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PLAYING 2020.7.17 

【ENGINE・ハウス】新し過ぎないほうがいい 錆のガレージハウスとレンジローバー・クラシック

レンジローバー・クラッシクのオーナー滝川さんの赤褐色に変化していく家。錆ついてく屋根のヒミツとは?

外壁の錆が味わいに

「長く使うことで味が出てくるモノが好きです。昔のデザインには、素材感が優れたものが多い」そう話すのは滝川雄貴さん(39歳)。1991年型のレンジローバー・クラシックに乗り、ミッドセンチュリーの名作家具を数多く所有するデザイナーだ。もちろんお宅も、そうしたテイストが反映されたもの。2階以上の外壁に用いられた素材が、経年変化で味わいが増すように設計されている。

使用されているのはコールテン鋼。表面に施した錆が保護膜となり、内部が腐食しないうえに強度が増し、適切なメンテナンスを行えば100年以上ももつ素材だ。6年前の竣工時は明るい茶色だったが、取材時には赤褐色に変化し、えも言われぬ雰囲気を醸し出していた。1階部分の白いコンクリートの壁と絶妙のコントラストである。実はこのコールテン鋼、彫刻家である滝川さんのお父様がよく用いていたもの。生家の建て替えに際して、建築家の石井秀樹さんは、この家族が古くから慣れ親しんでいた素材を大胆に使用した。こうして誕生したのが、きれいに上下二色に色分けされた滝川邸である。

一般的な家とはかけ離れた姿だが、お伽話に出てくるキノコの家のようで、どこかほっとする形だ。シンプルな構成のこの家は、見える部分に雨樋が存在しないが、上手く雨水が流れるように工夫されている。それでも若干ではあるが、錆が流れ出し、窓や白い壁に付着してしまう。事情を知らずに親切に注意してくれるご近所さんもいるが、滝川さんは、「逆にそれがいい」と、エイジングを楽しんでいる。

デザイナー夫婦の作る空間

さて、この家は滝川さんの家族と、ご両親家族が住む2世帯住宅である。1階部分は、自宅で仕事をする滝川さんのオフィスとご両親の家。駐車スペースも2世帯分確保した。2階以上は、4つのボックスが連なる構造。南から北に(メイン写真の右から左に)行くに従って高くなっており、一番北の部分には3階が存在する。この高さの違いを利用し、ボックスの南面上部に窓を設けた。ここから外光が入るうえ、暑い時期に開け放てば、夏の南から北へ抜ける風が涼をもたらす仕組みである。

3mを超える天井高のダイニングキッチン。木製のカウンターは4m近い長さがある。東側の窓もかなりの大きさ。ジャン・プルーヴェの椅子が2脚向かい合っている場所が3階。4脚揃えたPPモブラー社のダイニングチェアは、5人家族になったため事務所で使われている。

2階の中心にあるのは、テーブルとキッチンが一体となった、木製の長いカウンター。木の色は変化し、コップの跡や子供たちがつけた傷などから家族の歴史が窺える。この家の設計時は、最初の子供が生まれたばかりだったが、今や子供は3人に。小さな子供の多い家庭でありながら、室内はセンス良くまとまっている。奥様の優子さんもデザイナーで、部屋には吟味された小物が並び、随所にアートワークが。壁を利用して飾り付けを行い、七夕やハロウィンなど、季節の行事を楽しむことも多いそうだ。このようにデザイナーの夫婦が手を加えられる余白を、建築家はあえて作った。

キャンプのためのクルマ

そんな家の中の生活だけでなく、滝川さんはアウトドア・ライフも趣味としている。レンジローバーに道具を積んで、家族でキャンプに出掛けるのだ。お父様がアウトドア好きで、レンジローバー(1975年型)に乗っていた(現在も所有)。その影響で滝川さんもランドローバー党に。最初のクルマは初代のランドローバー・ディスカバリー。その後、ディフェンダー90に5年ほど乗ったが、子供が三人となり、後部座席が対面式のクルマから、今のレンジローバーに乗り換えた。古いクルマなので、馴染みの整備工場にはよく顔を出す。子供の頃に父親のクルマが止まるのを何度も経験していることもあり、もしもに備えて念入りにメンテを行っているのだ。緊急事態の際にはすぐに路肩に停められるよう、高速道路は一番左の走行車線を走るなど、古いクルマとの生活は徹底している。

そんな滝川さんだが、他の新しい車種にも興味はある。「100㎞未満の距離のキャンプはレンジローバーで行くが、それ以上は信頼性の高いクルマで出かける生活を妄想する」こともしばしばとか。もっとも、以前レンタカーで長距離ドライブに出かけた際、運転していて眠くなる体験を人生で初めてした(しかも何度も)。「ランドローバーを運転する時は、エンジン音に注意するなど、絶えず神経を使っているので眠くならないのでは」

この、程良い緊張感が心地よいと言う。だから古いクルマはやめられないのだ。それは便利さだけでは判断できない、家を含めた身の周りのモノ選びも同じかもしれない。

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一

(ENGINE2017年06月号)

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