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CULTURE 2020.6.24 

直流か交流か? 映画『エジソンズ・ゲーム』が描く〝電流戦争″の熾烈

電力事業の覇権を制すのは発明王のエジソンか、それともカリスマ実業家のウェスティングハウスか? 映画で知る19世紀末の〝電流戦争″。

JPモルガンの強大な資金力をバックに、直流方式による電力事業制覇を目論んだトーマス・エジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)。

電力がアメリカの街灯を照らしはじめた19世紀後半。2つの電流方式をめぐる、熾烈な戦いが繰り広げられていた。かたや直流方式で全米の電力覇権を狙うトーマス・エジソン。こなた交流方式で天才発明家に真っ向対決を挑んだ実業家のジョージ・ウェスティングハウス。映画『エジソンズ・ゲーム』で描かれるのは、1880年代から90年代にかけて起きた、いわゆる〝電流戦争″の行方である。

電気が一方向に流れることから扱いが楽でありながら、当時の技術では遠方まで電気を運ぶことができなかった直流方式。一方、電気の流れが周期的に変わる交流方式は、扱いは難しかったものの、電気を遠くまで、安価に送ることができるという利点があった。今では直流、交流それぞれの特性を生かした使い分けがなされているが、本作を観ると、いかに両陣営の争いが熾烈なものだったのかが分かる。とりわけエジソンによるライバル陣営へのネガティブ・キャンペーンは凄まじかった。マスコミを利用してウェスティングハウスを〝ハゲタカ″と中傷するばかりか、交流方式がいかに危険なものかを証明するため、馬一頭をパフォーマンスで感電死させてしまったのだから……。

作品自体は両者の対決に焦点を絞っているので、電力の知識がなくても充分、楽しめる仕上がりになっている。傲慢で攻撃的な天才発明家と、現実的で人徳もあるカリスマ実業家という2人のキャラクターの対比も興味深い(ベネディクト・カンバーバッチとマイケル・シャノンが好演)。一方、もう少し掘り下げた人物像を見てみたかったのが、テスラ・モーターズの社名の由来にもなっているニコラ・テスラ(ニコラス・ホルト)だ。〝電流戦争″でウェスティングハウスと組んだもう一人の天才は、その後も自動車エンジンの点火プラグやラジコンなど、数々の発明品を生み出した。だが晩年は経済的に困窮し、質素なホテルの一室でほとんど無一文の状態で86年の生涯を閉じたという。その波乱万丈の人生を描くには、もう一本分の映画が必要になるかもしれないが。

エジソンと対立する実業家ウェスティングハウス(マイケル・シャノン)。ナイアガラの滝に発電所を設立したことでも知られる。
最初はエジソン・エレクトリック社に就職したニコラ・テスラ(ニコラス・ホルト)。だが意見の相違からエジソンと袂を分かち、ウェスティングハウスと手を組むことに。
共にカリスマ的な存在でありながら、対照的な性格を持つ2人のキャラクター描写も見ものだ。

監督はアルフォンソ・ゴメス=レホン。『エジソンズ・ゲーム』はTOHOシネマズ日比谷他全国公開中。108分。配給:KADOKAWA c2019 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINEWEBオリジナル)

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