2020.04.04

LIFESTYLE

食通を唸らす日本の中華の最前線1 『赤坂 桃の木』

日本の中華は、ここ数年で鮮やかに進化中。伝統料理に対する深い知識と高い技術をもったシェフたちは、他ジャンルの要素を取り入れ、新たな境地を切り開いている。
手前は名物「茄子の唐揚げ 山椒唐辛子風味」。華やかな唐辛子の香りをまとった茄子の衣はクリスピーで、実はとろりと甘く、油気を感じさせない。奥は日本製の牛刀で0.9㎜角に切り揃えた香味野菜の甘酢ソースが端正な「豚ロースの雲白肉(ウンパイロウ)」。雲白肉は薄切り肉をたなびく雲に見立てた四川料理の前菜。

2005年に『桃の木』を開業した小林武志氏は、台湾A菜やアヒルの舌といった馴染みのない食材に光を当て、自然派ワインをいち早く紹介してきた中華の大御所。15周年を機に三田から赤坂へ移転した今年3月からは、以前とは違うアプローチの料理もコースの中に組み込まれるようになった。


その象徴的な新作「ゴルゴンゾーラの水餃子」は、ほうれん草を練りこんだ生地でエビのすり身とゴルゴンゾーラチーズを包み、澄んだ上湯に浮かべたもの。実は20年前から構想はあったものの、中華の範疇を超えていると考え、頭の中にしまっていたのだとか。


しかし海外で料理をする機会が増えたことで、心境が変化。「今や香港では、中華でもポン酢やフォアグラ、キャビアなどが当たり前のように使われている。美味しくなるなら、縛られずに使ってみよう」と思うようになったのだという。


最近の高級中華では、調味料の量を控えて素材を生かした"きれいな味"が支持される傾向にあるが、『桃の木』は、その元祖。「茄子の唐揚げ 山椒唐辛子風味」や「豚ロースの雲白肉」「干貝柱の炒飯」といった以前からの名物は、香り豊かでキレがよく、澄んだ味わいだ。その背景にあるのは、見た目からは想像がつかないほどの丁寧な仕込みと探究心である。


海老餡とゴルゴンゾーラの濃厚な風味が合う新作「ゴルゴンゾーラの水餃子」。ゆったりと席を配置したダイニングは16席。個室2室。店名は中国の故事「桃李成蹊」に由来。
店主の小林武志さん。

●赤坂 桃の木

東京都千代田区紀尾井町1-3 紀尾井町テラス3F Tel.050-3155-1309
17:30~21:00 LO 水曜定休、その他不定休あり
料理は1万5000円のコースより。
https://momonoki.tokyo

文=小松めぐみ(フード・ライター) 写真=田村浩章


(ENGINE2020年5月号)


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