ENGINE WEB

CAR 2020.2.13 

【ガレージ取材】ランボルギーニ・カウンタックとプジョー207SW スーパーカー世代の2台持ち 

スーパーカー世代にとってのスーパースター、ランボルギーニ・カウンタックを30年ずっと大事にしている小嶋博行さんは、乗らないときもクルマと会話する。

カウンタックと30年

小嶋博行さんと美和さんは、ご主人がランボルギーニ・カウンタック25thアニバーサリー、奥さんがプジョー207SWを所有している仲むつまじい2台持ちの夫婦。カウンタックを持っているというだけで博行さんのエンスー度は知れるが、驚くべきは、 29歳のときに新車で購入したカウンタックを30年近く経ったいまも愛用し続けているところにある。

「スーパーカーブームまっただなかの世代で、スーパーカー=カウンタックというイメージは子供の頃から持っていました」。そんな博行さん、18歳のころにトヨタ・セリカ・リフトバックの2000STを購入すると、ご両親が金属加工業を営んでいたこともあって自分でサスペンション・スプリングを切って車高を落とすなどの改造に励んでいた。

あるとき違法改造で反則切符を切られると「そんなことなら最初から背の低いクルマを買えばいい」と一念発起。縁あって金属ボディに変わった直後のフェラーリ308GTBを手に入れる。それが25歳のときのことだったそうだ。

博行さんのご実家が資産家で、若い頃から湯水のようにお金を使っていたと思われるかもしれないが、ご本人は謙遜してか「そうではありません」と否定する。「僕は実家で働く職人で、給料をコツコツと貯金してフェラーリを買いました」

この308GTBは快調でスーパーカーの魅力を存分に味わったという。やがて、周囲のフェラーリ好きに「いつかは12気筒」と背中を押されてテスタロッサを購入する。ところが、こちらは少々いわく付きのクルマだったらしい。

「ギアボックス の調子がよくありませんでした。しかも走行3000kmと聞いていたのが実際は3万kmだったり、名義変更に手こずったりしたせいで、クルマへの思いも次第に冷めていったんです」

愛車を運転する小嶋博行さん。家業が金属加工業ということもあって、ドアのダンパーやマフラーの交換は自分で行ったという。「このクルマ専用の工具なんかも自分で作りました」。
小嶋さんが最も気に入っているのは7連メーター。
ミドに搭載される5.2リッターV12は最高出力455ps/7000rpm、最大トルク51.0kgm/5200rpmを発生する。
ランボルギーニ・カウンタック25thアニバーサリーは1988年にランボルギーニ創立25周年モデルとして発表された。カウンタックの最終モデルとして1990年までに657台が生産された。小嶋さんの1台は内外装ともに新車と見紛うばかりの輝きを放っている。地を這うようなフォルムで全高はわずか1070mm。

自動車雑誌のカウンタック

そんなとき、自動車雑誌で新車のカウンタックを販売する広告を目にする。それが、バブルの弾けた直後の1991年のことだった。

「最初に見たときの値段は5980万円でしたが、月を追うごとに値段が下がっていました。その様子を見ていて『自分には高くて絶対に買えない』と思っていた新車のカウンタックが『もしかしたら買えるかもしれない』と思い始めたんです。それで、広告を出していた岐阜県大垣のショップに電話を入れたら、たまたまテスタロッサを探しているお客さんがいるということで、好条件で下取りしてもらえることになりました」

このときカウンタックの価格は2380万円。テスタロッサの下取り価格は1500万円で、差額の880万円を実家から借りて運命のカウンタックを手に入れたという。

「大垣まではテスタロッサで行きました。最後のドライブということで、東名高速はちょっと飛ばしたんですが、どうもクルマが安定しない。ところが、帰り道にカウンタックで走るとピターッとクルマが落ち着いていて、気がつけばテスタロッサよりもスピードが出ていたくらい。とにかくいいクルマで驚きました」

私もその助手席に乗せてもらったが、内外装が新車同様の美しさを保っているだけでなく、ボディ剛性が高くサスペンションの動きが的確なことには大いに驚かされた。最終モデルのアニバーサリーは、クルマとしての完成度がデビュー当時のモデルより高かったことにくわえ、走行距離が1万4000kmほどと短く、博行さんがクルマを大切に扱ってきたことなどが幸いしている。

「普段カウンタックは工場のなかに保管しています。工場内には金属粉が飛び散ったりするので、ボディにはタオルケットをかけています。また、雨の日は走らせません」

大きなトラブルは1度もなく、長期入院もエアコン周りの修理で3カ月ほど入庫した1度だけという。「職人ですからね(笑)、跳ね上げ式ドアのダンパーぐらいは自分で取り替えます。昨年の6月には家内と修善寺までドライブに出かけました」帰り道に美和さんは助手席で居眠りしたそうだが、カウンタックが想像以上に快適なことと、ドライバーの腕かもしれない。

真紅のプジョー207SWは小嶋美和さんが選んだ。タンの内装がステキだったのが一番の理由だという。カウンタックの室内から乗り換えると、明るく解放的な雰囲気に癒される。
プジョー207SWをドライブする小嶋美和さん。
ゴルフが趣味でゴルフバッグが乗せられるクルマが絶対条件だった。ちなみにご主人の博行さんはゴルフをやらない。

真っ赤なプジョー

いっぽう、207SWは4年ほど前に認定中古車として購入した。「私はゴルフが好きなので、ゴルフバッグがいくつか積めて安全に走れればなんでもよかったんです」と美和さんはおっしゃるが、どうやらプジョーというブランド、207SWのチャーミングなスタイリング、そして赤のボディ・カラーとタン・ザーの内装という組み合わせに魅了されたようだ。

「普段は近所に買い物へ出かけたり、 子供の送り迎えに使っている程度です。小回りもよく利きますし、とても気に入っています」と美和さんが言えば、「私はプジョーってまったく関心なかったんですが、乗ってみると意外にもしっかりした足回りで 退屈しません」と博行さんが付け加えるといった具合で、夫婦で207SWを愛用されている様子だ。

「30年間、乗り続けているカウンタックのほかに、もうひとつ追いかけ続けているのが矢沢永吉さんです。もう、学生の頃からの大ファン」と言う博行さん。何ごとにも一途なタイプなのである。

「カウンタック・リバース(サイドシルに腰掛けてクルマを後退させる、カウンタック乗りには必要不可欠なテクニック)という後退技術があるんですけど、五十肩を患ったときに、ギアを入れられないことがありました。これはまずいと思って、インナ ーマッスルを鍛える本なんか買ったりして(笑)。おかげさまで、いまは大丈夫です」と言う博行さん。

とはいえ、カウンタックはそう頻繁に乗り出すことができない。「工場内のシャッターをちょっと持ち上げましてね、タオルケットを羽織ったカウンタックと会話するんです」と、博行さん。

「えーっ!そんなことしてるの?知らなかった!」。大笑いする美和さんに、目を細める博行さん。

矢沢永吉は"時間よ止まれ"と歌ったけれど、博行さんの美和さんとカウンタックへの愛情も色あせない。

カウンタックの全高1070mmに対し、207SWは1535mm。エッジの立ったカウンタックと並べると、コロンとした丸いフォルムがより強調される。

文=大谷達也 写真=望月浩彦

総合アクセスランキング

最新の人気記事

CAR トップへ