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CAR 2020.7.28 

五味康隆さん/人生を変えたクルマ 常識をぶち壊したテスラ・モデルS

これまでに出会ったクルマの中で、もっとも印象に残っている1台はなにか? 多くのクルマを知る自動車ジャーナリストとエンジン関係者59名が、それぞれの人生で出会った「決定的なクルマ」について綴ったエッセイです。自動車ジャーナリストの五味康隆さんが選んだのは、「テスラ・モデルS」。人生を変えたクルマの物語をどうぞお楽しみください。

今のままでいいのか?

当たり前のことを何も考えずに行う。 そんな慣れや習慣こそが、 思考回路を停止させる要因だった。 そのことに気付かせてくれたのが、 このテスラ・モデルSだ。

人生に影響を及ぼしたクルマとしては、若い時に出会ったランドクルーザー(40系)が最初の記憶として深く刻まれている。スノーボードなどアクティブな趣味の原動力となり、その楽しみの深度が増し、行動範囲など根本からライフスタイルが変わった。無敵グッズを手にした感覚を得たことを覚えている。

そこからクルマにハマり、次に人生を変えたのが2代目ハリアーのハイブリッド。3・0LV6にモーターを組み合わせた元祖ハイパワー・ハイブリッド。このモデルは様々な観点で僕の価値観を大きくぶっ壊した。

ひとつはSUVのマルチな性能はカーライフを豊かにするということを知った。遠くまで快適に苦もなく移動でき、運転視点が高くて開放感がある。レーシング・ドライバー時代から、ハンドリングや走りの良さこそがクルマの魅力や本質の価値と思っていたが、その考えが狭く、井の中の蛙であったことを否応なしに体験として与えてくれた。

さらに、ラフロードなどタフな道は本格四駆の独壇場と思っていたが、大抵の道はハリアーで苦労なく走れてしまう。そして最も衝撃的だったのが、電気モーターの凄さ。どんなに優れたエンジンでもこの加速はできない! と思わせるモノで、電動モーターがクルマの価値を今後ガラッと変えていくことを直感した。それが衝動買いした理由でもあり、その後にHVやPHVそしてBEVを6台も乗り継ぐキッカケを作った。

今挙げた2台も、もっと掘り下げたいが、それらが霞む衝撃を与えてくれたのが、 今所有しているテスラ・モデルS。これはクルマのみならず、僕の仕事のスタイル、生き方を大きく変えた1台。

既存の自動車とは違う

「昔からそうだから」とか、「皆がそうしているから」と、思考回路を停止させて習慣のように行なっていること、受け入れているモノはありませんか?例えば、12時になったから寝る、出社のために毎日満員電車に乗る。習慣や慣れこそが人をダメにするものだと思うようになったのはテスラがキッカケ。

テスラは表向き自動車と捉えられているが、その企業意識や開発意識としては自動車を作るという感覚が薄いのだろう。 「今の社会環境において、もっとも便利で人々の生活を豊かにする移動の道具とは?」という問いに対して答えた結果、世間からはクルマというジャンルに属する形になったと捉えられる。いまでこそ少しずつ既存自動車メーカーが猛追体制を整えだしているが、その意識改革を行わない限り追いつかない。

カギを持って近づくだけで鍵の開閉がなされ、 乗り込み、 ブレーキを踏めばシステムがスタンバイ状態になり、シフトレバーをDにするだけで走り出せる。 スタート ・ ボタンを押させるといった無駄な作業などどこにもない。生物兵器にも対応する内気循環機能まで必要かは最近まで“?”だったが、今後必要と思われるモノ、便利と思われるモノなど、先を見据えたクルマづくりがされている。その象徴が、スマホのように所有してからアップデートにより出来ることが増えていくこと。これを体験すると、新しい性能や機能が欲しければクルマを買い換えてくれ!という既存自動車がガラケーに感じてくる。

さらに注目は、世のスーパーなハイパフォーマンス ・ カー以上の加速力を5人乗れるセダンで容易に実現していること。ちなみに今夏頃にリリースされるアップデートを行えば、0-100km/h加速が2・5秒のクルマになる。2・5秒がどれほど凄い性能か、説明の必要はないだろう。

モデルSに触れていなければ恐らく僕自身、慣れや習慣こそ思考回路停止の要因とは捉えることができなかったと思う。もちろん革新的であること、進化を続けることが絶対的な価値とは思わないが、「今のままでいいのか?」 。 自身を進化革新させる気付きを体感として与えてくれたモデルとして感謝したいくらいだ。

文=五味康隆(自動車ジャーナリスト)

・Twitter→@e_carlife

・Youtube→https://www.youtube.com/channel/UCacmUS5IWcTzpI3b4ZkkSgw

(ENGINE2020年7・8月合併号)

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