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CULTURE 2020.6.17 

まるで写真のよう! Bunkamura ザ・ミュージアムで楽しむ超写実絵画の世界

東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで再開催中の特別展「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」。精緻に描かれた絵画作品の奥にある、不思議な世界を体験する。

島村信之《籐寝椅子》2007年 油彩・キャンバス

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、いったんは開催中止となってしまったBunkamura ザ・ミュージアムの「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」が、内容は同じく特別展として再開催されることになった。この春、数多くの展覧会が開催半ばで中止となったり、あるいは開催そのものが取りやめになったりすることが相次いでいた。自分たちの収蔵品を展示する常設展とは異なり、他館から作品を借りる企画展は、様々なスケジュール調整をなんとかクリアして開催にこぎつけるもの。だから、今回の再開催までの道のりは本当に大変だったはず。見たかった展覧会だから喜びもひとしおだ。

写実絵画とは、その名の通り極限まで写実的に描かれた絵のこと。パソコンやスマートフォンから見ると写真と見間違えてしまいそうなほど細かいところまで精緻に描かれている。ホキ美術館はこの写実絵画を専門に収集・展示する美術館で、2010年に千葉市緑区に開館した。昨年の10月25日の豪雨による水害の影響で8月まで休館しているため、この美術館の作品をまとまって見られる機会は非常に貴重なのだ。

会場で見る写実絵画は、遠くから見るとやはり「まるで写真のよう」という第一印象。けれども、作品に近寄ってみるとキャンバスの表面にはうっすらと筆の跡がある。それを目にした瞬間、この絵の前には画家がいたのだ、その画家が並々ならぬ熱意をこの作品に注いだのだ、ということがわかり、背筋がゾクッとする。先程までクールで静謐な印象を抱いていた写実絵画の向こう側に、強い情念を持つ人間の気配を感じるようになるのだ。「深淵を覗く時 深淵もまたあなたを覗いている」とニーチェは言っていたけど、画家が深淵を覗きこみ、そして深淵が画家を覗き返している場面にうっかり立ち会ってしまった気分になるのだ。

だからだろうか、ときどき絵を見ているだけなのに、とても不思議な感覚に襲われる。生島浩の《5:55》は、絵を見ているはずなのに、自分が絵に見られているような気分になるし、野田弘志の《聖なるもの THE-IV》の鳥の巣と卵は、見てはいけない場所を覗いているような気持ちになってくる。通常、美術館で生じることのない感情が生まれてくる。これが新鮮で心地よい。

写実絵画が持つ力を感じられるまたとない展覧会。体温チェックなど入場前の手続きが増えているものの、これもまた新しい日常。開催期間は短いものの、ぜひ訪れてみてほしい。

野田弘志《聖なるもの THE-Ⅳ》2013年 油彩・パネル・キャンバス
生島浩《5:55》2007~2010年 油彩・キャンバス
青木敏郎《レモンのコンフィチュール、芍薬、染付と白地の焼物》2013年 油彩・キャンバス

特別展「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」は6月29日(月)までBunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1 B1F)で開催中。詳細はBunkamura ザ・ミュージアムの公式サイトを参照。

https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_choshajitsu2.html

文=浦島茂世(美術ライター)

(ENGINEWEBオリジナル)

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