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CAR 2019.10.4 

新型ポルシェ911(タイプ992)国内公道初試乗! 敷居が低くて、懐が深い

慣れ親しんだポルシェといえば911をおいてほかにない。その最新型であるタイプ992の広報車両がついに上陸した。いの一番で借り出し、編集部員が試乗して、考えた。

村上 待ちに待った992型ポルシェ(Porsche)911の広報車が上陸した。ドイツで出荷前に入念なチェックとランニング・インを施されたクルマということになる。とりあえず、4輪駆動モデルだけが来た。

齋藤 モデルはカレラ4Sの右ハンドル8段PDK仕様。オプションでダイナミック・シャシー・コントロール (PDCC)、リア・アクスル・ステアリング(4WS)、スポーツ・クロノ、スポーツ・エグゾースト、14ウェイ電動スポーツ・シート等々が加えられている。車両本体価格は1772万円(8%税込)だけれど、この個体は2173万4000円(8%税込)に達する。

村上 最初に言っておきたいのは、フル電動スポーツカーのタイカンのワークショップでエンジニアが強調して言っていたことなんだけれど、これからどんなに電動化、ハイブリッド化が進んでも、最後の最後まで内燃機関を搭載し続けるのが、ポルシェでは911だということなんだ。この992型911ではPDKが8段化されているのだけれど、そのハウジング内にはリング・モーターを組み込むためのスペースがすでに用意されていたりもするんだ。

齋藤 へぇ、そうなんだ。

村上 でね、どうだった? 初めて992型に乗ってみて。

齋藤 午前中、昼前のひどく混雑した時間帯に首都高速と東名高速を使って、流れに身を委ねて走っていると、ふと、911を走らせているということを忘れそうになった。991型、とくに自然吸気の前期型では、こんな印象は抱かなかった。ゆっくり走らせていても、911を運転しているという意識が消えそうになるなんてことはなかったよ。

新井 その時、僕は助手席に乗っていたんですが、助手席だとなおさらその感があったように思う。目の前のダッシュボードがまるでパナメーラのそれのように、フラットな面が連なっているせいもあるんですかね。

齋藤 それで、後半はスポーツ・モードを選んで、脚のダンパーだけ標準モードにして走った。そうすると、911感が増すんだね。それと、乗り心地は前に20インチ、後ろに21インチという組み合わせになったせいか、目地段差の処理は、以前ほど上手じゃなくなった気がした。ポルシェはこの方面では最も上手なメーカーだから、他と比べれば、ショックは小さい方だとは思うけど、タイヤの硬さを消しきれていない。

村上 991型は後期型でターボ過給エンジンに切り換わった時に、印象がすごく大人しくなったでしょ。音も静かになって、人当たりが柔らかくなった。

齋藤 きっちりと角を丸めて洗練された感じの印象だったよね。

村上 そこへいくと、今度の992 型は、少し揺り戻しがある。ちょっとワイルドにしてあるように思う。 ポルシェはモデルチェンジでマイルド・サイドとワイルド・サイドを行ったり来たりしているけれど、今回はワイルド・サイド寄り。

齋藤 そういう荒っぽさがあるのに、ノーマル・モードでDレンジに任せておくと、極めて普通っぽい。

村上 今回の911は、普通に走らせる分には、誰にでも扱える、ひときわ運転のしやすいクルマに仕立てられている。と同時に、エコ意識がこれまで以上に深く浸透している。意識的にスロットルを開けていくような走りをしない限りは、とても平穏な走りに終始する。

齋藤 大人しく走っている時に911を忘れそうになるって言ったけど、それには今回フロントのトレッドが 大きく拡がったことも影響していると思う。狭いフロントに対して広いリアがバンッと張り出している感じは普通に真っ直ぐ走っていてもあったんだよね、991までは。でも、992では幅の広いフロントが楽々進路を決定している感じがする。それって、他のクルマと同じなんだよ。フロントのトレッド拡大というのは、ライバルたちとの力関係を睨みながらシャシー・ダイナミクスの限界能 力をドンッと引き上げるために取られた措置だと思うんだけれど、真っ直ぐな道を穏やかに走っている分には特に必要ない。それと視界に入るノーズが幅広くなったでしょ。

新井 しかも、室内に広がる水平基調の景色はある種、パナメーラ的。

村上 いにしえの911に対してオマージュを捧げたデザインだとポルシェは言っているけどね。

齋藤 そうした諸々に、ノーマル・モードDレンジでの早め早めのシフトアップによる穏やかな速度変化が組み合わされるからなんじゃない。

タイプ993時代までの配置を模した新しい5眼計は中央の回転計のみアナログ指針式。
オプションの14ウェイ電動スポーツ・シート。
例によって深い荷室。

新たな模索が始まった4WD?

村上 992型911については、民主化が進んだということがひとつ言えると思うんだけれど、その一方で、911独特の乗り味、味わいが薄れたということもできると思う。

齋藤 特殊感が薄くなった。

新井 リアに置いた水平対向6気筒を使ったRWD(今回は4WD)ということでは何も変わらないはずなのに、何か感じるものが違う。 

齋藤 脚の能力もパワートレインの能力も全然使い切っていない状態で感じるものがね、普通になった。

村上 ところが、ひとたび山道にでも行こうものなら......。

齋藤 道が曲がっている所を本気で走ると、あぁ、これがフロント・トレッドを拡げるということなのかぁ、と思わざるをえないよ。前脚が必死に頑張っている感じがさらさらない。 こともなげにグイグイ曲がる。

村上 それは分かる。

齋藤 でもね、今回は4WDモデルだったでしょ。991後期型のカレラ4系は、4WDと2WDのハンド リング特性の違いをどこまで小さくできるか、ということをとことん突き詰めたクルマだったと思う。乗り味が驚くほどに近似的だった。

新井 そうでしたよねぇ。

齋藤 それに対して、今回は2WDと比べることができたわけではないのだけれど、992型カレラ4Sを単独で走らせていても、パワートレインの能力を引き出すような走らせ方をすると、如実に4駆感が伝わってくる。ライン・トレースを考えた時に、ステアリングと駆動力を常にセットで考えておかないといけない。 スロットルのオン・オフで旋回中のノーズの軌跡が明確に変わる。991型、特に後期型ではこうまで変わらなかった。今回のクルマがPDCC付きで、スポーツとかスポーツ+モードではロールをほとんど感じさせない挙動制御が入るせいで、左右輪間の荷重移動速度が速いというこ とも影響していたのかもしれないにしても、スロットルのオン・オフに軌跡変化は明瞭だった。

村上 僕は海外で2WDと4WDを両方乗り比べて、違いが分かったけれど、4WD単独で乗っても、そう感じるのであれば、新型にはそういうところがあるんだろうね。

齋藤 フロントに駆動力が入るというのはアンダーステア要件、リアのトレッドがフロントのそれよりも広いというのはジオメトリー的にオーバーステア要件。だから991では 4WDの方が2WDモデルよりもリア・トレッドを広く設定することで落ち着いた。ステア特性を近似的にするために、理に適っている。でも、992ではフロント・トレッドがドンッと拡がって、ジオメトリー的なオーバーステア要件がなくなったと考えることができる。そういう部分も影響していると思う。

新井 それだけじゃない気もします。

齋藤 991後期型でひとつの答えに達して、今回は新たな道へ踏み出したようにも思う。より積極的にフロントを駆動輪として使おうとしているように感じた。964から始まった4WD型911のハンドリング特性を2WDモデルに近づけるという不断の挑戦が一段落して、その次へと目が向いたんじゃないかな。

村上 確かにそういう感じを抱く。

齋藤 今回は、さらに後輪操舵まで入っていたわけだよね。リアの安定性に関する能力はこれまで以上。

新井 これまで4WDでやろうとしてきたことが相当の部分まで2WDで達成可能だということがはっきりして、4WDのフロントの使い方に新たな地平が開けてきたということなんじゃないんですかね。

村上 2WDモデルが上陸したら、是非とも比べてみたいよね。どこへ向かおうとしているのかは、そうすることでより見えてくると思う。

齋藤 ひとつはっきりしたのは、また一段と速くなったということ。

村上 にもかかわらず誰にも乗りやすく懐の深いクルマになったんだな。

ポルシェ 911 カレラ4S

  •  
  •  駆動方式 リア縦置きエンジン4輪駆動
  •  全長×全幅×全高 4520×1850×1300mm
  •  ホイールベース 2450mm
  •  トレッド 前/後 1589/1557mm
  •  車両重量 1565kg(DIN)1590kg(WLTP)
  •  エンジン形式 水平対向6気筒DOHC 24V直噴ターボ過給
  •  総排気量 2981cc
  •  ボア×ストローク 91.0×76.4mm
  •  最高出力 450ps/6500rpm
  •  最大トルク 54.0kgm/2300-5000rpm
  •  変速機 8段自動MT(PDK)
  •  サスペンション 前/後 ストラット式/マルチリンク式
  •  ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
  •  タイヤ 前/後 245/35ZR20/305/30ZR21
  •  車両価格(8%税込) 1772万円

(ENGINE 11月号掲載)

話す人=村上 政(ENGINE編集長)+新井一樹+齋藤浩之(まとめ、以上ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

 

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