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CAR 2020.1.19 

乗るならどれ? アストンマーティン、ベントレー、BMW 4000万の高級オープンカーに試乗 

齋藤 2019年にもさまざまなクルマが登場したわけだけれど、ここに登場するのは、4座の高級コンバーティブル3台。いずれも耐候性に優れた多層構造の幌を備えた、クラシカルなスタイルを打ち出したオープンカーです。アストン・マーティンDBSスーパーレッジェーラ・ヴォランテ、ベントレー・コンチネンタルGTコンバーティブル、BMW・M850i・xDriveカブリオレがその3台。下世話な話になるけれど、いずれも高価で、安いBMWでも税込車両価格は1873万円もする。ベントレーは素の仕様だと2831万7600円だけれど、これは導入初期のファースト・エディションで、それに加えて高級オーディオなども加わって、税込車両価格は総額3677万9300円に達する。アストン・マーティンにいたっては素の状態で3796万円。BMWの価格が可愛らしく思える。

新井 BMWはV8ツインターボの4WD、ベントレーはW12ツインターボの4WD、アストンはV12ツインターボのRWDですね。

齋藤 後席スペースはいずれも+2的扱いではあるけれど、使えないそれではなくて、4座といって差し支えないものになっている。

新井 というところがあらましです。

齋藤 で、こうして軽井沢までを往復してみた、どんなことを感じた?

Aston Martin DBS Superleggera Volante

パッと見には、いつもの"アストン・マーティン"がそこにあるだけのDBSスーパーレッジェーラ・ヴォランテだが、仕立てはさすがに上質で、伊達に高い正札を下げているのではないことがわかる。空調などの操作部はタッチ・パネル式。
後席は膝前空間こそミニマムなそれだが、4名の大人が座れる空間が確保されている。
特別な軽量構造を採用していることを示すスーパーレッジェーラのロゴ・エンブレムがエンジン・フードのエア・アウトレットの脇に添えられている。
前ヒンジで大きく開くフロント・カウルを開けると、それこそレーシングカーもかくやの構造が目の前に現れる。5.2ℓV12ツインターボ過給エンジンの出力はリアに置かれたトランスアクスル(AT)に送られる。重量配分はほぼ50対50。サスペンション・システムなどは見るだけで本気ぶりが伝わってくる。

クルマは国が作る、文化が作る

新井 こんなことをいうと不謹慎かもしれないけれど、アストンやベントレーと一緒に接すると、BMWって8シリーズといえども普通のクルマなんだなぁと思いましたよ。

齋藤 8シリーズのなかでは現時点で最も高性能で最も高価なのがM850iなのにね。アストンとベントレーの別格感はさすがに凄かった。ノーズのなかに押し込んだ大排気量のV12にターボ過給を施して後輪もしくは4輪を駆動する。4座とはいえ、実際には1人か2人で乗るにすぎないクルマを600㎰オーバー、700㎰オーバーの出力を秘めた12気筒エンジンで走らせる。しかも、これはオープンカーだから、スピード命のスタイルではないわけだよね。贅沢の極み。内外装の仕立てにしても量産車の域を遥かに超えている。遠く1930年代に隆盛を極めた世界がタイムマシンで今に蘇ったのかと思うような内容のクルマだもの。

荒井 BMWには貴族の匂いがない。

齋藤 アストンとベントレーはどちらも、いかにも階級社会が生んだクルマという雰囲気が漂っている。

荒井 ファースト・エディションでなくてもこの感じは保たれるの?

齋藤 大きく変わらないはずですよ。

荒井 詳しくない人が見たら、高級なのはベントレーだって思うよね。

新井 やんごとなき人が乗るものだって思うでしょう、これを見たら。

齋藤 この個体はオプションで幌屋根がツイード仕立てになってるし。普通の感覚でも思いつかないものになっているよね。で、思った。ドイツも日本と同じように敗戦国なんだなぁと。どっちも戦後、社会の在りようが激変した国だよね。階級社会がほぼ完全に葬り去られて、灰のなかから工業立国として蘇った。ドイツのクルマで戦前を彷彿させるようなものといったら、いまはもうないメルセデス・ベンツの600プルマンぐらいでしょう。わが世の春を満喫するプレミアム系御三家だって、戦後社会のなかでの開かれた高級を体現するにとどまっている。

荒井 国のありようであったり文化と言われるものがクルマを作るんだなぁって、今回つくづく思ったよ。

齋藤 ドイツが自動車生産超大国になっても、アストン・マーティンやベントレー、あるいはロールス・ロイスのようなものって作れないんだね。機械工学だけでは作れないクルマだから。でね、面白いのはベントレーもロールス・ロイスも親会社はいまやそのドイツの自動車メーカーだということだよね。そういうものは機械工学だけでは作りえないことによくよく自覚的でないと、こうしたパトロン的関係を作ることはできないよね。もちろん、VWにしてもBMWにしてもこれら英国高級ブランドを買収した時期に陣頭指揮をとっていたのが、類稀な目利きで自動車というものについて並外れた見識のある人間だったという時の恵みがあったにしてもさ。結果、彼らの自動車機械工学が下支えする結果になったわけだからね。ベントレーもロールス・ロイスもだからこそ生き長らえて、今がある。

新井 アストン・マーティンにしても、いまあるようなかたちでのアストン・マーティンとして再生したのはフォード傘下にあった時代ですよね。

荒井 こうした英国の高級車に乗ると、世界を動かしているのはヨーロッパのほんとうの上流社会に暮らす人たちなんだなぁって思わされる。でね、僕らはそうした世界に接する機会すらないわけだよね。無縁なところで生きている。ところがさ、クルマではその世界を垣間見ることができるわけだよね。そういう意味じゃ、とても幸せなことだよね。

齋藤 クルマ世界がさ、やれ二酸化炭素排出削減だ、できないんだったら電動化だ、事故死者数を減らせだ、そのためには自動運転導入だと、社会悪の象徴みたいに槍玉に上がっているこの激動の時代に、こうした古い世界を今に伝える超高級車が最先端の技術に支えられて生き長らえている。それを許容する社会がある。

Bentley Continental GT Convertible

実用車のそれとは別世界が眼前に広がるベントレー・コンチネンタルGTコンバーティブル(ファースト・エディション)のインテリア。古典を今に伝える意匠の裏側にあるのは最先端技術。
センターコンソール上部のパネルはこのように突き板仕上げのフラット・パネルだが、クルリと回転してサブ・メーターを表示するほか、大型液晶を使ったナビ画面とすることもできる。
フル4座とよぶに相応しい居住スペースを備えるベントレー。内装に使われる表皮素材は真に最高級のそれ。これをオープンにして走るのだから、贅沢の極みというほかない。
72度W型12気筒ツインターボ過給エンジンが一分の隙もなく押し込まれたエンジン・ベイ。新型プラットフォームの恩恵は大きく、12気筒ユニット+大容量変速機の重さをほとんど意識させなくなった。これぞ技術の進歩。

それぞれが我が道を行く

荒井 そして乗るとこれがまた、うっとりするほかない。例えばベントレー。車両制御プログラムに用意されているあのベントレー・モードの素晴らしさ。コンフォートもスポーツも要らないんじゃないのって思う。

新井 クーペのGTスピードとかじゃないですからね。

齋藤 まったりと重厚で、きめ細やかで滑らか。まるで路面が良くなったかのように感じる恭しい乗り心地。いやぁ贅沢だなぁとうっとりする。オープンにすると、人は自然に快適な速度に収めようとするから、なおさらゆったりとした時間が流れるようになる。その時のあの空間全体の上質な感じといったらない。

新井 そしてアストン・マーティン。

齋藤 ドアを開けて乗り込むと、いつものアストン・マーティンの世界がそこにある。DBSスーパーレッジェーラだからといって取り立てて大きな違いがあるわけじゃない。運転席に座っただけでは特別感があるわけじゃない。ただただアストン。

新井 でも走らせると、歴然。

齋藤 725㎰を搾り出すV12ツインターボの性格も、あのいかにもブッシュに頼っていないような、まるでレーシングカーを連想させる脚の感触。特別感の塊。新井ランボルギーニでいえばアヴェンタドールのような別物感、別格感、横溢ですよ。走る機械としての実態は、これぞスーパーカーというものになっている。2+2のコンバーティブルだから、高級車寄りの仕立てになっているのかと思ったらさにあらず。ビックリする。

荒井 完全にスーパースポーツのそれだよね。クルマ全体の動きが。

齋藤 競走馬という意味でのサラブレッド。ほとんどレーシングカー的。

新井 アストン・マーティンに高級車的な上質感を求めるのなら、DB11でとめておかないと、その硬派ぶりに仰天することになりかねない。

齋藤 そういう類のクルマをお求めなら、ベントレーかロールス・ロイスをお求め下さいっていうスタンスがはっきりしている。これはアストン・マーティンですから、とね。

荒井 うかつにはスロットル開けられないもの。少なくとも身体鍛えてドライビング・スキルぐらい研いておいて下さいっていう主張が明確。

齋藤 007を思い出したよ。

新井 そこへいくと、ハイテクの限りを尽くして誰にでも速さの引き出せるBMWにホッとすると同時に、その機械技術力の高さにしみじみと感心することになるんですよねぇ。
齋藤 ヴィークル・ダイナミクスを拡張するために使われている4WDや4WSの完成度の高さが抜群。運転好きが受け入れることのできる本当の意味での運転支援装置になっている。先進技術部門でのBMWのリードって確実にあると思う。

新井 4WSも完全に手の内にした感じです。存在を忘れていられる。

荒井 3台ともそのメーカーならではの個性が濃厚に感じられた。そこがなんといってもいちばん興味深くて面白かった。クルマは楽しいよ。

BMW M850i xDrive Cabriolet 

BMWのなかでは最上級クラスの仕立てが施されているM850ixDriveカブリオレの室内。造形は新世代BMW一流のそれ。各部操作系のロジックは1から8シリーズまですべて基本を一にする。
シフト・セレクターの中に表示を忍ばせるなど、洒落っけも見せているが、BMW流を崩す部分は一切ない。そこにBMWのクルマ作りの頑固なまでの哲学を見る思いがする。
このクルマもまたフル4座に近い居住性を備えている。オープンにした状態でのエアフローの管理もさすがのものだ。幌を閉じてしまえばクーペのM850iになんら遜色ないヴィークル・ダイナミクスを見せるところも凄い。容易に引き出せる速さということで言えば、この3台のなかでこのクルマが随一だ。電子制御を駆使した4WDや4WSの完成度の高さは、BMWの面目躍如の感がある。

話す人=荒井寿彦+新井一樹+齋藤浩之(すべてENGINE編集部) 写真=郡 大二郎 撮影協力=鬼押出し浅間園浅間火山博物館

■アストン・マーティンDBS スーパーレッジェーラ・ヴォランテ

駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4715×1970×1295㎜
ホイールベース    2805㎜
トレッド 前/後 1665/1645㎜
車両重量 1863㎏
エンジン形式 V型12気筒DOHC 48Vツインターボ過給
総排気量 5204㏄
ボア×ストローク 89.0×69.7㎜
最高出力 725㎰/6500rpm
最大トルク 91.7kgm/1800-5000rpm
変速機    リア配置8段AT
サスペンション 前/後    ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ 前後    通気冷却式ディスク:CCMC
タイヤ 前後 265/35ZR21 305/30ZR21
車両価格(10%税込) 3796万円

■ベントレー コンチネンタルGT コンパーティブル

駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動 
全長×全幅×全高 4880×1964×1399㎜ 
ホイールベース    2850㎜ 
トレッド 前/後 1671/1664㎜ 
車両重量 2450㎏ 
エンジン形式 V型12気筒DOHC 48V直噴ツインターボ過給 
総排気量 5950㏄ 
ボア×ストローク 84.0×89.5㎜ 
最高出力 635㎰/6000rpm
最大トルク 91.7kgm/1350-4500rpm
変速機    8段AT 
サスペンション 前/後    マルチリンク/マルチリンク 
ブレーキ 前後    通気冷却式ディスク 
タイヤ 前後 265/40ZR21 305/35ZR21 
車両価格(10%税込) 2831万7600円

■BMW M850i xDrive カブリオレ

駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動  
全長×全幅×全高 4855×1900×1345㎜  
ホイールベース    2820㎜  
トレッド 前/後 1628/1641㎜  
車両重量 1990㎏  
エンジン形式 V型8気筒DOHC 32V直噴ツインターボ過給  
総排気量 4394㏄  
ボア×ストローク 89.0×88.3㎜  
最高出力 530㎰/5500rpm 
最大トルク 76.5kgm/1800-4600rpm 
変速機    8段AT 
サスペンション 前/後    マルチリンク/マルチリンク 
ブレーキ 前後    通気冷却式ディスク 
タイヤ 前後 245/35R20 275/30R20  
車両価格(10%税込) 1873万円

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