2020.04.18

CARS

「初代トヨタ・セルシオ」あのとき買っておけばよかった! 30年経っても漂う平成の贅沢感と現代レクサスのルーツに感動!【エンジン中古車探検隊アーカイブス】

過去に本誌で連載していた「エンジン中古車探検隊」のアーカイブをお届けするシリーズ。今回は、2020年4月号に掲載された「トヨタ・セルシオ」篇をお届けする。

※紹介した中古車の価格、在庫については、取材時のものです。

トヨタ・セルシオとは

現代のレクサスの起源と言われる「初代トヨタ・セルシオ(欧州名レクサスLS)が誕生したのは、遡ること26年前の1989年。1989年といえば、マツダ・ロードスターやホンダNSXなど日本が世界に誇るスポーツカーたちが世に出たヴィンティッジ・イヤーだが、ジャガーをはじめとする欧州の高級セダンに大きな衝撃を与えたクルマのデビューもまた、この年だった。
セルシオは1989年に初代10系が登場。1994年には20系、2000年には30系へ進化したが、日本市場でもレクサス・ブランドの展開がはじまるのに合わせて2006年に販売を終了している。

フルノーマルの生き残りを発見!

アライ 89年といえば日本車のヴィンティッジ・イヤー。そういえばGT-Rやロードスターのネタはしょっちゅう取り上げられますが、セルシオの話ってあんまり見ませんね。

ウエダ そこで今回は初代セルシオの上モノを求めて京都の「なるき屋」さんまでやって来ました。

ワタナベ 初代の10系セルシオって聞いて、トヨタのディーラー系中古車の取り扱いはどんな感じだろうと思って調べてみたんだけどさ、もう影も形も見当たらない。あって00年からの30系って感じで。

アライ 登場から30年モノですしねぇ。さすがに認定保証とかつけるのはリスクがあるんでしょうね。

ワタナベ さすがに純正部品も欠品とかあるだろうしねぇ。それにイジられまくって潰されたタマも結構多いだろうから、どノーマルの個体っていよいよ希少になってるんだと思う。ストリート・ファイターでも随分ぶっ壊されただろうし。

ウエダ そんな状況の中、数少ないフルノーマルの個体を発見しました。こちらの「なるき屋」さんは10〜30系のセルシオを中心にトヨタ系のセダンを得意とされているお店です。

ワタナベ お、このパール・ホワイトの個体は綺麗だねぇ。ホイールは20系のやつに変更してるのかな。

アライ アメリカのお客さんが喜びそうなポリッシュ仕上げですね。

タッチの差で売約済みとなってしまったなるき屋がストックしていたパール・ホワイトのC仕様。当時はこの車両のようなクローム・メッキのアルミ・ホイールもオプションで用意されていた。

ウエダ でも、こちらの個体は昨日売約済みになったそうです。見に来たお客さん、即決だったそうで。

ワタナベ 10系をご指名で探している人も結構いるんだってね。

アライ ちなみにナベさんは10系が出た時って、今の仕事してたんですか?

ワタナベ してたよ。だから新車の時にも何度か触ったことがあるけど、R32のGT-Rより全然高いクルマだったし基本的には縁遠かったね。

ウエダ ちなみに今回の取材車のA仕様(1994年型)はコイル・サスの一番ベーシックなグレードですが、それでも500万円超えです。



ワタナベ
 一番高いCのFパケだと700万円くらいしたんじゃなかったかな。当時のセンチュリーの価格も優に超えてたよね。

ウエダ センチュリーのユーザーも羨ましがったとか?

ワタナベ 初代セルシオは、とにかくオーナー・ドリブンカーとしての売れ方が凄かった覚えがあるなぁ。それにセンチュリーに乗せられるようなエスタブリッシュメントは、マインドとしても新参者にほいほい乗るようなことは良しとしなかったんじゃないの、当時は。

アライ それが30年経つと、街中アルファードだらけという……。エスタブリッシュメントのドレスコードは崩壊してますね。

セルシオ・ライドの天下が再び!?

ワタナベ まぁ10系は性能はとにかく凄いというか、低中速域での乗り心地とか高速域に至るまでの静粛性なんかは圧倒的だったよね。

アライ いまこうやってみると、プレスドアのサッシュにウインドウ・ガラスを支えるガイドを設けてフラッシュ・サーフェス化しつつ開閉精度を高めたりとか、音消しに対する執念がハンパないですね。

ワタナベ しかもこの個体は保管状態も良かったのかもしれないけど、ウェザーストリップの活きの良さとか、経年変化の少なさが凄い。

ウエダ ちなみにこちらの個体、一番安いグレードということもあって、お店の方は当初部品取りにと仕入れたそうなんです。でも実質ワンオーナーの経歴や車両の状態をみるに、十分商品化出来ると判断したと。

ワタナベ 全然しっかりしてるよ。エンジンの掛かり方とかミッションの入り方とか、セルシオっぽいヌメりがしっかり感じられる。

アライ 内装の程度もいいですしね。パンと座面の張ったシートの掛け心地とか、当時のメルセデスを相当研究したことが伝わってきます。


視認性の高いオプティトロン(自発光式)メーターやウォールナットのパネルは全車標準装備。

上位のBやC仕様のグレードは本木目の4本スポーク・ステアリングやシフト・ノブもオプションで設定されていた。

ウエダ 一方でこのセルシオといいますか、初代LSといいますか……が登場するや、世界の自動車メーカーはその静粛性に愕然としたと言われていますね。ジャガーのAJ-V8ユニットがセルシオの1UZ-FEの影響をうけているのは有名な話ですし。

アライ ちなみに今、この型の部品供給的にはどうなのかな。

ウエダ ちょこちょこ欠品がある中で一番困っているのはECUのコンデンサーからの液漏れで、メーカーからもアッセンブリーは出ないそうです。でもこちらのお店ではオーバーホール済みのECUを手配する術が出来たそうで、この個体もそのECUに替えているそうです。

ワタナベ コンデンサーの液漏れって、今もそうだけど、これから先も平成前後の名車たちにどんどん増えるトラブルだろうね。

ウエダ しかし今日京都まで乗ってきた最新のLSも、ちょっとこの10系の頃の丸い乗り心地を取り戻しつつあるんじゃないですか?

アライ それ、俺も思ったよ。現行の初期モノは全然硬い感じだった。

ワタナベ すでに2回はランニングチェンジが入ってて、最新バージョンはランフラット・タイヤの構造も改めたりして乗り心地の改善を図ってるみたい。時代や周辺環境は変われど、LSに求められるものって10系に帰結するのかもしれないね。

ウエダ 時代もそっちに寄っていってる感じ、しますしね。

アライ 自動運転なんて話になるとセルシオ・ライドの天下が再びやってくるかもしれませんよ。

話す人=渡辺敏史(まとめも)+新井一樹+上田純一郎(ともにENGINE編集部)
写真=阿部昌也 協力=なるき屋(京都府京都市南区久世築山町24-1)

(ENGINE2020年4月号を一部加筆、再編集) 

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