2020.01.13

CARS

メルセデス・ベンツのニューモデル7台にイッキ乗り! ENGINE編集長の大試乗会レポート

小はAクラスから大はGLEまで、新車攻勢を続けるメルセデス・ベンツが、みんなまとめて大試乗会を開いた。山梨県で開かれたそれに行ってきた。


今やAクラスからGLEクラスまで全部でなんと35車種、150モデルをラインナップするメルセデス・ベンツ。さすがは世界に冠たるドイツ自動車産業の雄だけのことはあるが、さすがにこれだけ車種が多くなってくると、モデルチェンジした新型車が日本に上陸してくる度に試乗会を開いていては、インポーターのサイフも広報部員たちのカラダも持たない。というような理由があったかどうかは知らないが、この数カ月に出た新型車をみんなまとめて山梨県山梨市のフルーツパークに集めて、1泊2日の大試乗会を開いたのに乗り込み、ニューモデル7台にイッキ乗りしてきた。以下は、その報告。



Mercedes-Benz GLE 400 d 4MATIC

プラットフォームを一新し、かつてMクラスと呼ばれていたとは思えないほど立派な体躯を得た新型GLE。
3リッター直6ディーゼルは330㎰/71.4kgmを発生。9段ATを介して4輪を駆動する。
全長×全幅×全高=4940×2020×1710㎜。ホイールベース=2995㎜。車重=2420㎏。車両本体価格=1109万円。


素晴らしい直6ディーゼル

最初に乗ったのは、GLE 400 d 4マチック。7年ぶりにフルモデルチェンジして、新しいモジュラー・ハイヤー・アーキテクチャーを使うようになったGLEは、大型化され7人乗りが標準化された。巨大な液晶パネルをつかったインパネをはじめ、運転席まわりのすべての操作系コンポーネントもメルセデスの最新世代のものにアップデートされており、乗り込んですぐに"おっ、これは新しい"という印象を受ける。


ただ、走り出してみると、やはりボディの大きさが気になる。米国の広大な国土ならともかく、狭い日本の、とりわけ都内の細い道に迷い込んだら、立ち往生しそうなくらいの巨大さだ。後輪操舵が欲しくなる。


エア・サスペンションを標準装備するおかげで乗り心地は抜群だが、大きさと重さのせいで、ハンドリングがいいとは言えない。そんな中でキラリと光っていたのは新しい3リッター直6ディーゼル・ターボ・エンジンだ。静かさと吹け上がりの気持ちよさは、言われなければディーゼルとは気付かないのでは、と思うくらいにガソリン・エンジンっぽい。それでいて、ディーゼルならではの太いトルクも低回転域から出ているので、使い勝手と気持ちよさの一挙両得。近年のベスト・エンジンのひとつか。



Mercedes-Benz GLC 300 4MATIC Coupé

フェイスリフトを受けフロントではクローム仕上げのアンダーガードや2本のパワードームを備えたボンネットが力強さを表現
内装ではインパネまわりのデジタル化が進行。2ℓ直4ターボは258㎰/37.7kgmを発生。9段ATを介して4輪を駆動。
リアもバンパーまわりのデザインがより力強くなったほか、テールランプにも新デザインが採用された。全長×全幅×全高=4730×1930×1600㎜。ホイールベース=2875㎜。車重=1890㎏。車両本体価格=807万円。


続いて乗ったのはGLC 300 4マチック・クーぺ。これはモデルチェンジといってもマイナーの方だから、ほぼお化粧直しだけ。実際に乗り込んでも、Cクラスのフェイスリフト時同様、メーターが液晶表示になったりはしているものの、操作系のロジックは私が乗っているフェイスリフト前のCクラスと同じだから、安心して運転することができた。乗り味もきわめてCクラスによく似ている。柔らかでコンフォートな走りからキビキビしたスポーティな走りまで、すべてを程よくこなす懐の深さがある。今回の試乗会ではあまり目立っていなかったけれど、元来のメルセデス・ベンツが持つ良さがとてもよく表れた1台だと思った。


Mercedes-Benz E 350 de

194㎰/40.8kgmを発生する2リッター直4ターボ・ディーゼルに、122㎰/44.9kgmの電気モーターを組み合わせ、システム出力は306㎰/71.4kgmというハイパフォーマンス・カー並のスペック(とりわけトルク)を誇るが、見た目はフツーのEクラスと変わらないところが、いいのか、悪いのか。トランスミッションは9段ATで後輪駆動。
全長×全幅×全高=4923×1852×1475㎜。ホイールベース=2939㎜。車重=2080㎏。車両本体価格=875万円


次はE 350 de アバンギャルド・スポーツ。日本初のクリーン・ディーゼル・プラグイン・ハイブリッド車だというのでかなり期待して乗ったのだが、残念ながらチョイ乗りした限りではその真価のほどはよくわからなかった。当然ながら、EVモードで走っていれば驚くほど静かだ。フツーに街中を走る分には、電池が保つ限りはこのまま無音で走れてしまうだろう。電気モーターでの加速性能も相当なもので、エンジンを使わずともかなりスポーティな運転ができてしまう。しかし、エンジンも使いながら走り始めると、アクセレレーターのフィールもブレーキ・フィールも、どこか人工的でモヤーッとした印象で、掴み所がない。



変わるメルセデスの象徴

実はアクセレレーターには、EV走行時にこれ以上踏み込むとエンジンを始動させなければならないことを抵抗を増やして知らせる機能や、通常走行時に先行車との車間距離などからドライバーが不要な加速操作を行なっている場合、ペダルに2回のノックパルスを発生させて知らせる機能が付いているのだという。今回、そのノックパルスを経験することはなかったが、それに加えて回生ブレーキもついているわけで、そうした様々な付加システムがあの微妙なモヤモヤ感をもたらしているのかも知れないと思った。じっくりと時間をかけて様々な場面で試乗してみないと、このクルマの評価は難しい。


Mercedes-Benz CLA 200 d

2013年発表の先代は日本で約4万台の販売を記録。デザインで選んでいる人が多かったという。それだけに今回もデザインを最優先してフルモデルチェンジし、2019年8月に発表された。200dはフロントに150㎰/32.6kgmを発生する2リッター直4ターボ・ディーゼルを横置きし、8段自動マニュアル(DCT)を介して前輪を駆動。
全長×全幅×全高=4695×1830×1430㎜。ホイールベース=2730㎜。車重=1590㎏。車両本体価格=472万円

次はCLA 200 d。これは"変わるメルセデス"の象徴のようなクルマである。なによりもデザイン優先のクルマづくりをしている上に、乗り味が元来このブランドが大切にしてきた重厚感とは正反対の、極端なまでの軽快感を売り物にしているのだ。直前に乗ったEクラスとはもちろん、その前のGLCともまるで違った方向性だ。そして、この路線が新しいメルセデス・ベンツの流れを作り出しそうな予感がある。



Mercedes-Benz A 35 4MATIC Edition 1

A35 4マチック・エディション1は限定600台の日本上陸記念モデル。フロントに306㎰/40.8kgmの2リッター直4ターボを横置きし、7段自動マニュアル(DCT)を介して4輪を駆動。
全長×全幅×全高=4455×1800×1410㎜。ホイールベース=2730㎜。車重=1570㎏。車両本体価格=743万円


Mercedes-Benz A 250 4MATIC Sedan

A250 4マチック・セダンは2リッター直4ターボで224㎰/35.7kgm。7段ATを介して4輪を駆動。
全長×全幅×全高=4560×1800×1430㎜。ホイールベース=2730㎜。車重=1580㎏。車両本体価格=485万円。

すぐ次に乗ったGクラスを飛ばして、最後に乗った2台、A 35とAクラス・セダンの話を先にここでしてしまうと、これらAクラス・ベースのシリーズはすべて、同じ軽快感をそれぞれのターゲット・ユーザーに合わせて濃度を調整しながら打ち出している。すなわち、A35は飛びきり軽快でエモーショナルな走りを指向しているし、Aクラス・セダンはCクラスのユーザーよりは少し若い層で、ひと昔前だったらCクラスにいったであろう人たちを取り込めるような適度な軽快感を見せている。どれも出来ばえは素晴らしく、走っていてとても清々しい気分になる。



Mercedes-Benz G 350 d

1979年に誕生して以来、基本スタイリングをまったく変えることなく進化してきたGクラスが、初のフルモデルチェンジを受けたのは2018年。以来、550とG63のV8モデルのみがラインナップされてきたが、2019年に待望のV6モデルが加わった。
3リッター直6ターボ・ディーゼルは286㎰/61.2kgmを発生し、9段ATを介して4輪を駆動する。
全長×全幅×全高=4660×1985×1975㎜。ホイールベース=2890㎜。車重=2500㎏。車両本体価格=1192万円

しかし、Aクラス軍団の間にG350dのようなクルマに乗ると、やっぱりこういうのがベンツだよな、と私のような旧時代の人間は思ってしまうのである。新たにGLE400dと同じ3リッター直6ディーゼルを搭載し、イッキに新型Gクラスの価格帯を下げたこのモデルはかなり魅力的だ。実際に乗ってみて、V8でなくとも、これで走行性能に何の不満もないと確信した。古いテイストを残しつつ、すべてをアップデートしたGクラスは、Aクラスとはまた別の"新しいメルセデス"の象徴だ。いずれにせよ、このブランドがいま、新時代に向けて大きな変貌を遂げようとしていることは間違いない。


文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬


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