ENGINE WEB

CAR 2020.1.2 

【試乗記】メルセデス・ベンツ300TE(1992)との日々♯02 2008年、ENGINE編集部で124型の購入決定!

初回から読む

「100万km乗っても壊れない」、「メルセデス哲学をもった最後のメルセデス」などと形容されるちょっと前のメルセデス・ベンツ。足回りの主要パーツやエンジンのマウントなどを交換していけば、「ちょっと前のメルセデス・ベンツ」は新車同然の状態で長く使えるのか? それを検証するため本誌では長期リポート車として124型の購入を決定。自動車ライター、森 慶太さんの助言のもと、予算150万円でお宝を探す。

なぜ、現行E320CDIから92年型「124」の300TEなのか? 

1984年にデビューした中型メルセデス、124型は、足回りやエンジン・マウントのブッシュなど、消耗部品をちゃんと交換していけば、つねに新車同然のビシッとした状態で長く使えるといわれている。「オーバー・クオリティの証、最後のメルセデス」ともいわれ、中古市場でも人気が高い。

筆者はこの1年間、長期リポート車として現行メルセデス・ベンツE320CDIを担当し、実用車としての完成度の高さに深い感銘をおぼえた。本当にいいクルマだった。燃費、動力性能、快適性、実用性のどれをとっても、筆者の知る最高のクルマだった、といいたい。

ところが、巷では20年以上も前にデビューした124型こそが「メルセデスの哲学を持った最後のメルセデス」といわれている。丸目になってからはダメだという人さえいる。ちょっと前のメルセデスはそんなにいいのか? お宝を見つけて自分で試したいと思った。

124型は現在100万円台と十分に値がこなれており、それでいて実用に使えるとなればこれほど素晴らしいことはない。読者への魅力的な提案にもなる。そこで実際にこれを購入し、長期テスト車として使用してみよう、ということになった。物件探しには中古車市場にも詳しい自動車ライター、森 慶太さんに同行してもらい、助言をあおいだ。

■124とは?

1984年にデビューしたメルセデス・ベンツのミディアム・クラスのコード・ネーム。W124はセダンで、ワゴンはS124と呼ばれる。93年のマイチェンでEクラスという名称に。95年に生産終了。

前期型のステーションワゴン

東京、世田谷の「arj(エーアールジェイ)」は124好きの馬渕仁之社長が営む専門店である。お宝はここにあった。92年型の300TE。ソリッドの紺色ボディは新車のように輝いて私たちの到着を待っていた。走行距離3万4000㎞。価格は168万円だ。

「森さん! これ。工場からいまライン・オフしてきたみたいじゃない?」ちょっと興奮気味に森さんの意見を聞く。「サンルーフ付きですね。サンルーフと屋根がツラいちになっているでしょ。上物の証拠です。ヘタったモノはサンルーフのところが屋根よりちょっと落ちてたりします」

ドアを開けると染みひとつないキレイなファブリック・シートが目に飛び込んできた。「これはすごい。匂いも新車みたいじゃないですか。ファブリックはいいですよ。レザーだと経年変化でドア・ポケットのところとか、レザーが剥がれてきたりします。ブルーの布内装って日本だと人気ないんです。その分、残ってたのかもしれない。この状態でシルバー外装、黒レザーだったら入庫で即売れですよ」森さんの口調にも力が入っている。

ちょっと硬めの掛け心地のシート、ヒビ割れのないウッドパネルやダッシュボードなど、内装のどこにも16年という歳月を感じさせるものがない。自分が16年前にタイムスリップしたような感じだ。よほど大事にされてきたのだろう。荷室のフロア・カーペットも擦り切れたあとがなくキレイ。床を持ち上げると2名分のシートが登場した。この300TEは2-3-2の7人乗りなのだ。

92年型メルセデス・ベンツ300TE。168万円。新車価格は805万円。全長×全幅×全高=4765×1740×1460mm。ホイールベース=2800mm。走行距離3万4492㎞。内外装ともにピカピカ。
3mm直6SOHCは最高出力185ps/5700rpm、最大トルク26.5kgm/4400rpmを発生する。
救急セットも手付かず。
ラゲッジの床を持ち上げると2名掛けのサード・シートが出現(2-3-2の7人乗り)。3点式のシート・ベルトまで備えているのは立派。開口部が広く使いやすそうな荷室。後席は6:4の分割可倒式でダブルフォールディング機構を持つ。
前席はパワーシートで動きはスムーズだった。シートに染みヨゴレはまったくなく、クッションのヘタりも感じられない。サスペンションは前ストラット、後ろマルチリンクとなる。タイヤは195/65R15。

ちょっとなら試乗してもいいというので、森さんとarj販売部長の岡田文彦さんを乗せ出発。見切りがよい上に、小回りが利くので300TEは扱いやすい。ボディも小ぶりに感じる。路地をスイスイと抜け、環八通りにでた。

森アドバイザー、うなる。

乗り心地が素晴らしい。工事中の荒れた路面を通過しても突き上げはまったくない。ボディもしっかりしている。森さんも「う~ん。これはいい」とつぶやいた。4ATは2速発進なので加速はごく穏やか。静々と走る。ペダルは重い。3リットル直6は最高出力185ps/5700rpm、最大トルク26.5kgm/4400rpmだ。

「静かですねえ。こんな個体がまだあったんだ。ATはどうですか?」トランスミッションの変速ショックは小さく、変速もスムーズである。これは本当にいい個体かもしれないと思った。岡田部長によれば、124型でチェックするべき項目のひとつはATで、ダメになるときはまずリバースからだという。仕入れのときもまずリバースに入れて反応の遅れを調べるそうだ。反応に遅れのあるものは早晩オーバーホールが必要で費用は30万円から40万円。ただし、124型は機械式なのでこれでも安いという。電子制御式トランスミッションのオーバーホールはなんと70万円もするそうだ。

一方、ブレーキは現代のクルマからするとちょっと甘いと感じた。前オーナーがパッドをブレーキ・ダストの少ないものに換えているのだという。岡田さんの「純正品に戻して納車します」という言葉に背中を押されながら事務所に戻った。

切ないけど買いです!

「いま、あれと同じ程度のステーションワゴンを探してくれって頼んだら見つかりますか?」森さんが岡田部長に聞く。「すぐに用意できるとは絶対にいえません。上物は本当に少なくなってきました。特にワゴンは。あの個体のようなモノには年に1度出合えるかどうか。値段も上がってます。93年のマイナーチェンジでDOHCエンジンとなった後期型の上物ワゴンは250万円を超えてます」

森さんはひざを叩いた。「あれはマニアにとってはお宝物件ですよ、アライさん。明らかにずっと屋根つき車庫保管で大事にされてきた300TEが、年間5万㎞走るというアライさんにガンガン使われると思うと、ちょっと切ないけど買いです。予算はオーバーですが、ブレーキ・パッドも純正品にしてもらって168万円っていうこと自体ムシがいい。新車価格は805万円ですよ」

私も決めていた。124は「最高の実用車」なんだから使ってこそナンボだと。

これからの長期リポートを是非お楽しみに!

文=荒井寿彦(ENGINE編集部) アドバイザー=森 慶太 写真=望月浩彦

(ENGINE2008年11月号)

総合アクセスランキング

最新の人気記事

CAR トップへ