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CULTURE 2020.10.4 

ファッション界の〝伝説〞に密着したドキュメンタリー ピエール・カルダンが 語った97年の人生

今年で70周年を迎えたファッション・ブランドのピエール・カルダン。ファッション界に数々の革命をもたらしたデザイナー本人が、初めて協力したドキュメンタリー映画で、波乱万丈の人生を振り返った。

フランスのデザイナーとして知られるピエール・カルダンだが、実はイタリアの出身。ファシズムの台頭により、2歳の時に家族でフランスに移住した。

さほどファッションに関心がなくとも、ピエール・カルダンという名前を知らない人はいないだろう。だがブランドを立ち上げた本人が97歳を超えた今も現役で、精力的に活動を続けていることはご存知だろうか……。

「駆け出しの頃の僕は美男子だったからね。ヴィスコンティもパゾリーニも、みんな僕と寝たがっていたよ」

こんな話を笑顔で披露するのはピエール・カルダンご本人。ドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』で、自らの人生を振り返っているのだ。

今も新プロジェクトに挑戦中のピエール・カルダン

クリスチャン・ディオールのアトリエで働いた後、28歳で独立したカルダン氏。ファッション界に革命をもたらした彼は、フランスのオートクチュール会員として初めて婦人用の既製服を手掛け、クラシックなスーツ一辺倒だった紳士服にモダンなコレクションを投入した。また白人モデルが中心だった時代に黒人やアジア人を起用し、70年代にはファッションとは無縁だった中国でショーを開催。ファッション界に初めてライセンス契約を導入したのも彼で、タオルからジェット機まで、さまざまな商品を通してブランド名を世界に浸透させていった。

デザインには永遠の象徴である円が多用された。
まるで宇宙服のような奇抜なファッションも話題に。
ピエール・カルダンは数々の才能ある人物を見出した。ジャン=ポール・ゴルチエもその一人。学生だったゴルチエのスケッチ画を見て、自身のデザインチームに採用したという。本作にはデザイナーのフィリップ・スタルクや、女優のシャロン・ストーンなど、数多くの有名人が登場する。

映画ではそんなカルダン氏の功績を総括する一方で、男性とも女性とも交際した、彼の私生活に焦点を当てる。とりわけ彼のメゾンで働いていたアンドレ・オリヴェ氏、そして女優ジャンヌ・モローとの恋愛を、本人が懐かしそうに思い起こす姿が印象深い。

なお本作の監督はP.デビッド・エバーソールとトッド・ヒューズの両氏。私生活におけるパートナーである2人は、ピエール・カルダンのコレクターでもあり、その中にはカルダン氏が内装を手掛けた1972年型のAMCジャヴェリンも含まれる。

「僕らがパリで初めてカルダン氏に会ったのは3年前。それから約1年間、関係者の取材で日本を含む世界中をまわりました」 と、エバーソール監督が話す。

「カルダン氏の人生はとても1本の映画では消化しきれないものです。ただ彼は常にこの世を美しい場所に変えていきたいと考え、世界にたくさんの色彩をもたらしてくれた。そんな彼の前向きな価値観をこの作品で伝えたかったんです」

ちなみに映画を観た本人からは、次のメッセージが2人のもとに送られてきたという。

「この作品は芸術的で思慮深く、そしてすべて事実です」 

4152台だけ作られたピエール・カルダン内装のAMCジャヴェリン。本作の監督は2万カナダ・ドル(約160万円)で購入した。
黒地のシートには赤や白、銀などのストライプが入っている。AMCの特別仕様車の中でも、「最も大胆で風変わり」なデザインとされている。
監督兼プロデューサーのP.デビッド・エバーソール氏とトッド・ヒューズ氏。2人は私生活におけるパートナーでもある。自宅の装飾をした際にピエール・カルダンの家具の魅力にはまり、以来、大ファンだという。ピエール・カルダン本人から直接、ドキュメンタリー映画の製作を許可された時は、まさかのことと驚いたそうだ。

『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』は10月2日(金)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開。101分。
©House of Cardin - The Ebersole Hughes Company

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2020年11月号)

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