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PLAYING 2019.10.25 

ミニマリスティックな芦屋の家 気持ちのいいホワイトハウスとポルシェ・マカンを選ぶ考え方/クルマと暮らす30

まるでSF映画にでも出て来そうな、なかも外も真っ白な家。まばゆいばかりのミニマルな空間は、実はとても居心地がいい。

現代的な日本の家である

幾何学的な外観の小池孝司さん(46歳)たちの白い家は、芦屋の閑静な住宅街に建っている。もっとも、車庫スペースの背後の長い通路の先にある、周りを住宅に囲まれた旗竿地のため、通りから姿は見えない。驚いたことに、外部だけでなく家の中も真っ白。置かれている家具といえば、ダイニングセットくらいだ。

白くて幾何学的な構成の小池邸。「子供の友達からは、『豆腐ハウス』と呼ばれているようです」。コンクリート造に見えるが、木造。外壁にはFRPが何層にも吹き付けられており、独特のニュアンスが生まれている。庭のガラスの扉からも、屋内に入ることが可能。芝生を敷いた庭では、子供たちがラグビーの練習をすることも。ダイニングの壁に組み込まれたLED照明は、目の高さでも眩しくなく、部屋を照らすには十分な明るさ。

写真を見た者の多くは、「本当に人が住んでいるのか」と思うことだろう。ところが、リビングで座禅をすることもある家主にとって、ここまで徹底したミニマルなスタイルは、落ち着くうえに、居心地が良いのだという。ファッション・ブランド、SISII(シシ)のデザイナーであり経営者でもある小池さんは、海外の友人を家に招くことも少なくない。

そこで小池流の「ジャパニーズ・モダン」を実現してくれる建築家として、山口隆さんに設計を頼んだ。「山口さんの、伝統をベースとした独自の日本的美意識に共感」したのだという。障子も畳も無いが、小池邸は現代的な日本の家といえるだろう。それは海外のデザイン誌が日本の住宅を紹介する際、「ミニマル」で「前衛的」な家を多く選んでいることからも分かる。彼らはそれを日本的と捉えているのだ。この家も間違いなくそうした特徴を備えている。

それまで小池さんが暮らしていたのは、戦後間もない頃に建てられた趣のある家。今回は建て替えである。そして完成したのが、モダンでミニマルな家だ。シンプルだが、個性の強い空間に長年暮らすことになるため、「飽きてしまわないか心配で、この家で暮らすことを長い時間をかけて頭の中でシミュレーションした」と小池さんは話す。ここまでシンプルな生活に、そう簡単に切り替えられる訳ではないのである。

美意識がつまっている

一方、構造は極めて前衛的だ。一本の細長い紙を何か所かで折り曲げた、一筆書きのような作りをしている。東の玄関から入って廊下を過ぎれば大きなダイニングで、奥の階段を上がれば、一番西にある2階のリビングとなる。そしてリビングの扉を開けて屋根の上に出て、東側で折り返せば、傾斜した屋根の最高部である西側に辿り着く。

メインのスペースとなるのが、このリビングダイニング。階段を上った先がリビング。天井には照明や空調等の付属物は一つもない。家具は、小池さんが選んだデンマークの「メニュー」社のもの。ティッシュボックスがあるのは、ここで生活している証。

殆ど何も置かれていない2階リビング。ここで寛いだり瞑想をしたり、時にはプロジェクターを出して映画を観たり。窓からの採光は、こちらの摺りガラスがメイン。扉を開けると、1階の屋根の上に。そこから左手で折り返せば2階の屋根に簡単に登れ、「花火の日は、そこから眺めます」。

上の写真奥が玄関で、サイズは必要最小限のもの。そこから伸びる廊下は、段々と広くなり、ダイニングルームにつながっている。右手の扉は、子供たちの部屋。バイクは、ブルックリン・マシンワークスのもの。他にもモールトンを所有しており、付近の山道走行などを楽しんでいる。

キッチンもミニマル。小さな窓から、帰宅する家族の姿が見える。

間取りは、ダイニングを中心に、個室などが繋がったもの。隣家が近いので、プライバシー保護のため、採光用の窓は2階のリビングスペースの南面に大きな摺りガラスがあるのみ。照明は、壁面に埋め込まれたLEDのラインが何本かあるだけだが、これで室内は十分に明るい。天井と壁が白で床が銀色のアルミ素材のため、反射して光が回るのだ。そして見上げた天井は、照明・空調の穴など何一つ存在しない、白くて平らな面。研ぎ澄まされた美意識を感じるものだ。

経済的なアイディアは経営者視点

美的な面にはとことん拘ったが、経済的な面もしっかり両立させているのが小池邸である。まずこの独創的な建物は、コンクリート造ではなく木造だ。柱の見えない大きな室内空間を作るため、建築家は屋根をできるだけ軽くした。結果、建築費も抑えられることに。床暖房は設けず、冬は絨毯の下にホットカーペットを敷くのはアイディアである。しかも送風機を上手く活用することで、「夏もエアコン1機で快適に過ごせ、電気代はさほどかかりません。男の子は成長するとすぐに家を出てしまうから」と、二人の子供(現在は高校生と中学生)のためにあえて個室を設けず、寝室は共用とした。勉強は大きなダイニングテーブルでしている。極めて合理的だ。

小池さんはデザイナーでありながら経営者でもある。この相反する二つの立場が、前衛的でありながら経済的な家を作りあげたのだろう。そんな小池さんの愛車は、ポルシェ・マカンGTS(2017年製)。それまではボルボXC90で、お子さんたちが幼い頃は、随分とキャンプに出掛けたそうだ。芦屋の山は自然が残っており、レンジローバーで悪路を走りまわった時代もあった。

「もともと走るのが好きなんです。長く乗ったボルボの買い替えを検討していた時、丁度マカンのGTSが出て。新しいXC90と値段はさほど変わらないし、GTSなら走りの面でも断然魅力的なので」クルマ選びも小池さんらしい。

旗竿地で、駐車スペースは敷地の入り口に。通路の奥左手に、小池邸の玄関が見える。後ろの住宅と比べても、圧迫感のない大きさである。

そんな建て主の普段の生活と言えば、「職場では忙しく動き回っていますが、家に帰るとのんびりして、何もしないタイプなんです」

たしかに前衛的でミニマルなこの家に足を踏み入れると、最初はテンションが高いが、暫く身を置いているうちに不思議と落ち着いてくるのである。そして思った。この空間で何もしないというのは、心底気持ち良いのではないかと。小池さんがミニマルなこの家を建てた理由が、何となく分かった気がした。

■建築家:山口隆 1953年京都市生まれ。 京都大学卒業後、安藤忠雄に師事し独立。安藤流のコンクリート造に拘ることなく、海外の理論家たちと研究を重ね独自の理論を展開。国内外の大学での講演も多い。住宅以外に、宗教施設、工場(写真)など幅広く設計。クルマ好きで、現在の愛車はマッドブラックのランボルギーニ・ガヤルド。

文=ジョー スズキ 写真=鈴木 勝

(ENGINE2019年11月号)

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