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CAR 2020.8.3 

最新パワートレインを載せるボルボXC60 B5のエコラン大会で優勝しました!

48Vマイルド・ハイブリッドの新パワートレイン、B5を載せるボルボXC60で、半日ひたすらメーターを眺め続けた。そして、さらにその後……

苦い記憶が蘇る。確かあれは先代XC60による神戸までのエコラン大会だ。1日中ひたすら右足の操作に集中したのに、結局アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を使用したチームが上位だった。だから今回、福島・いわきまで半日かけて5つのメディアが戦うエコラン大会のお誘いが来て、すぐに頭の中で作戦を決めた。世代が変わったとはいえ同じXC60。雪辱戦である。

事前に立てたプランはこうだ。まず選択する走行モードはエコ・モードのみとする。ACCは常に使用。ACCを使わなければ、速度が65km/h以上の場合、アクセル・オフでコースティングが効き、燃費が伸びる。しかし、あえて今回はACCに任せ、コースティングには頼らないことにした。ただし道の勾配とまわりの状況に目を配り、エコ・モードで現れる半円形のゲージの針の動きを見つつ、急な加減速をACCにさせないよう速度だけを指先で微調整する。ACCを使わず人間が足でペダルを操作してコースティングを働かせる回数を増やすのと、ACCは使うがコースティングを作動させないのと、どちらが勝つか。いわば人間と機械の勝負。今回は機械に頼り切りの作戦である。

スタートは東京・芝公園のボルボ・カー・ジャパン。目的地は約200km先の福島・いわきにある“シーフード・レストラン・メヒコ”だという。ここは食事をしながらフラミンゴが見られるという不思議なレストランで、創業は1964年という老舗である。実はボルボ広報のNさんのお気に入りで、幼い頃から通っているらしい。

東京を起点とする高速道路は、基本、関東平野が低い土地ゆえに、どこに向かうのも登り勾配である。今回走る常磐道は、その中では比較的勾配がゆるやかだ。とはいえ、コースティングが作動する距離は登りなら少ないはずである。

集合時間は朝9時。天気は曇り空だった。じゃんけんで買ったチームから1台ずつ車両を選択していく。我がENGINEチームの車両はクリスタル・パール・ホワイトのXC60 B5インスクリプション(車両本体価格=734万円)となった。明るい誌面映えする色を、と思って選んだのだが、オプションのエア・サスペンション(31万円)装着車両である。高速巡航時、自動で車高が下がるので燃費への貢献は大きいはずだが、メカニズムが複雑な分、車両重量も30kg増す。これがはたして吉と出るか凶と出るか……。

XC60 B5インスクリプションの室内。オレフェス社製のクリスタル・ガラスのシフト・ノブは上位のT8シリーズ専用だったが、B5でも装着されることになった。インテリア・カラーはチャコール。パーフォレーテッド・ファインナッパ・レザーのシートは調整範囲が広く、掛け心地もサポート性も素晴らしい逸品だと思う。

すでに資料は目を通していたので把握はしていたが、目の前にあるXC60 B5からは、新しいグレードであることを示すアピールがほとんど感じられない。外観上の違いはテール・エンドのエンブレムくらいだ。B5はこれまでの2LガソリンのT5に代わるユニットで、ボルボが2025年までに販売台数の半分をハイブリッドに、残りをEVにするという目標を達成するための、いわば今後のボルボの核となる、重要な位置付けのモデルのはず。だが、元々クリーンかつセンスのいいXC60に、余計な演出がないのはむしろ好印象である。

B5の肝となるのは2L直列4気筒ガソリン・ターボ・ユニットに組み合わさるISGM(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール)だ。回生で得た電力を荷室下のリチウムイオン電池に溜め、最高出力10kWのモーターが始動時や走行の補助をする。なお、この2Lユニット自体も従来のガソリン・ターボ“T5”ユニットと同じではなく、3000回転以下、30-160km/hで作動する気筒休止システムの追加や、エグゾースト関連の変更、シリンダー内の表面処理の変更による抵抗の低減など、大幅な改良が施されている。最高出力&トルクはエンジンが250ps/5400-5700rpm&350Nm/1800-4800rpm、モーターが10kW/3000rpm&40Nm/2250rpmとなる。なお、競技車両のインスクリプションとはラグジュアリーなトリムとなる上位グレードで、このほかにXC60シリーズではモーメンタムとRデザインの3種類が用意されている。ただし、現時点でB5ユニットが選択できるのはこのインスクリプションとモーメンタムだけだ。変速機は従来通り8段AT、駆動方式は4輪駆動のみの設定である。

並んで待っていると、たまたま6台中、トップ・バッターでスタートとなった。積算計を広報のNさんにリセットしてもらい、そろそろと走り出す。ハイブリッドとはいえ、すぐにエンジンが始動する。渋滞情報を見ると、幸い道は空いていた。ナビ画面の示す通り、芝公園入口から首都高に入り、常磐道を北上するルートを選択。首都高速・堀切JCT通過時点での積算燃費の数字は10.6km/Lだった。

首都高をおとなしく流れに乗って走っていると、三郷料金所の時点で積算計の数字は13.6km/Lまで伸びていた。さて、ここから空いた常磐道でどれくらい燃費を伸ばせるかが肝だ。エコ・モードのゲージは目盛りで8分割されており、ACCによるアクセレレーターの開度によって意外とよく動く。観察していると、いちばん針の値が低く安定するのは目盛りが1/8の少し下のところのようだ。登り勾配にさしかかったり、前走車との距離に合わせてACCが加減速すると、針が大きく上下する。回りのクルマの動きと道の勾配に合わせて、ACCの設定を制限速度の前後で調整する。また、あくまで車線の範囲内で、最短距離を走れるようなライン取りを心がけた。たんたんと走行車線をひた走ると、北関東自動車道との分岐となる友部JCTの手前で、ようやく17km/Lに到達した。

このあたりから降り出した雨が、僕と同乗する山田カメラマンを苦しめることになった。燃費向上のためやむを得ずエアコンをオフにしている(※注意 今回は周囲の安全に気を配り、競技のために実施しましたので、決して真似しないで下さい)ので、フロントとサイドのガラス内側がどんどん曇っていくのだ。暑がりの山田カメラマンが汗をかきながらウインドウを拭くが、追いつかないので仕方なく窓を開ける。空力のことを考えたら開けたくはないが、そこは安全には変えられない。しばらくして曇りが取れると窓を閉め、曇ると窓を開けるのを繰り返す。そんなことをしていると、ほかのチームにどんどん追い抜かれてしまった。1番手だったはずが、気がつけば4台が先行している。

いわき中央ICで高速を降りた時点での燃費は18.5km/L。ICを降りてすぐ後ろから来たもう1チームに抜かれ、最後尾になる。交通量のある一般道でこれ以上燃費を伸ばすのはなかなか難しい。残り約12km。幸いバイパスが続き、速度は落ちない。しかも運良く、ほとんど信号に止まることもなかった。なんとか燃費を落とさずにゴールできたのは、お昼をわずかに過ぎた頃だった。

さっそくすでに到着済みのほかのチームから「何km/Lだった?」と声をかけられたので「18.5km/Lです」と答えると、感嘆の声があたりに響いた。

最終結果は以下の通りである。


1 ENGINE …………19.1km/L
2 LE VOlANT …………18.2km/L
3   GQ Web …………17.5km/L
4   Motor Magazine …………16.9km/L
5   MOTA …………16.2km/L
賞典外   VOLVO CAR JAPAN  PR TEAM …………17.3km/L

なんと、見事19.1km/Lでぶっちぎり優勝! 実はずっとにらんでいた運転席正面に表示されていた18.5km/Lという数字は、スタート前からの積算の数字だったのだ。中央の縦型ディスプレイで走行履歴を引き出してみると、確かに我がチームの東京~いわき間の燃費は19km/Lを越えていた! いやはや、うれしい誤算である。急いで写真を撮ろうと思ったのだが、ドタバタしていたら19.0km/Lまで落ちてしまったのは残念無念。

メヒコの名物料理は大きなゆでた殻付きのカニががのっているピラフ。ところが残念なことに甲殻類アレルギーの筆者は一切食べられず……代わりに美味しいステーキを頂きました。ちなみに優勝賞品はこのピラフのセット。
シーフード・レストラン・メヒコのメニューには「Since 1969」と「伝統のカニピラフ」の文字が。店舗は檻をかこむように席が配置され、食事をしながらフラミンゴを見ることができる、面白いレイアウトになっている。

食事をしながらほかのチームに話を聞いてみると、皆さんエアコンなしの雨天走行に苦しめられた模様。中には休憩の後、うっかりエコモードに再設定をするのを忘れてしまったチームもあったようだ。2位になったルボラン・チームのIさんは、やはりACCを使わず、ずっと自分で運転してきたという。どうやら事前の予想通り、ACC使用と速度の微調整が勝利の鍵となったみたいである。

午後は思いっきりたまったここまでのストレスを晴らすべく、会津磐梯山のワインディングを目指すことにした。ところが向かう高速道路は、ほとんど前が見えないほどの土砂降りな上、山中は大雨である。これでは撮影どころじゃない。山田カメラマンと相談し、急きょ日本海に沈む夕陽を狙うことにする。雨雲から逃げるように、ひたすら西へXC60を走らせた。

すでに時間は午後6時。ほかのチームはとっくに帰京している時間なのに、まだ我々は新潟にいた。目的地は北陸自動車道・三条燕ICからクルマで30分ほどの浦浜海水浴場である。東京を出てから延々450kmも走ってきた苦労が報われたのか、なんとか佐渡島を望む、見事な美しい夕陽に巡り会うことができ、ほっと一息つく。しかし、ここからまだまだ先は長い。それなのに切り立った崖の続く日本海沿いの道が楽しくて、ついつい寄り道をしてしまった。海がすぐ目の前の日本海間瀬サーキットの前を通り、しだいに暗くなっていく弥彦山スカイラインを一気に駆け抜ける。

真っ暗な峠道では、タイトで勾配のきついコーナーをものともしないXC60 B5の俊敏さに舌を巻いた。低回転域からディーゼルのようにモリモリ力があるのに、一気に上まで吹けていく気持ち良さも備えている。それでいて始動時や高速巡航時の静粛性は素晴らしい。交通量の少ない夜の関越自動車道では気筒休止の動作タイミングを探ってみたが、まったく分からなかった。これまで、ほぼ2t近い車両重量のXC60にはディーゼルのD5こそベストと思っていたが、これほど力がある上に回転フィールも良く、おまけに静かだと、B5を積極的に選びたくなる。

そんな思いが決定的になったのは、トータル816.8km走って深夜に帰京した時だ。いわきから新潟は夕陽を目指したためかなりアベレージ速度は高く、その後もほとんど燃費に気を配らずに走ったのに、いわき~東京間で13.2km/L、1日のトータルでは14.2km/Lという燃費をマークしたのだ。航続可能な距離も、まだ160kmと表示されている。おそらくディーゼルのD5なら、この1割増しの燃費で走ることができる。航続可能な距離も、さらに長くなるはずだ。ただし、長距離を走れば走るほど、ディーゼルの振動や騒音は、わずかずつではあるけれど、ダメージとなって身体に蓄積されていくだろう。これならトータルで考えるとD5よりB5に歩があると、僕は思った。

いやはや小食なのに、乗って楽しいボルボXC60 B5、恐るべし、である。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人・ENGINE編集部

(ENGINE 2020年9・10月合併号)

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