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CAR 2020.2.18 

【オーナー取材】これ以外、考えられない 2台のシトロエンXMを使い分けるカメラマン 

かつて愛したクルマを、もう1回乗りたい、と再度購入するクルマ好きはけっこういる。でも、さすがにそれが3台目、4台目ともなると、相当の好き者である。しかも2台を同時所有し、使い分けているとなると……。

2台のシトロエンXMは、いずれもブルーの個体の傍に立つ岡村智明さんが所有する。彼のクルマはこの2台のXMだけ。付け加えれば、これが岡村さんにとって1台目と2台目のXMではなく、ブルーが3台目、シルバーが4台目になる。

ここまで読んだだけで尋常ならざる方だと感じるかもしれない。しかし岡村さんは、運転免許取り立ての頃からハイドロ・シトロエンにどっぷりだったわけではない。

学生時代にまず乗り始めたのはモーターサイクル。現在の仕事であるカメラマンを目指して写真学校に通い、晴れて独立してからも、当初はシートにカメラバッグや三脚をくくりつけて現場に通う日々だった。機材が多くなったことから、今から20年前にクルマを買うことになるが、最初に選んだのはデウ(大宇)マティスだった。

覚えている人もいるだろう、軽自動車に近いサイズの、丸いヘッドランプが特徴のコンパクト・カーだ。つまりここまではハイドロとはまったく無縁のカー・ライフを送っていた。「マティスはトラブルもなく、忠実に仕事の足となってくれました。ただ年間で数万㎞走るほど長距離移動が多くなってきて、800㏄のコンパクト・カーでは辛くなってきました。そこで以前、カーグラフィックで小林彰太郎さんが長期テストをしていたエグザンティアに乗り換えたのです」

それまでシトロエンに触れたこともなかった人をオーナーにしてしまう。小林彰太郎さんの文章力の素晴らしさをあらためて教えられる。すでにエグザンティアは販売を終了しC5にスイッチしていたので、狙いは当然中古車。少し前までシトロエンを扱っていたマツダのディーラーにあったブレークの中古車を手に入れ、岡村さんのシトロエン・ライフがスタートした。

「それまで乗っていたマティスとは快適性が段違い、乗ったことはないですがトヨタ・センチュリーみたいだと思いましたね。東京から実家のある神戸まで楽勝で行けました」

XMを連続4台購入

ところがもうすぐ2年、8万㎞を走破というときに、街でグリーンのXMを見かけて一目惚れ。すぐに中古車探しが始まり、2003年に京都で、シルバーの1995年型を見つけ、熟考のうえ決断した。

しかし前述のように、岡村さんは仕事で毎日のようにクルマに乗る。購入時には4.8万㎞だった走行距離はぐんぐん上乗せされ、ドライブシャフトの交換、エアコンの修理などトラブルにも見舞われるようになったことで、そろそろ潮時かと見極め、12万㎞を迎えたときに乗り換えを決意する。でも、XM以外にすることは考えなかった。

2006年、再び京都でXMに憧れたきっかけになったグリーンの1998年型を見つけた。オドメーターの数字はすでに5万㎞を刻んでいたが、年間数万㎞を走破する岡村さんにとって問題にする数字ではない。

付き合い方がわかってきたこともあり、途中でATが壊れたものの、それ以外に大きなトラブルには遭遇せず、車歴の中でいちばん長く乗った。手放す際には実に32万㎞をマークしていたという。日本一距離を刻んだXMではないだろうか。

この次が現在も所有するブルーの1998年型だ。クルマはまたも京都にあった。2012年の購入時に6万㎞だったオドメーターは、現在18万㎞に達している。そしてこの3台目を所有したまま、3年前に4台目となるシルバーの1992年型を大阪で購入した。つまり初の2台体制になった。

「これまでの経験から、3台目もいつかはダメになることはわかっています。これまでは乗り続けるのが難しくなったタイミングで次にスイッチしていましたが、たまたま格安の駐車場が見つかったので、増車に踏み切りました」

ちなみにこの4台目、所有したXMの中で唯一の並行輸入車で、これまでの3台はすべて3ℓV型6気筒エンジンと4段ATのコンビだったのに対し、エグザンティアと基本的に同じ2ℓ直列4気筒に5段MTを組み合わせている。同じ4気筒のディーゼルともども、ヨーロッパではポピュラーだった仕様だ。

「見た目はほぼ同じですが中身がまったく違うので、乗り比べると別のクルマみたいに感じます。力はないけれど身のこなしは驚くほど軽快。シートの座り心地を含めてエグザンティアを思い出します」

こうなるとその日の気分に合わせて使い分けるようなシーンが思い浮かぶが、岡村さんの乗り方は理性的で、整備や修理に入っているときを除けば基本的に中10日で入れ替えているという。クルマは使っていたほうが調子がいいという経験が、このようなローテーションに行き着いたのかもしれない。とはいえもっとも最近手に入れた4台目も購入時5.6万㎞だった距離はすでに10万㎞に達しているから、日本人の感覚からすれば驚くべきハイペースだ。

オリジナル・デザインにこだわる

ところで3台目は、XMにくわしい人であれば、年式から言えば後期型なのに前期型のような見た目であることに気づいたかもしれない。そのとおり、岡村さんは歴代XMの中でも、グリルのダブル・シェブロンがオフセットし、リア・スポイラーがウイング・タイプのオリジナル・デザインがいちばんのお気に入りで、グリル、ステアリング、リアゲート、ホイールなどを変えてあるのだ。フロント・フェンダーのバッジまで交換するという念の入れようである。

XMは前期・中期・後期型に分けられる。中期型でフロント・グリルのダブル・シェブロンが中央に移り、リア・スポイラーがリップ・タイプに。後期型ではV6エンジンが90度SOHCから60度DOHCに換装している。

インテリアではインパネが前期から中期で一新。下のブルーの後期型モデルと見比べると、シルバーの前期型はセンター・コンソール部分こそ共通だが、ずっとデザインがシンプルなのがよく分かる。

ブルーのV6は後期型だが岡村さんの好みでステアリング・ホイールを4本タイプのエアバッグ内蔵型から前期型のシングル・スポーク型に変更。

シルバーの前期型。

ブルーの後期型。前後席も、本来はドア内張と同じベージュの革仕様なのだが、前期型のファブリックのものと付け替えた。

時代を感じさせる粗い液晶の表示は英語または仏語を任意に選択できる。ブルーのV6は英語だが、シルバーの前期型は並行輸入車らしさを楽しむため仏語に設定している。

パーツについては自身で築いたヨーロッパとのつながりが役に立っているという。写真共有コミュニティ・サイト、フリッカーでXMのオーナーズ・クラブに入っているオランダのデザイナーと知り合い、交流が始まったことが大きい。4台目に付いている、正規輸入車では見られないホイール・キャップもオランダで仕入れたものだ。

オランダとの関係はパーツに留まらない。岡村さんは彼らの会報誌に取り上げられた経験があり、昨年フランスで開催されたシトロエン100周年記念イベントも、オランダのシトロエン好きたちといっしょに見に行ったそうだ。

話を伺いながら思ったのは、他のハイドロ・シトロエンに興味はないのかということ。さすがにDSやCXを年間数万㎞をこなすカメラマンの足とするのは酷だけれど、XMも生産終了から20年が経過している。2005年に次世代フラッグシップとしてC6をリリースしており、愛好家からはXMに劣らぬ評価を受けている。

「ただC6は自分にとっては大人すぎると感じています。もう1台持つならBXですね。この時代のデザインが特に好きなのかもしれません。近所の知り合いが足として使っているのを知っているので、まだ実用になると思っています」

シトロエン以外への浮気は考えにないようだ。4台目では早朝に秋田を出発し、日中に千葉で撮影というスケジュールもあったそうだが、その撮影をごく普通にこなせたのはXMだからこそと強調していた。

これは僕も同感できるところ。シトロエンでの移動は、作り手から快適性の理屈や説教を聞かされ続けるような類ではなく、純粋に安楽極まる世界を提供してくれる。だから渋滞続きの長旅から帰ってきても、家に帰った直後から、普段どおりの生活を始めることができる。

しかもXMには、シトロエンとベルトーネのコラボの集大成と言えるデザインがある。フラッグシップこそ先進であれという両者のメッセージが最良の形で融合している。この世界にこだわるなら、XM愛を貫くしかない。「XMに乗れる間は乗り続けたい」という岡村さんの言葉には、強烈な説得力があった。

フラッグシップ・シトロエンとして初めてハッチバックを採用したXM。荷室と後席を仕切る2枚目のリア・ウインドウを備える。

V6も収まるエンジン・ルームは4気筒には余裕たっぷり。

岡村さんの写真が採用されたオランダのXMクラブが年4回発行する会報と、彼が手がけたシトロエン100周年記念の写真集。

2つのジオラマは建設機械のスケールモデルショップのオーナーとして知られ、自身もC6を所有するケンクラフト高石氏からのプレゼント。カメラを手に立つのは岡村さん自身だ。XMとBXが並んでいる方は近未来の彼のカー・ライフを具現化したものだという。

文=森口将之 写真=阿部昌也

(ENGINE2020年3月号)

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