ENGINE WEB

CAR 2020.3.29 

【ガレージ取材】あこがれに乗る! 日本のスポーツカーとドイツの実用車 名車2台持ち 

"オーバー・クオリティのメルセデス"とも言われる124型ワゴンと、ホンダが当時の技術を全投入したスポーツカー、NSXの2台には、オーナーの30年間の思いが詰まっている。

VTECの咆哮

クゥオオオオ~ン! 4000rpmを超えると3リッターV6は明らかに表情を変える。レヴリミットは8000rpm。タコメーターの針はスムーズに上昇し「ああ、やっぱり自然吸気はいいなあ! VTEC最高!」と、ひとりごつ。私はホンダNSX(1991年式)で常磐道を走っている。アルミ・ボディは艶々で新車みたいだ。このNSXのオーナーは前を行くエメラルド・グリーンのメルセデス・ベンツE320ワゴン(1994年式)を運転する原田孝之さん。原田さんが所有するこの2台を撮影するために、原田さんが会員になっているゴルフ場へ向かっている。

原田さんは私が担当する本誌・長期リポート車、メルセデス・ベンツ300TE(1992年式)の走行イベントに来ていただき、それ以来お互いにクルマの調子などをメールするようになった。食事やツーリングにも行った。そんな原田さんが初代ホンダNSXを買ったというので、2台持ち企画にご登場いただいたのである。

それにしても原田さんが運転するメルセデス・ベンツE320は加速が良く、走りがキビキビしている。こんなに速かったっけ?同じ124型ステーションワゴンに乗る私には信じられないパフォーマンスだ。ダラダラ走ったのでは、私がNSXを楽しめないと思っているのだろう。原田さんが気遣いの人なのは、何度か会っているので間違いない。ゴルフ場が撮影許可を出したのも原田さんの人柄あってのことだ。

初めてのベンツ

ゴルフ場に2台を並べて撮影する。どちらも新車のように輝いていることに改めて驚く。

「ベンツは小学生だった頃からの憧れでした。近所にW123型の560Eに乗っているおじさんがいて、よく見に行きました(笑)」

原田さんが初めてメルセデス・ベンツを買ったのは2003年。1992年式260Eセダン(W124)だった。撮影中のワゴンは、セダンからの乗り換えだという。

「免許を取ってから、ずっとガイシャが欲しかったんですけど、壊れるから無理だと思っていました。すると、300Eに乗る友人が"W124のベンツなら大丈夫。これこそベンツのなかのベンツなんだ"と言うんです。ワゴンが欲しかったんですけど、過走行のものが多くてセダンにしました」

徳島からフェリーで運ばれて来る初めてのベンツを東京・有明埠頭まで取りに行った原田さん。ガッチリとしたボディと、乗り心地の良さに驚いたという。

「これがベンツかあ!という感じでした(笑)。どっしりと落ち着いた走行フィールに感動したのを覚えています。高速安定性に舌を巻きました。それに友人が言った通り、壊れなかったんです」

260Eですっかり124型メルセデス・ベンツに魅了された原田さんが、現在のワゴンに乗り換えたのは2011年のことだった。

「とても気に入っています。後姿が好きです。ファブリックのシートも掛け心地が最高ですね。しかも経年劣化がほとんどない。レザーはどうしてもヒビ割れが発生しますから」

原田さんのメルセデス・ベンツE320ワゴンは右ハンドル。ファブリック・シートを始め、インテリアは外観同様に綺麗だ。購入後に手を入れたのはオーディオだけだという。

趣味のゴルフバッグを難なく飲み込む広い荷室も気に入っている。現在12万8500㎞。

衝撃のNSX

一方、漆黒のNSXは2019年8月に買ったばかり。NSXも2台目だという。

「2001年に憧れのスポーツカーだったホンダS2000を買ったんです。それが縁で2004年、栃木のホンダ高根沢工場の閉鎖イベントに参加しました。S2000だけでなく、たくさんのNSXが集まっていて、欲しい気持ちが昂りました」

翌2005年、グリーンに輝くNSX(1991年式)を買った原田さん。

「友人が手放すと言うんです。もうここで買わなきゃ一生買えないと思って、清水の舞台から飛び降りました。乗ったら、インパクトありすぎでしたね(笑)。視線は低い、ハンドルは重い、加速は凄いで」

名声高き国産スポーツカーを手に入れ、E320ワゴンとの2台持ちライフを楽しんでいると、NSXの仲間から"大事にしてくれるならオレのを譲ってもいい"と言われた。「アライさんも運転したからわかると思うんですけど、新車みたいなNSXなんです。しかも、名医と呼ばれる若いメカニックがずっと面倒を見ていた1台で、それに乗り換えれば、その名医も付いてくるという特典があり、買い替えを決心しました」

原田さんがメルセデス・ベンツとホンダNSXを買った経緯のなかには、必ず"知人"や"友人"が登場し、その人たちがクルマ購入の引き金になっている。原田さんの人脈の広さが、いまの2台持ち生活を作っているようだ。

「それは本当に感謝しています。憧れのクルマ2台を手に入れることが出来たのは、みなさんのおかげです。とりわけ、そんな我が儘をわかってくれた家内には大感謝ですね」

メルセデス・ベンツが1994年式、ホンダNSXが1991年式、いわゆるネオ・クラシックと呼ばれるクルマが好きな理由を聞いた。「124型のメルセデス・ベンツは、"最善か無か"の社是に貫かれていて、当時のメルセデス・ベンツの技術の結晶だと思います。NSXにも当時、日本で最高のスポーツカーを作ろうという開発者たちの志を感じます。わかったようなことを言わせていただくと、マーケティングありきで出来たクルマではないと。それと、やはり憧れですね。当時、高くて手が出せなかったクルマが中古になったこと、さらに自分も年齢を重ねたことで、両方が寄ってきた。30年かけてやっと憧れのクルマに乗れたという感じです」

トラブルはないですか?

「2019年9月、E320ワゴンでお伊勢参りに行ったんです。現地でアクセル・アクチュエーターが壊れて動けなくなりました。部品がなかなか見つからず、実は長期入院していたんです」

工場に引き取りに行ったとき、相棒の復活に涙したという原田さん。気遣いの人、原田さんの下ならネオ・クラシック2台も幸せに暮らせるだろう。

明るく開放的な初代ホンダNSXの室内。

3リッター水冷90度V6は最高出力280ps/7300rpm、最大トルク30.0kgm/5300rpmを発生、5段MTを介し、1350㎏のボディを活発に加速させる。

前オーナーがジャーナリスト、清水和夫氏と懇意だった証のステッカー。

サブ・フレームとカーボン製レカロ・シートはNSXタイプRから移植されている。

文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正 撮影協力=龍ヶ崎カントリー倶楽部

総合アクセスランキング

最新の人気記事

CAR トップへ