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CULTURE 2019.10.16 

昭和の空気をまとうヴィンテージ・ファニチャー純喫茶の家具と暮らす至福

外資系メガチェーン、サードウェイブ、コンビニコーヒー。安価でおしゃれなコーヒーが増える一方で、従来の喫茶店は急減している。かつての香りを残すべく、若いオーナーが取り組むリユースとは・

村田さんが閉店する店から仕入れた椅子の数々。コンディションに合わせてリペアが施され、1万円前後からとリーズナブルな価格で販売されている。長年の使用に耐えただけあり、見た目以上にタフ。

かつて純喫茶という空間があった。アルコールを出さない、女性の接待もない、ただ豆から挽いた珈琲や自家製のケーキを供する。味も見てくれも声高な主張をすることはなく、訪れた顧客を静かな憩いでもてなす街角のオアシスだった。

だが、流行という排除の力学には抗しきれない。店主の誇りでもあった「純」の一字はアナクロとなり、拍車をかけるように店主の高齢化と建物の老朽化が進んだ。特に今世紀になってからは地域で愛されてきた店舗が次々と閉店し、長年の常連を嘆かせている。  

数年前まで会社員だった村田龍一さんもそのひとり。30代ながら純喫茶の雰囲気が好きで各地になじみの店があったが、その相次ぐ廃業に胸を痛めていた。 店舗がなくなることがやむを得ないとし ても、せめて使われていた椅子やテーブルなどの家具は残せないだろうか――その思いは村田さんを脱サラ、中古喫茶店家具専門のネットショップ「村田商會」の開業へと導く。

椅子やテーブルだけでなく、使われていた食器も販売されている。写真上左/パフェ・グラス1200円、アイスクリ ームグラス500円、タンブラー500円 上中/コンディシ ョンのいいカップ&ソーサーも豊富。上右/青い文様が 美しいカップ&ソーサー500円。サイフォンは、ボウルの 形状から一輪挿しとして使われることも。500円

幸い事業はスタートから予想以上に好評だったものの、相次ぐ名喫茶の廃業には無力さを抑えきれない。そんな折、西荻窪で好きだった店が閉めるニュースを聞く。いつものように家具を仕入れるつもりだったが、店舗自体が失われることが惜しまれ、オーナーと相談のうえ、店を借り、今年一月からリアルな「村田商會」として自ら営業することに。

通常の喫茶と共に、家具や食器などを実際に触れて購入できるユニークな店舗となった。業績の維持にはいい品の仕入れが欠かせない。だが、出物の連絡は愛されてきた歴史の終焉というほろ苦さと表裏一体。 だからこそ、「どんな店で使われていたかを知ってほしい」という思いで、販売する家具には以前の喫茶店名を必ず記すようにしている。

閉店を惜しむファンのほか、その出自に惹かれて平成生まれの若い人が買っていくという。また、新しくオープンする店にまとめて引き取られ、再利用されることも少なくない。村田さんは「喫茶店文化のたすき渡し」 と胸を張る。

珈琲の香しさが染みついた家具は、新しい店であれ、個人宅であれ、新しい歴史を刻んでいく。「サスティナ ブル」の実現には、システム以上に愛情が不可欠に違いない。

西荻窪で長く営業していた喫茶店「ポット」をそのまま居ぬきで受け継いでオープンした。カウンターや床の色、レースのカーテンがかつての店内を彷彿とさせる。若い顧客も増えているとか。

東京都杉並区西荻北 3-22-17  12時~19時 月・火曜定休。

問い合わせ=村田商會 https://muratashokai.theshop.jp/

文=酒向充英(KATANA)  写真=杉山節夫

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