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CAR 2020.5.2 

「ポルシェをデザインする仕事」第1回/山下周一 (スタイル・ポルシェ・デザイナー) 独占手記

誰が見てもポルシェと見紛うことのない、あの独特のスタイルはいかにして生み出されるのか。日本人デザイナーの山下周一氏に、ポルシェのデザインの秘密を解き明かす連載をお願いすることにした。今回はそのプロローグをお届けする。

第1回「ヴァイザッハ研究開発センター、スタイル・ポルシェへ初出社」

その夏はとても暑かった。まだ初夏だというのにドイツらしくない蒸し暑さの日に、私たち家族はシュトゥットガルト空港に降り立った。不安そうな表情の妻とまだ幼い娘と息子を連れてチーフ・デザイナーの迎えを受けた私は、レンタカーを借りると、アウトバーンを走る彼の911の後を必死についていった。2006年6月、今でも忘れないのは、その年のドイツがワールドカップ開催で盛り上がっていたことと、とにかく暑かったことだ。こうして私のポルシェでの新しい生活が始まった。 

そもそも、ポルシェをデザインすることが、カー・デザイナーとしての私の目標だったわけではない。カー・デザイナーという職業があるのを知り、クルマのデザインをしてみたいと思ったのが、この道に足を踏み入れた始まりである。アートセンターという自動車デザインを教える学校がアメリカにあることを聞き、そこに行くために英語の勉強を始め、渡米した。何とか入学して、卒業。いくつかの自動車会社に勤めて、シュトゥットガルトにやってくるまでに18年が過ぎていた。その間、頭の片隅にはいつもポルシェという会社があった。

ポルシェのスポーツカーを所有するどころか運転経験さえなかったのに、ただ漠然と頭の中にあり続けていたのだ。大好きなバウハウスに代表されるモダン・デザイン、〝Form Follows Function〟という言葉をそのまま体現したようなそのスタイリング、揺るぎなきブランド・イメージなどが、いつの間にか自分の理想像として頭の中に築き上げられていたような気がする。

山下周一(やました・しゅういち) /1961年3月1日、東京生れ。米ロサンジェルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで、トランスポーテーション・デザインを専攻し、スイス校にて卒業。メルセデス・ベンツ、サーブのデザイン・センターを経て、2006年よりポルシェA.G.のスタイル・ポルシェに在籍。エクステリア・デザインを担当する。

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