしてディフェンダーもまた、まったく別物に進化した。

その試乗会が開かれたのは新潟・妙高のホテル。新幹線で新潟入りし、駅からホテルへは一般道を。その後オフロード・コースを試すという日程だ。会場には先代ディフェンダーも置いてあり、細身で無骨で余計なものが何もないその姿は、ランドローバー・シリーズIから受け継いだ唯一無二のものだと改めて思った。かたや新型はシルエットやデザインの一部こそ受け継いだが、はるかにマッシブでずっと洗練されている。

試乗車はロング・ボディの110と最高出力300psを発揮する2Lガソリンと8段ATの組み合わせ。5人乗りが標準だが、オプションで7人乗りも選択できる。残念なのは前列中央に小さなシートの付く6人乗り仕様が、日本では座席サイズが足らず認可されないこと。ショート・ボディの90は遅れてやって来るが、ディーゼルなどほかのパワーユニットの導入は未定だ。

乗り込んで室内を見渡せば、あえて道具感を演出したのだろう。安価な樹脂素材やトルクスねじがむき出しになっている。とはいえ直線基調で無駄な装飾がないから、むしろすっきりしていて気持ちがいい。

試乗車はオプションのエクスプローラー・パックを装着。“探検家”という意味の名の通りの装備で、左Aピラーに沿ったシュノーケルやボディ右のギア・キャリアなどがセットになっている。

走り出してビックリしたのは恐ろしく静かで快適なこと。ルーフにキャリア、サイドにステップ、Cピラーにはボックス・キャリアが張り出し、シュノーケルも付いている。それなのに風切り音が聞こえてこない。ごっついパターンのオールテレイン・タイヤを履いているが、ロード・ノイズも伝わってこない。ホイールは巨大な20インチなのに、路面の当たりは柔らかで、脚もしなやかに動いている。ビュービューという風の音と、ブルブルというエンジンの振動と音ともに走り、ステアリングを切るたびにぐらぐらと揺れた先代のディフェンダーを思えば、まるで夢のようだ。ステアリング・ギア比がややスローで、速度を上げた時にもう少しびたっと直進する感じが欲しいが、それ以外はもう、レンジローバーとまではいかなくとも、ディスカバリーと遜色ない高級車じゃないかと思った。道具としての機能を追求し、自然とあの形になった、いわば走ってナンボ、汚れてナンボだったディフェンダーが、まるで遠くへ行ってしまったような、そんな少し寂しい気持ちになった。

主戦場はあくまで悪路

けれどオフロードを走る前のプレゼンテーションで映画007のメイキング・フィルムを見て、やっぱりそうかとほくそ笑んだ。とんでもない大ジャンプをしたかと思えば道なき道を縦横無尽に走り、最後はなんと縦に一回転してフロントを凹ませながらドシンと着地。それでもまだ走れる、とにらみを効かす。見た目より何より新型ディフェンダーが守り抜いたのは、どんなに汚れても凹んでも悪路を走り抜くこと。ディフェンダーのスピリットは変わっていないぞ、と言っているみたいだったのだ。

オフロード・コースはドライだったこともあり、インストラクターたちも新型ディフェンダーなら楽勝だと笑顔だった。それでも標準装備のエア・サスペンションは呆れるほど脚が伸びて路面を離さないし、副変速機付きのフルタイム4WDシステムのおかげで、ボタンでロー・レインジを選択すれば壁のような急な坂もするする登る。頭が天井に付くかと思うくらいの勢いで凸凹の悪路を跳ねながら一気に駆けても、車体はミシリともいわない。長年使い続けてきたラダーフレームとリジッドアクスルに決別し、アルミのフルモノコックと4輪独立懸架になったおかげで、車体剛性はライバルの3倍にも達しているという。スローだと思っていたステアリングは、大きな岩や轍を乗り越える度にぐっとキックバックが伝わってくる、こういうステージでこそまさに活きてくる。

新型ディフェンダーは現代のクルマとしての高い完成度を得ながら、見事にその名を継ぐのにふさわしいクルマになっていた。僕は、そのことを、心底うれしく思う。

■ランドローバー・ディフェンダー110 SE

駆動方式..........フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高..........4945×1995×1970㎜
ホイールベース..........3020㎜
車両重量(前後重量配分)..........2320㎏(前軸1220㎏:後軸1100㎏)
エンジン形式..........水冷直列4気筒DOHCターボ
排気量..........1997cc
ボア×ストローク..........83.0×92.2㎜
最高出力..........300ps/5500rpm
最大トルク..........400Nm/2000rpm
トランスミッション..........8段AT
サスペンション(前)..........ダブルウィッシュボーン+エアスプリング
       (後)..........マルチリンク+エアスプリング
ブレーキ(前後)..........ベンチレーテッド・ディスク
タイヤ(前後)..........255/60R20
車両本体価格(OP込・10%税込)..........732万円(956万1920円)

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=阿部昌也

(ENGINE2020年11月号)

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