いま着けたいのは、“物語” のある時計--。その興味深いストーリーを知るほどに魅力は深まるばかり。ここに現代の名品たちを主役にした珠玉の短編集を編んでみた。
19世紀中頃から、名実ともにドイツ高級時計産業の聖地として知られてきたザクセン州グラスヒュッテ。しかし第二次世界大戦の終結と同時に、旧東ドイツの一部となり、同地に残った時計工房やブランドのすべてが国営工場である「GUB」に統合されてしまった。東西ドイツの再統合を経て、1990年からGUB は再び民間企業として再出発するのだが、その際(94年)に商標登録された新たなブランド名が「グラス ヒュッテ・オリジナル」だ。成立年代こそ新しいが、同社はグラスヒュッテ時計産業のすべてが集約された GUB直系となる正統派なのである。
ネオヴィンテージ流行りの昨今では、GUB時代のスタイルを模した シンプルウォッチも人気だが、同社の真骨頂はやはり技術。自社製ムーブメントに使われるパーツの約95%を自製する他、端正な仕上げのダイアルもフォルツハイムにある自社工房製だ。中でもパノは、同社の現代性を象徴するアイコンとして人気を博している。オフセットされた時分秒針のインダイアルに対し、絶妙な位置に配置されたパノラマデイト表示が印象的なレイアウトを形成。ドイツ国内の主要時計誌読者が選ぶ " ゴールデンバランス" ウォッチアワードでは、2年連続で1位を獲得したほどだ。
文=鈴木裕之
(ENGINE2020年9・10月合併号)
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