2019.12.22

CARS

シトロエンC3エアクロス、DS3クロスバック試乗 オシャレ系SUVの最先端はフランス車!

もう泥臭いなんて言わせません!

村上 いやぁ、ほんとにSUVがここまで主流派になるなんて、誰も想像できなかった。かつてはクルマ全体のなかのひとつのカテゴリーに過ぎなかったSUVが、気がついてみればSUVのなかにサルーンがあってクーペがあってというように、カテゴリーがいくつもできている。


塩澤 クルマという宇宙のなかにSUVという銀河があると思っていたら、いつの間にかSUV自体が宇宙になっていたという感じかな。


村上 あるいはSUV銀河が、クーペ銀河とかミニバン銀河とかを吸収してしまったみたいな。いろんなジャンルを取り込んでいる。


齋藤 まるでブラックホールだ。


村上 そのなかで今回僕らが注目したいのは、オシャレなSUV。


塩澤 デザイン系と言ってもいいかもしれない。高感度な人たちが、「お、いいねぇ」と思うようなクルマを4台揃えました。そのなかの2台がフランス車だというのが面白い。しかもそれがFF。4駆の設定すらないんだからね。


村上 本来は泥臭いモノだったわけだから。クロスカントリーSUVなんて言ってた頃は、泥だらけなのが当たり前だった。それがいまや、泥臭さの対極にあるようなオシャレの対象になっている。


齋藤 4駆であることの頚木から解放されて自由になった。FFのSUVって、実は日本ではずっと前に流行ったことがある。トヨタの初代ラブ4とかホンダのCR-Vなんかには、4駆の必要がない地域のユーザー向けに廉価版としてあった。だからオシャレ系としては日本では第2波なんだけど、以前とは違った新しい波ですよ。カタチが全然違う。それに第1波のときはオシャレを意識してた人は少なかった。でも今度の波は、男性でも女性でも、センスのいい人には刺さりまくると思う。


突然変異

塩澤 というわけで、シトロエンのC3エアクロスとDS3クロスバック。どちらもこの格好は突き抜けてる。オシャレSUVをリードしているのはシトロエンとDSで間違いない。この流れの元にあるのって、実は突然変異のごとく出現したC4カクタスなんだよね。


齋藤 コンセプトカーが大好評で、量産化したらバカ受け。シトロエンはまんまと金鉱脈を掘り当てた。おかげで業績もV字回復した。


村上 日本にはあまり入ってこなかったけど、欧州ではものすごい評判だった。あれはシトロエンのデザイン革命だったのと同時に、ある意味SUVの革命でもあった。


齋藤 C4カクタスがなぜ日本にあまり入ってこなかったのかというと、エンジンが1.2ℓの自然吸気で、トランスミッションがシングル・クラッチの自動MTしかなかった。フランスならともかく、日本の交通環境では商品力不足だった。マニュアルでいいなら、本国には左ハンドルの1.2のターボとかもあったんだけどね。そういう意味ではこのC3エアクロスはC4カクタスのネガティブな部分をほとんど全部払拭しているから、商品力がないわけがない。


塩澤 エンジンは最新の3気筒の1.3のターボだし、トランスミッションも6段ATだからね。日本でもなんの問題もない。


村上 まあ、乗り味にはびっくりしたけどね。基本的に硬めなのにボヨンボヨンと揺れるんだもの。


齋藤 え、それがいいんじゃないの。


塩澤 個性的な乗り心地ではあるな。フランス車っぽいと思った。


■CITROËN C3 AIRCROSS SUV SHINE

試乗車は上級グレードのシャインで、内装やシートにオレンジの差し色が入る。シートはファブリックだが、形状も独特で洒落ている。インパネの一部にも同じファブリックが使われているのがポイントだ。カジュアルな雰囲気がいい。どれがヘッドライトなのかわからないところが愛らしい。
ヘッドライトの縁、ドア・ミラー、ルーフ・レール、リア・クォーター・ウインドウがボディと別色(オレンジ、銀、白)になる"カラー・パック" がオシャレ。

■DS3 CROSSBACK GRAND CHIC

シトロエンのダブルシェブロンを分解して再構築したようなDSのエンブレム。内装も外装もこのクロスしたエンブレムがつくり出すギザギザラインとひし形デザインがいたるところにある。豪華装備のグランド・シックは本革シートが標準で装備される。室内はC3より断然大人っぽい。
キーを持って近づくと自動的にドアハンドルがポップアップする。後席のドアパネルの形状にビックリ。こんなドアのデザインは見たことがない。
 

村上 でもデザインはやっぱりすごい。前にエンジンでフランス車の特集をしたときに、フランス車の魅力を独善と普遍というふたつの物差しを使って説明したけど、良くも悪しくも独善の部分が上手く出てるときに面白いクルマが出る。でも普遍がなくなっちゃうと独善的過ぎておかしなことになる。


塩澤 その塩梅がフランス車の一番面白いところなんだよね。


村上 C4カクタス以前のシトロエンって、やっぱり普遍寄りだったと思う。なにしろドイツ車にあらずんばクルマにあらず、なんていう時代だったから、そっちに引きずられてた部分があった。それが一気にC4カクタスで見た目的には独善の方に振り切ったんだけど、普遍でなければいけない走りの部分が弱かったのが、ここにきてそこがしっかりしてきたので、いかにもフランス車らしい、独善の方が味が濃いけど、普遍もちゃんとあるよという、いい感じの落としどころになっている。


齋藤 機械的な部分を心配する必要がなくなったというのは大きいよ。こんどの3気筒の1.3のターボって、このクラスのエンジン・オブ・ザ・イヤーを取ってるからね。デキのいいエンジンなんだよ。その上、付いてるATのトランスミッションはC3エアクロスの6段も、DS3クロスバックの8段もアイシンでしょ。なんの心配もない。


村上 それでもやっぱり本当の魅力は何かって言ったら、独善のところだよね。このリア・クオーター・ガラスの簾みたいのって何だろうね。


塩澤 この白いシマシマ?


齋藤 ああ、海の家みたいなブラインドね。あのさ、南仏とかあるから昔っからフランス車はビーチ・カーみたいなのが得意なんだよ。


塩澤 メアリだ!


齋藤 そういうこと。C4カクタスから始まった流れには、実はメアリが持っていた世界観が込められていると見るのが正解だと思う。メアリのようなSUVを現代的な解釈で再現したんだよ。


塩澤 シトロエンが元気になったおかげで、俄然DSにも勢いが出てきた気がするけど、DS3クロスバックの独善もすごいと思ったな。シトロエンがカジュアル路線で行くなら、DSは大人のシックな魅力で攻めますよ、っていう感じ。


村上 それは乗っても同じ。DS3クロスバックの方が大人の乗り味になっている。


齋藤 洗練されてますよ。都会的。


村上 シトロエンの方は古いプラット・フォームを使っているわけだけど、DSはEVも見据えた新しいプラットフォームで、先進を売り物にしている感じがする。新しいモノ感がすごくあった。


塩澤 それでいて、しっとりとしてしなやかで、フランス車のなかでも高級車が持っていた乗り味がする。


齋藤 見た目もそういう差別化がされていて、DSは色もカタチもモダ


ン・アート的。

 


塩澤 シトロエンはポップ・アート。すごいよね、あのひし形の嵐は。スイッチ類の配置も変わってる。まあ、一瞬迷うけど、慣れてしまえば問題ない。あの独特の世界観は絶対にDSでしか味わえない。


村上 DS3クロスバックの面白いところは、コンパクトなハッチバックのカタチを取り込んだところ。リア・スタイルなんかを見るとそれがほんとによくわかる。


塩澤 こうなると次は何とクロスオーバーするんだろうと楽しみになる。ホットハッチとか乗ってみたいな。




■シトロエンC3エアクロスSUVシャイン


駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4160×1765×1630㎜
ホイールベース 2605㎜
トレッド(前/後) 1515/1490㎜
車重 1310㎏
エンジン形式 直列3気筒DOHC12V直噴ターボ
排気量 1199㏄
最高出力 110ps/5500rpm
最大トルク 30.6kgm/1750rpm
トランスミッション 6段AT
サスペンション(前) ストラット
サスペンション(後) トーションビーム
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ(前後)215/50R17
車両本体価格(税込) 297万円


■DS3クロスバック・グランド・シック


駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4120×1790×1550㎜
ホイールベース 2560㎜
トレッド(前/後) 1540/1550㎜
車重 1280㎏
エンジン形式 直列3気筒DOHC12V直噴ターボ
排気量 1199㏄
最高出力 130ps/5500rpm
最大トルク 23.5kgm/1750rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ストラット
サスペンション(後) トーションビーム
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ(前後) 215/55R18
車両本体価格(税込) 411.5万円


話す人=村上 政+齋藤浩之+塩澤則浩(すべてENGINE編集部) 写真=望月浩彦



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