港町の情趣とともに異国文化の香り漂う横浜の外国人墓地に、彼はいまも静かに眠っている。フランソワ・ペルゴ。幕末期に来日し、当時日本で販売が開始された高級スイス時計「ジラール・ペルゴ」の魅力を広めた当人である。まだ不定時法が規範だった日本の“時間”は、実は彼によって新たな時を刻み始めたのだった。
「ヴィンテージ1945 ジャパンブルー限定モデル」は、その意味でまさに日本におけるこの名門マニュファクチュールの歴史にオマージュを捧げる1本である。白磁を思わせる白文字盤に美しく映える深いブルーの針とローマ数字インデックス。このブルーこそ、フランソワと同時代に来日した英化学者ロバート・アトキンソンが“ジャパンブルー”と賞賛した藍色だ。異国の人々が、着物や風呂敷、暖簾などによって初めて目にしたこの色は、当時の日本人の清廉な暮らしを印象づけるとともに、心の中に深く刻まれ、さらに浮世絵を通して海をも越えて、欧州の芸術に大きな影響を与えた。
1945年に誕生したアーカイブがベース。リュウズは薄くケースサイドに収め、シャープな直線を損なわない。限定仕様のブルーはストラップにも用いられ、ステッチも同色で統一する。程良いサイズ感も日本人の手首に適している。自動巻き、ステンレススティールケース、ケースサイズ33.30×32.46mm。パワーリザーブ約46時間。日本限定100本。税別116万円。
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そのジャパンブルーの美しさをまるでカンヴァス上に描き出したかのような「ヴィンテージ1945」の角形ケースは、アールデコの様式美をモチーフにする。見た目は直線基調ながら、風防には滑らかな曲面を施し、ケースサイドのフォルムも手首に沿って優雅なカーブを描く。幾何学的な力強さにエレガンスが息づく、洗練された存在感は、時を超越したヴィンテージと呼ぶにふさわしい。そして、このアールデコスタイルに伝統のジャパンブルーを纏うことで、時計を通じて西洋と日本を結ぶ掛け橋となったフランソワの志が現代に蘇るのである。
遠く祖国を離れ、再び戻る願いは適わなかったフランソワ。その命日には毎年多くの時計愛好家たちが花を手向ける。刻み続ける時のように、絆はいつまでもつながっていく。
日本におけるスイス時計の普及に尽力したフランソワ・ペルゴ(1834〜77)と、彼の友人で助手も務めた日本人の半蔵。横浜で日本向けの仕様を研究開発した。
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文=柴田 充 写真=岸田克法,PROMOTION
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