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CULTURE 2020.10.26 

19歳の天才ヴァイオリニスト、ダニエル・ロザコヴィッチの素顔

クラシック界で今、最も注目される若手の一人が、スウェーデン出身のヴァイオリニスト、ダニエル・ロザコヴィッチ。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を録音した新時代の名手に話を聞いた。

ヴァイオリンを習い始めて2年後、9歳でモスクワ・ヴィルトゥオーゾ室内管弦楽団との共演でデビューしたダニエル・ロザコヴィッチ。以降、ソリストとして世界中の名門オーケストラと演奏している。新たに録音したベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、雄大な曲想、美しく豊かな旋律、平穏で優しさに満ちた雰囲気が全編に宿る。ロザコヴィッチはそれらを繊細かつ流麗な弦の音色、深い解釈で表現、聴き手の心奥へと届ける。ⓒJohanSandberg

クラシック界には実力派の演奏家や名手は数多く存在するが、「天才」と称される人は何年にひとりしか現れない。そんななか、いま世界各地の指揮者から「真の天才」と絶賛され、共演のオファーが後を絶たないのが、2001年スウェーデン生まれのヴァイオリニスト、ダニエル・ロザコヴィッチである。

彼は7歳になる少し前に自分の意志でヴァイオリンを始めた。家族に音楽家はひとりもおらず、ロザコヴィッチは母親の希望で5歳からチェスを習い、ストックホルムの大会で第2位を獲得。関係者からは「未来の名人出現」と称された。当時は母親がロシアのテニス選手マラト・サフィンの大ファンだったためテニスも習い、年長の子に勝つほどの腕前だった。

「そのころ、ぼくは学校でヴァイオリンに出合い、一瞬にしてその音色に魅せられてしまったのです。絶対にヴァイオリニストになると、7歳前に自分の考えで将来を決めました。両親には不安定な仕事で、何の保証もないからと猛反対されましたが、意志を貫きました。以後、迷いはいっさいありません」 

彼はとてもエキゾチックな顔立ちをしている。家系にはいろんな民族が混じっていて、彼自身は7つの民族の血を受け継いでいるそうだ。

「それはいろんな作曲家の作品を学ぶ上でとても役立つこと。作曲家のルーツや作品の作られた土地などさまざまなことを調べていくと、自分との共通項が見つかり、親近感が湧くからです」

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をワレリー・ゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィルと共演。オーケストラと雄弁な音の対話を繰り広げている。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番(第1楽章)も収録。(ユニバーサル ミュージック)

言語にも興味があり、いまは4カ国語を話すが、もっと増やしていきたいと語る。言語が理解できると作曲家に近づくことができるからと。

共演した指揮者がみな支援を惜しまないのは、素直な性格も関係している。インタビューでも受け答えはとても真摯で素直で謙虚。しかも内に秘めた情熱は強い。ベートーヴェン・イヤーに録音したヴァイオリン協奏曲も、オーケストラと一体化し、ベートーヴェンのロマンあふれる主題をあふれんばかりの若さと作品への情熱、作曲家への敬愛の念を前面に押し出し、一音一音に魂を込め、聴き手の心をとらえる演奏を繰り広げている。

「スポーツをしないと頭がスッキリしない」という彼は、テニス、サッカー、ボクシングに加え、最近は柔道も始めた。なんでもとことん極め、自分のものにしてしまう。「でも、ヴァイオリンが一番。生涯、ヴァイオリンとともにありたい」という彼の心意気を録音から受けとりたい。

「ただ憧れを知る者のみが~チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲」はロシア・ナショナル・フィルとの共演。指揮は9歳のデビュー時に共演したウラディーミル・スピヴァコフ。(ユニバーサル ミュージック)

文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)

(ENGINE2020年11月号)

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