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CAR 2020.8.17 

フォルクスワーゲンの新コンパクトSUV、Tロックと、ティグアン、Tクロス3台乗り比べ ゴルフを食っちゃうかも!?

ティグアンとTクロスの間を埋めるモデルとして登場したTロック。フォルクスワーゲンとしてはかなりカジュアルなテイストを持つ新顔は、大黒柱ゴルフの存在を脅かすのでは? といった出来映えを有していた。

新井 昨年末にデビューしたTクロスに続き、フォルクスワーゲンから新しいコンパクトSUV、Tロックが登場し日本に上陸しました。

齋藤 ENGINEでもTクロスは何回か取り上げたよね。

新井 Tクロスは2019年11月に発表されたんですが、昨今のSUV人気を反映してか、販売がかなり好調みたいです。日本自動車輸入組合のデータによると、販売台数はフォルクスワーゲン・ブランドのなかで大黒柱のゴルフに次ぐ第2位。つまり、ポロを上回ってます。

荒井 恐るべしSUV人気。

新井 というわけで、今回は新顔のTロックだけでなく、販売が好調なTクロスと、現行型で2代目となりすっかりお馴染みになったティグアンという2台のフォルクスワーゲン・コンパクトSUVを連れ出してみました。

齋藤 ちなみに、TロックとTクロスでは車格はどっちが上なの?

新井 Tロックです。

荒井 下からTクロス、Tロック、ティグアンというわけね。

新井 大きさが微妙に違いますし、Tロックにはちょっとクーペっぽいキャラクターが与えられています。

荒井 カブリオレがあるんだよね。

新井 そう、欧州では発表済です。

荒井 イヴォーク・コンバーチブルの再来だ。

齋藤 それも武器にカジュアル、オシャレ路線を突っ走るわけね。

新井 何百万台も販売される世界規模では問題にならないかもしれませんが、日本では販売台数輸入車第2位のフォルクスワーゲンといえども年間販売台数は5万台程度。そんなけっして大きくないマスの中に全長が30cmほどずつしか違わないSUVを3車種共存させるにはひと工夫必要という判断なのか、直近の上と下の車種で同じドライブトレインが選べない設定になっています。

齋藤 どういうこと?

新井 Tクロスはガソリンの前輪駆動、Tロックはディーゼルの前輪駆動のみ。ティグアンは前輪駆動がガソリンだけで、ディーゼルは4WDしか用意されていません。

齋藤 この3車種で棲み分けをして、あたかもひとつのファミリーであるかのように役割分担をさせているってことね。

新井 あまりに3車種の距離が近いので日本では当初、Tロックの導入を見送るつもりだったようです。ただ、さすがにこのSUV全盛のなかではコマは多いに越したことはないということになったのでしょう。欧州ではTクロスよりも1年早く発売されていたTロックがほぼ同時期にやってくることになったのは、そのあたりも影響しているようです。

Tロックのラインナップは取材車のRラインを頂点に4グレード。トリムレベルの違いのみで、2.0L直4ディーゼル・ターボ+デュアルクラッチ式7段自動MTをはじめ、機能面に大きな違いはない。ただし、タイヤ・サイズは異なる。

軽快でカジュアルなTロック

齋藤 ティグアンはともかく、TロックとTクロスの車体サイズはそんなに変わらないよね。

新井 全長が12・5cm、全幅が6・5cm、Tロックの方が大きいです。

齋藤 なのに、2台を並べて真正面から見ると、Tクロスは顔が立派というか、大きく見える。さらに、長さは12・5cm短いけど荷室の容量はTクロスの方が大きい。Tクロスは小さいボディを立派に見せようとし、しかも実用性を上げようとして空間レイアウトを頑張っている。一方、オシャレ路線のTロックは顔が小作りで、ルーフラインはクーペ風で、Cピラーのデザインはアウディみたいだったりする。スタイリングは「実用性? そんなみみっちいこと言わないでくださいよ」といった仕上がり。

インパネは独自のデザインを採用。その構成を見る限り、Tクロスよりもティグアンとの類似性が高い。全面液晶パネルのバーチャル・メーターは全グレードに標準装備。高さを活かした室内はゴルフ以上に余裕がある。

荒井 ギッチギチの実用車的なパッケージを持つのがTクロスで、ちょっと大きいボディをスタイルのためなど贅沢に使っているのがTロックってことだよね。

齋藤 フォルクスワーゲンのSUVはトゥアレグに始まったわけだけど、小さいサイズに降りてくるにしたがって、軽快なカジュアル・テイストが入ってきていた。でも大雑把に見ると「フォルクスワーゲンだよね」という実直さは受け継がれていたんだ。それがTロックでさらに軽やかなデザインへと大変身。

荒井 頑張ったなと思った。ただ、ドアを開けるとまだフォルクスワーゲンだけど(笑)。

齋藤 インテリアはまだエクステリアに追いついてないね。

荒井 そういうところがイタリアやフランスのクルマとは違う。色使いとか、ちょっとした差だと思うけどフォルクスワーゲンはそこがまだ垢抜けていない。

齋藤 いまやどこの自動車メーカーも国際色が豊かで、デザイナーはたとえばドイツのメーカーだからドイツ人しかいないなんてことはない。なのに、ティグアンやTクロスを見ると「やっぱり北ドイツの会社のクルマだよね」という感じがする。でも、Tロックでは、アウディがある南のインゴルシュタットまで下ったとは言わないけど、中間くらいまでは来た。

新井 走りもずいぶん軽快でした。

齋藤 最大トルクも大きくて、車両重量もトゥアレグと比べれば軽いからね。ただその分、変速機がハイ・ギアードだから、高いギアでアクセレレーターを真ん中くらいまで踏みこむようなときに、加速にゴムひも感というか遅れを感じる。

荒井 パドルシフトや自動変速機の走行モードをスポーツにすれば、解消されるから大きな問題ではないけどね。

齋藤 一方、Tクロスは1・0Lガソリン・ターボで動かすにはちょっと重めの1270kgの車重をカバーするため、けっこうちゃんとエンジンを回すセッティングになっている。もちろん、ティグアンやTロックのディーゼルと比べたら出力が小さいので、絶対的な加速力は大したことないけれど、タイトな感じがして小気味よかった。そういう意味では、Tロックのディーゼルはドイツ的なギアリングなんだよ。

5人乗車時の荷室容量は445L。

荒井 エンジンがトルク・バンドに入っている一番レスポンスの良い回転域を使っているからだよね。

齋藤 ところが、Tクロスは小さいボディの中で荷室も広く取りたい、後席もキッチリ座らせたいみたいな明確な意図があり、その意向がサイドのデザインに表れている。

荒井 でも、ティグアンよりはいろいろ考えたデザインだと思うな。

齋藤 Tクロスはティグアンよりカジュアルだけど、Tロックを見たあとだと生真面目に感じる。

Tクロスはポロ・ベースのSUV。ポロと同じ1.0L直3ターボを搭載するが、重くなる車両重量に対応するため、出力が高められている。サイズは異なるが、今回の3モデルはすべてMQBと呼ばれる共通のモジュラー型プラットフォームを用いている。

真面目なティグアン

新井 一方、ティグアンは本来ゴルフのSUV版なのですが、乗ってみるとパサートとの関係の方が近いんじゃないかと思うほど、ひとつ上のクラスのクルマに感じました。

齋藤 4WDだったり、ディーゼルだったりすることもあるけど、正直言って重いこともあって、ゆったり、まったりしている。極端かもしれないけど、ゴルフからクラウンに乗り換えたくらいの差がある。ゴルフとは違う世界のクルマ。いつもスーツを着て、ネクタイを締めている感じ。

室内はほかの2台よりは狭いものの、それでもゴルフに勝るとも劣らぬ広さを有する。

荒井 スゴく落ち着いていて真面目。

齋藤 ティグアン、Tロック、Tクロスはサイズの近いコンパクトSUV3兄弟だけど、方向性がみんな違う。乗った感じや空間の作り方が3車3様。

荒井 ティグアンが一番堅物。

齋藤 銀行員な感じ(笑)。

インパネは素材の質をデザインでカバー。安っぽさは感じない。
5人乗車時の荷室容量は最大で455L。

荒井 でも、フォルクスワーゲンを求めている人には、「ティグアンみたいなのがいいんですよ」という人が一杯いると思うよ。

齋藤 「Tロックみたいなチャラチャラしたクルマなんか……」って。

荒井 でも、フォルクスワーゲン好きには、「ティグアンを買って使い倒すんですよ」みたいな人は多いはず。そして実際、ティグアンはそういうことにちゃんと耐えられるクルマだから飽きたりしないんだと思う。

齋藤 ティグアンに乗って感じるのはトゥアレグが欲しいと思わないということ。トゥアレグってアメリカ用だったんだなというのがわかる。

クロームを多用した高級感に溢れるティグアンのスタイリング。ほかの2台と比べるとデビューの古いため、フロントまわりのデザインはひと世代前の意匠となる。なお、2020年7月にフェイスリフト・モデルがドイツで発表された。

オシャレSUVの先頭へ

荒井 今回、Tロックに乗って、走りを含め、好印象だった。だから思ったことがある。それは、「ゴルフは大丈夫かな?」ってこと。ゴルフを食べちゃうんじゃないかなと。使い勝手はいいし、見た目もオシャレだし。気になるとすれば車高と価格かな。

新井 ゴルフのディーゼルと比べるとプラス50万円くらいです。

荒井 「ゴルフにはちょっと飽きたけどアウディに行くのは……」と、風向きを変えたいゴルフ・ユーザーにはハマるんじゃないかな。日本で使うには大きさもちょうどいい。

新井 Tクロスと比べるとTロックは見た目にも走りにも高級感がありますから、ゴルフから乗り換えても違和感を受けないでしょう。一方、ティグアンはゴルフと比べると大きくて価格も高い。

バーチャル・メーターは上級グレードにのみ標準装着となる。

同じセグメントのゴルフはもちろんのこと、室内の余裕はひとクラス上のパサートに匹敵。

齋藤 400kgも重かったら別のクルマだよ。いくらゴルフとクラスが一緒だと言ったって。ゴルフの軽快感をティグアンに期待するのは無理。

荒井 いま、ゴルフを買っても「へぇ~」としか言われないかもしれないけど、それがTロックだったら「おっ、カッコイイじゃん」ってなるよね。あれ、もしかして私、ゴルフ・ユーザーを敵に回した(笑)。

齋藤 日本で全国区な輸入車ってゴルフだけ。そのくらい津々浦々に行き渡っている。それに対してこれから始まるTロックはフレッシュな印象が強い。

5人乗車時の荷室容量はほかの2台より150L以上大きい615L。

荒井 これでカブリオレが入ってきたら、さらに勢いを増すはず。

新井 オープン・ボディが日本に導入されたら、一気にオシャレSUVの先頭間違いなしです。

齋藤 唯一惜しいのはガソリンがないこと。1・5Lのガソリン・ターボで欲しいという人はけっこういると思うよ。ゴルフはほとんどの人が日本ではガソリン・エンジンで乗っているからね。二の足を踏ませる要因になりかねない。1・5Lのガソリン・ターボなら本当にゴルフの代わりになる。

荒井 だからTロックはディーゼルしか入れないのかと思った。ゴルフを食わないために。

新井 良く出来た実用車のTクロスとカジュアルなTロックの差は意外に大きい。だから、ガソリンを設定して価格が安くなってもTクロスとはユーザーは被らないでしょう。

齋藤 お客さんの側に立つと、「なんでガソリンはないの?」って感じる。1・5Lのガソリン・ターボでも良く走るはず。

新井 さらに軽快なクルマになるでしょう。

齋藤 カジュアルな見た目にもっとフィットし、Tロックのキャラクターをより引き立てると思うよ。

■ティグアンTDI 4モーション・ハイライン

駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4500×1840×1675mm
ホイールベース 2675mm
トレッド 前/後 1575/1565mm
車両重量(前後重量配分) 1730kg(前1010kg:後720kg)
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V直噴ディーゼル・ターボ
総排気量 1968cc
ボア×ストローク 81.0×95.5mm
エンジン最高出力 150ps/3600-4000rpm
エンジン最大トルク 340Nm/1750-3000rpm
変速機 デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション形式 前/後 ストラット式/マルチリンク式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 235/55R18 100V
車両価格(税込) 519万9000円

■TロックTDI Rライン

駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4240×1825×1590mm
ホイールベース 2590mm
トレッド 前/後 -/-mm
車両重量(前後重量配分) 1430kg(前900kg:後530kg)
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V直噴ディーゼル・ターボ
総排気量 1968cc
ボア×ストローク 81.0×95.5mm
エンジン最高出力 150ps/3600-4000rpm
エンジン最大トルク 340Nm/1750-3000rpm
変速機 デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション形式 前/後 ストラット式/トーションビーム式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 225/40R19 93W
車両価格(税込) 453万9000円

■TクロスTSI 1st

駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4115×1760×1580mm
ホイールベース 2550mm
トレッド 前/後 1535/1515mm
車両重量(前後重量配分) 1270kg(前770kg:後500kg)
エンジン形式 直列3気筒DOHC12V直噴ターボ
総排気量 999cc
ボア×ストローク 74.5×76.4mm
エンジン最高出力 116ps/5000-5500rpm
エンジン最大トルク 200Nm/2000-3500rpm
変速機 デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション形式 前/後 ストラット式/トーションビーム式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 205/60R16 92H
車両価格(税込) 299万9000円

話す人=齋藤浩之+荒井寿彦+新井一樹(まとめ、以上すべてENGINE編集部) 写真=望月浩彦

(ENGINEWEBオリジナル)

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